2025年10月、フランス北部で行われたあるカップルの結婚式が、世界中の注目を集めた。
新郎であるダゴベール・ルヌフさんが着ていた結婚衣装のジャケットには、胸から腕、背中まで大小のスタートアップ企業のロゴがずらりと並んでいたのだ。
実は結婚費用がなかったダゴベールさん、企業のロゴをジャケットに縫い付けることで、スポンサーになってもらおうと思ったのだ。
結果は大成功…いやそれ以上だったかも。結婚費用のみならず、彼の人生を変える仕事のオファーまで舞い込むことになったんだ。
結婚資金を賄うため、衣装につけるロゴを募集
10月25日、フランスのリールという街で、あるカップルの結婚式が行われた。新郎はダゴベール・ルヌフさん、新婦はアンナ・プリニナさん。
ダゴベールさんはもともと、フランスのスタートアップ界隈で活動する起業家で、リールを拠点にセールスやマーケティング関連の仕事に携わってきた。
だが近年は燃え尽き症候群のような状態になっていて、十分に働けない時期が続き、収入が不安定な状況だった。
アンナさんとの結婚式を予定していたものの、自分たちで費用を用意するのは難しく、別の方法で資金を確保する必要があった。
そこで思いついたのが、結婚式当日に着る衣装に「広告枠」を設け、希望する企業に購入してもらうというアイデアだ。
この夏、私はまったくの文無しで、ほとんどホームレス寸前の状態でした。でも、それでも彼女と結婚したいと思っていたんです。
それで、SNSでつながっていた起業家仲間のコミュニティに助けを求めたところ、ある人が冗談まじりに「スーツにうちのロゴをつけてくれるなら500ユーロ(約9万円)払うよ!」と言ってきたんです。
それがきっかけで、他の人たちも「自分も出すよ」と言い始めました
このアイデアをクールだと思ったダゴベールさんは、背中や胸の目立つ位置には大きな枠、袖や身頃には小さな枠など、いくつかの価格帯に分けて枠を設定し、SNS上でスポンサーを募集することに。
もともと起業家だったダゴベールさん。アイデアを思いついた後の行動は早かった。早速仕立て屋に相談し、スーツのデザインを決めていく。
スポンサーのおかげで結婚式にこぎつけた
だが、新婦のアンナさんは当初、この「スーツ」に難色を示したという。そりゃそうだろう。女性にとっては一世一代の晴れ舞台である結婚式に、新郎がロゴだらけの衣装で登場するなんて…。
最初、妻はこのアイデアに反対していました。でも、私が長年築き上げてきた起業家コミュニティのみんなに、この特別な日に一緒に参加してもらえるようにしよう、と考えるようになりました。
それから私たちは2人とも、真剣に取り組むようになったんです
値段は場所によって異なり、背中の一番上の大きな枠は、オークション形式で入札を募り、最終的には1,700ユーロ(約30万円)で落札。
その他は場所やサイズによって、だいたい300~1,000ユーロ(約5万4,000~18万円)くらいだそうだ。広告費と考えたらこの値段は高い?それともリーズナブル?
このスーツは結婚式で着るだけではなく、ダゴベールさんがSNSに投稿する写真や動画の中でも着ることを約束した。
そしてともかくも、募集を始めて数週間で、ダゴベールさんは26社の企業から、およそ1万ユーロ(約180万円)の資金を集めることに成功したという。
そして2025年10月25日、2人は16人の参列者が見守る中、念願の結婚式を挙げることができたのだ。
収支の結果は微妙な赤字に
結婚式の間中、ダゴベールさんロゴが全て写真に写るよう、いつも気を配っていたそうだ。そのおかげで、誰よりもストレスを感じていたんだとか。
それに、スポンサーの枠は全て埋まったものの、このプロジェクトでお金を貯めることはできなかったそうだ。
ロゴ入りのきれいなジャケットを作るのは、思っていたよりもずっと大変でした。それも、こんな短期間でとなればなおさらです。
最終的に、スポンサー枠で得た1万ユーロのうちの5,500ユーロ(約99万円)程度が、スーツのカスタマイズ費用に消えました。
それにフランスでは私の起業家としての立場上、経費として計上できなかったので、2,500ユーロ(約45万円)の税金を支払わなければなりませんでした。
つまり私の手元には、最終的に無料のスーツと、およそ2,300ユーロ(約41万3,000円)が残ったのです
さらに撮影のためにプロのカメラマンを雇ったことで、結局はいくらかの赤字を出す結果になってしまったらしい。
「一生に一度の結婚式なのに…」ロゴスーツには賛否両論
この結婚式がSNSで拡散されると、いろいろな意見が寄せられた。彼のアイデアを良いと思う人もいれば、せっかくの結婚式なのに、奥さんがかわいそうだと思った人もいたようだ。
- 超イタい。奥さんはドン引きしてると思う
- もしこれで結婚式もハネムーンも、新居まで賄えたならイタいとは思わないよ。でもおそらく花代すらペイできていないだろうから、やっぱりイタい
- おめでとう! それと仕立て屋さんにも拍手。全部のロゴがちゃんと見えるよ! ニュースになるといいね!
