自然はまるで意志を持って我々人間にメッセージを伝えているかのように思うことがある。サハラ砂漠の真ん中に、こちらをにらむ白いドクロが潜んでいた。
これは、NASAが国際宇宙ステーション(ISS)から撮影した画像で、サハラ砂漠の中にある火山地帯のカルデラで発見された。
白い色は、塩の結晶が作る“仮面”で、影と起伏が目や鼻の穴を描き出しており、地球から宇宙をにらみつけているかのようだ。
宇宙から見えたサハラ砂漠のドクロ
NASAの地球観測チーム「Earth Observatory[https://earthobservatory.nasa.gov/images/152019/a-ghostly-face-in-the-rock]」が、2023年2月、国際宇宙ステーション(ISS)から撮影された写真を投稿した。
場所は、アフリカ大陸中央部、チャド北部のサハラ砂漠の中にある火山地帯「チベスティ山地」のトロ・オ・ナトロン火山である。
そこには白いドクロ(頭蓋骨)のような形が映し出されていた。
ドクロの正体は火山のカルデラ
この「顔」を形作っているのは、トロ・オ・ナトロン火山のカルデラだ。地元ではドゥーン・オレイ(Doon Orei)とも呼ばれ、いずれも「大きな穴」を意味する。
直径・深さともに約1000mに及ぶ巨大な陥没地形で、数十万年前の大噴火によって形成された。タイトルでは「火山」として紹介しているが、正確には噴火後に地表が崩れ落ちてできたカルデラである。
顔の白い部分は「ナトロン(natron)」という塩の結晶で、炭酸ナトリウムや重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどの混合物。かつてこの場所にはアルカリ性の湖があり、水が干上がったあとに塩が厚く堆積している。
目や鼻の穴に見える黒い部分は、噴出口のまわりにできた円錐形の丘「スコリア丘」で、影と組み合わさることでドクロのような表情を生み出している。
かつては氷河湖だった「生命の地」
現在は荒涼とした砂漠の一部だが、約1万4000年前までは氷河湖がここを満たしていたと考えられている。
1960年代の調査では、塩の下から巻貝やプランクトンの化石が発見され、2015年の再調査では約12万年前の藻類の化石も確認された。
今は乾ききった白い大地だが、かつては生命が息づく湖だった。
なぜドクロに見えるのか?
人間は無意識のうちに、普段からよく知ったパターンを本来そこに存在しないにものに見出してしまう。これは「パレイドリア」と呼ばれる脳の錯覚で、雲や壁のシミなど、無生物が生き物の姿に見えてくる現象だ。
さらに「シミュラクラ現象」も関係している。これは、3つの点が逆三角形に並ぶだけで、人の顔だと判断してしまう脳の働きである。コンセントの穴や車のフロントが顔に見えるのもこのためだ。
サハラ砂漠のドクロも、人間の脳が生み出した幻のひとつにすぎない。しかし一度そう見えてしまうと、もはやそれ以外のものには見えなくなる。
まるで自然が、怒りや警告の感情をドクロの形で表現しているかのようだ。
References: Earthobservatory.nasa.gov[https://earthobservatory.nasa.gov/blogs/earthmatters/2023/10/24/october-puzzler-10/] / Eerie 'Skull' Appears in a Giant Volcanic Pit in The Sahara[https://www.sciencealert.com/eerie-face-appears-in-a-giant-volcanic-pit-in-the-sahara]











