極寒の南極大陸で5日間にわたる気候訓練キャンプを行っていたニュージーランド空軍の隊員たちは思わぬ軍団に囲まれた。
雪原の向こうからヨチヨチと歩いてきたのは、数十羽のコウテイペンギン群れだ。
人間と接触を持たない彼らは恐れを知らず、何より好奇心旺盛だ。隊員たちが作業している様子を見て、何事かと興味を惹かれたのだろう。
過酷な作業の中、隊員たちはかわいらしい来訪団の登場に心を癒されたようだ。
訓練キャンプに押し寄せたヨチヨチ歩きの来訪団
ニュージーランド空軍の隊員たちは、氷原の上で雪を切り出し、テントを設営しながらキャンプの環境を整えていた。その最中、思いがけない訪問団が現れた。
ヨチヨチ歩きでやってきたのは、南極に生息する最大のペンギン、コウテイペンギンの群れだ。
ペンギンたちは隊員たちのすぐ近くまで来ると、じっと彼らの作業に見入っていた。
この様子は、ニュージーランド国防軍の公式SNSで紹介され、「訓練中の隊員たちは、好奇心旺盛なペンギンたちが作業の進み具合をチェックしに来たようです」と投稿された。
動画には、雪上で働く隊員たちをじっと見つめるペンギンの群れと、「おお、なんてことだ、これはすごい!」と思わず喚起の声を上げる隊員の姿が映っている。
ペンギンの方から近付いてきたので回避不能
南極では、人間が野生動物に近づかないことが厳しく定められている。
訓練に参加している隊員たちも、ペンギンに接近しすぎないよう指導を受けていた。野生動物との距離を保つことは、南極環境保全の基本ルールのひとつである。
だが、このとき距離を縮めたのは人間ではなくペンギンの方だった。彼らは好奇心のままに隊員たちのそばへと歩み寄ってきたのだ。
環境保護団体「Ocean Conservancy[https://oceanconservancy.org/blog/2016/04/25/10-things-to-know-about-penguins/]」は、「南極にはペンギンを捕食する陸生動物がいないため、ペンギンは人間を恐れず、数mの距離まで近づくこともある」と説明している。
キャンプの訓練場所は決まっているので、これはうれしい回避不能だ。
白黒の羽毛のコートをまとったかわいらしい訪問団は、さぞかし隊員たちの心を癒したことだろう。氷に覆われた世界が、少しだけ暖かく感じたかもしれない。
極限環境に生きるコウテイペンギン
コウテイペンギンは、ペンギンの最大種で、成鳥の体長はおよそ120cm、体重は最大で40kgに達する。
南極大陸だけに生息し、厳冬期の氷の上で繁殖を行う唯一のペンギンでもある。
オスは、氷点下60度にもなる吹雪の中で約2か月間、卵を足の上に乗せて温め続ける。その間、ほとんど何も食べず、じっと立ち尽くしたまま食料の調達に行ったメスの帰りを待つ。
人間にとっては過酷な試練の地であっても、ペンギンたちにとっては当たり前の生活の場だ。彼らの堂々とした姿や、恐れを知らない行動は、まさに「氷の世界の住人」と呼ぶにふさわしい。
そんな頼もしいコウテイペンギンだが、イギリスの研究グループの調査によると、個体数がこの15年で約4分の1も減少しているという。
気候変動の影響で彼らの繁殖地の氷が薄くなり、ヒナが成長する前に崩壊し、泳ぐ力のないヒナが冷たい海に落ち、命を落とすケースが相次いでいるという。