- 動画が完成したら大々的にPRするつもりだよ(ダゴベールさんコメ)
- ダサい…
- まあね。
本当だとしたら、ただの普通のスポンサー広告だし、ある男が自分の結婚式をネタにしてるだけだよ
- その通り。結婚式はふたりのためのもの。そこに変なことをねじ込むと台無しになる
- 人生ってマーケティングだけじゃない。自分たちの結婚式を安っぽいギミックにしてしまうなんて奥さんがかわいそうだ
- これはイタいよ。結婚式にお金がかかるのはわかるけど、自分とパートナーにとって最高の日なんだろ? これじゃ「ロゴだらけのダサいスーツ着てた人」って印象しか残らないよ。それに企業側も何の得があるの? ロゴを見ただけで、何の会社かなんて気にしないし。
- 残念だね。10年後にはこのロゴなんて全部なくなってるのに、結婚写真だけには永遠に残る。彼は、妻よりスポンサーを優先したってことだよ
- 企業に結婚式代を出してもらって、しかもロゴなんて後でPhotoshopで簡単に消せるんだろ? なら別にいいんじゃない? 高すぎる結婚式代のせいで、借金して人生を始めるほうがよっぽど変な文化だよ
- 10年後も「良いアイデアだった」って思えてるといいな。おめでとう!
- 君のおかげで、興味を持てるテック企業を2社知れたよ。よくやった
- 笑った、君ってほんと狂ってるよ。でも嫌いじゃない。
おめでとう、ふたりが末永く幸せでありますように
- ありがとう。きっと僕たちは幸せになれるよ(ダゴベールさんコメ)
「人生を変える仕事」が舞い込むきっかけに
だがダゴベールさんにとって、このプロジェクトは結婚だけではなく、もうひとつの大きな人生のターニングポイントとなったようだ。
なんとロゴ入りスーツを製作している過程で、彼の熱意と、スポンサーの枠をすべて埋めた手腕に感銘を受けた起業家が、彼にアメリカで急成長中のスタートアップ企業での仕事を紹介してきたのだ。
実はダゴベールさんはバツイチで、以前は前妻といっしょにスタートアップ企業を経営していた。だがその結婚は破局を迎え、会社は前妻のものになったそうだ。
その後、アンナさんと交際をはじめたダゴベールさんは、もう一度起業するか、それとも職探しをするか悩んでいた。
しかしこのオファーのおかげで、経営者ではなく営業マンとしての第二の人生を踏み出す決意をしたのだ。
この「転職」は彼にとって、運命が良い方に転がるきっかけとなった。どうやら彼には営業マンとしての天賦の才能があったらしい。
今や彼は、「車を1台買えるくらい」の収入を、毎月得ることができるようになったとか。
かつての彼が起業したのは、「成果ではなく結果に対して報酬が払われる仕事を得たい」と思ったからだという。
だが今の彼は、営業マンになれば同じことが、10倍簡単に実現できることに気づいたそうだ。
起業も(雇用される)仕事も両方やってみましたが、どちらにも本当の自由なんてありません。というより、そもそも人生そのものに自由はないんです。いつだって乗り越えるべき新しい障害や課題が出てきます。
唯一の方法は、その事実を受け入れて、自分の内側に自由を見つけることです。そうすれば、どんな状況にいても動じなくなるんです
ダゴベールさんは起業をやめて営業に転向したことで、 多くを学び、その過程を楽しみながら大金も稼げるようになった。今後は会社のあるニューヨークに移住して、さらなる飛躍を目指すそうだ。
さて、一生に一度の大切な日に着る、ロゴでいっぱいの結婚衣装。人生を大きく変えてしまうオマケつきかもしれないが、みんなならあり?それともなし?
References: 'Completely Broke' Man Couldn't Afford His Wedding. So, He Came Up with an Unconventional Way to Pay for His Suit (Exclusive)[https://people.com/completely-broke-man-couldn-t-afford-his-wedding-so-he-asked-tech-startups-to-sponsor-his-suit-exclusive-11842991]











