アメリカ・ワシントン州で、降りしきる雨の中、道路に出没したのはその場には似つかわしくない訪問者だった。巨大なオスのアシカがどっしりと座り込み、空を見上げていたのだ。
まさか運転中に海の生き物に出くわすとは思っていなかったドライバーたちは驚き、車を減速させて慎重に避けた。
微笑ましい光景ではあったが、この「ぷにぷにした障害物」は道路を完全にふさぎ、通行の妨げにもなっていた。
目撃者はすぐに警察へ通報し、警察は野生生物当局と連携して現場に駆けつけた。安全を確保しながら、アシカを誘導するための作業が行われた。
雨の降る道路に出没し、どっしりと腰を下ろすアシカ
2025年11月6日(木)の午後、ワシントン州グレイズハーバー郡にあるコスモポリスの町の道路で、巨大なオスのアシカが座り込んでいるのが発見された。
現場はチェハリス川のほとりに位置しており、海からも比較的近い場所だ。
目撃者からの通報を受け、コスモポリス警察がワシントン州魚類野生生物局(WDFW)とともに現地にかけつけた。
コスモポリス警察は現場でアシカを写真に収め、すぐにFacebookに投稿し、この道路を通る運転手たちに注意を呼びかけた。
公開された写真には、どっしりと道路に腰を下ろすアシカの姿が。
ほかにも、空を見上げて目を閉じて、瞑想にふけっているかのような姿も捕らえられた。まるで哲学的なことを考えているかのようにも見える表情だ。
アシカはなぜ陸に上がってきたのか?
ワシントン州の沿岸部では前日から雨が降り続いており、グレイズハーバー郡には沿岸洪水注意報が出されていた。高潮と強い雨が重なり、海も荒れていた。
海洋哺乳類センターによると、アシカはときどき「ハウル・アウト(haul out)」と呼ばれる行動を取る。
ハウル・アウトとは、アシカ科の動物が休息や繁殖、子育てなどのために水から上がって陸地で過ごすことを指す。
また、長い時間泳いだあとに体を休めたり、冷たい海水で冷えた体を温めたり、危険を避けたりするときにもこの行動を取る。
今回のアシカも、悪天候で海が荒れたため、危険を回避しようとして一時的に安全な場所を求め、陸に上がったとみられる。
アシカは無事川に戻される
最終的に、ワシントン州魚類野生生物局(WDFW)の職員と米国海洋大気庁(NOAA)の職員が協力し、アシカを川へ戻す作業を行った。
彼らは「ヘイジング(hazing)」と呼ばれる方法を用いた。これは動物が自ら動き出すように、わずかに不快な刺激を与えて安全に誘導する手法である。
WDFWの広報担当ブリジット・マイア氏は、「アシカはその大きさゆえ、人に危害を加えるおそれがあるため、決して近づかず、見かけたら当局に通報してほしい」と注意を呼びかけた。
今回目撃されたのは「カリフォルニアアシカ」の可能性が高い。カリフォルニアアシカは、アメリカ西海岸に広く生息するアシカ科の哺乳類で、体も大きく、陸上でも活発に動くことができる。
特にオスは体長2m以上、体重は最大で500kgに達することもあり、今回のように道路に出現するとその迫力はかなりのものになる。メスはこれより一回り小柄だが、それでも大型の動物に分類される。
アシカはアザラシと違って耳たぶのような外耳があり、後ろ足を回転させて陸上を歩くことができる。
ワシントン州では、2020年にカウリッツ郡、2021年にはワヒカカム郡でも道路に迷い込むアシカが確認されており、今回のようなケースは珍しいことではないという。
警察が見せたユーモア
警察はこのぷにぷにした道路交通法違反者を逮捕する代わりに、アシカに警察の制服を着せた合成画像を作成し、公式Facebook[https://www.facebook.com/profile.php?id=100068860931370]のプロフィール画像に設定した。
このユーモアたっぷりの対応は町の人々を和ませた。
追記(2025/11/15)カリフォルニアアシカの体重の記述に誤りがありました。訂正して再送します。
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