アマゾンの湖が41℃に達し、絶滅危惧種のイルカを含む野生生物が大量死
アマゾンカワイルカ Image by Istock <a href="https://www.istockphoto.com/jp/portfolio/PeytonOlesen?mediatype=photography" target="_blank">Peyton Olesen</a>

アマゾンの湖が41℃に達し、絶滅危惧種のイルカを含む野生生物...の画像はこちら >>

 2023年、南米アマゾン川流域で、深刻な干ばつと熱波が同時に発生し、多くの湖が観測史上最高の水温を記録した。

 干ばつによって湖の水位が急激に下がったため、水温が41℃に達した地域もあり、魚や甲殻類をはじめとする多くの水生生物が逃げ場を失い命を落とした。

 この地に生息する2種の絶滅危惧種のイルカであるアマゾンカワイルカとコビトイルカもその被害を受け、大量死が確認された。

 この異常な高温と干ばつの影響は、その後も生態系に深刻な爪痕を残し、研究者たちは現在も調査を続けている。

この研究成果は『Science[https://www.science.org/doi/10.1126/science.adr4029]』誌(2025年11月6日付)に発表された。

水温41度の灼熱湖 2種の淡水イルカが相次いで死亡

 ブラジル・アマゾン川流域では、2023年に記録的な干ばつと熱波が同時に発生した。ブラジル北部のテフェ湖では水温が41℃と、お風呂に近いレベルに達した。

 水面には魚や甲殻類、そして淡水イルカの死骸が次々と浮かんだ。世界自然保護基金(WWF)の報告によると、当初は200頭以上のイルカの死亡が確認されたが、その後の調査で約330頭に達したという。

 死亡したアマゾンカワイルカは約130頭、コビトイルカは約23頭に上り、いずれも絶滅危惧種だ。

 残りの個体は腐敗や漂流によって種の特定が難しくなっていたが、被害の大半がこの2種に集中していたとみられている。

[画像を見る]

絶滅危惧種:アマゾンカワイルカとコビトイルカ

 アマゾンカワイルカはアマゾンカワイルカ科アマゾンカワイルカ属に属し、南米のアマゾン川やオリノコ川などの淡水域に生息する。

 体長は2~2.5m、体重は100~160kgほどで、灰色からピンク色を帯びた体色が特徴だ。

 首の骨が柔らかく、増水して木々がそのまま湖に沈んだ場所でも細かく方向を変えながら泳ぐことができるため、複雑な地形の中で魚を探すのが得意だ。高い知能をもち、人間のボートに近づいてくることもある。

[画像を見る]

 一方、コビトイルカはマイルカ科コビトイルカ属に属し、アマゾン川や南米北部・東部の沿岸や河口域にも分布する。

 体長は約1.5~2mとアマゾンカワイルカよりやや小型で、体色は青みがかった灰色をしている。

 形態的には海に生息するハンドウイルカに似ており、流線型の体をいかして泳ぐ。

 遺伝的にはアマゾンカワイルカとは異なる系統に属するが、生息域が重なっているため、今回のような湖の高温化では同時に打撃を受けた。

[画像を見る]

湖の温度上昇が止まらない。すでに緊急事態が進んでいる

 ブラジルのマミラウア持続可能開発研究所でアマゾンの水環境を研究するアヤン・フライシュマン氏は、この災害の原因を調べるため、現地調査と衛星データ解析を行った。

 研究チームは干ばつ期に10の湖で水温を測定し、過去30年間にわたる24の湖の衛星データを分析した。その結果、アマゾンの湖では1990年以降、10年あたり平均0.6℃のペースで水温が上昇していることがわかった。

 さらに、フライシュマン氏らは、湖の水がどのように温まっていったのかを調べるため、気温や日射量、水の深さなどのデータを組み合わせてシミュレーションを行った。

 その結果、強い日ざしが続いたこと、湖の水位が極端に低くなって水が浅くなっていたこと、水が濁っていて太陽光を吸収しやすかったこと、そして風が弱く水面がかき混ぜられなかったことが同時に起きていたとわかった。

 これらの条件が重なったことで、湖の水温は短期間で急激に上昇していた。

 とくに雲がほとんど出なかった11日間は、湖水が太陽光を吸収し続け、まるで巨大な鍋のように熱がこもる状態になっていた。

 調査対象となった湖のうち5つで水温が37℃を超え、1日の水温差が13℃に達するケースもあった。

 フライシュマン氏は「気候の緊急事態はすでに存在している」と語り、この現象が地球温暖化とエルニーニョ現象の複合的な影響によるものだと指摘した。

[画像を見る]

アマゾンの淡水生態系は危機的状況

 テフェ湖の灼熱化は、一時的な異常ではない。研究チームによると、アマゾンの湖沼はすでに過去30年間で着実に高温化しており、今後も極端な高温が頻発する可能性が高いという。

 カリフォルニア大学サンタバーバラ校の生態学者ジョン・メラック氏は「こうした状況が今後一般化していくことを懸念している。生物多様性と地域社会への影響は計り知れない」と警鐘を鳴らした。

 また、ブラジル・アマゾン研究所の生物学者アダルベルト・バル氏は「水温が41℃になると魚は酵素が働かなくなり、代謝が崩壊して死ぬ」と語っている。

 魚や甲殻類、イルカをはじめ、アマゾンの淡水生態系全体がこの災害で深刻な打撃を受けた。

気候変動の最前線からの警告

 研究チームは論文で「今回のような未曽有の干ばつと高温は、気候変動によって激化している。これを防ぐには地域的な対策では不十分で、化石燃料削減を含む地球規模の取り組みが必要だ」と警告している。

 アマゾンは地球の淡水の約5分の1を抱え、地球の気候を安定させる重要な役割を持つ。しかし、その均衡がいま崩れつつある。

 その余波が地球全体に広まっていくのは時間の問題かもしれない。

References: Science[https://www.science.org/doi/10.1126/science.adr4029] / PHYS / Sciencealert

編集部おすすめ