火星の北半球にあるヘブルス渓谷で水が岩を削って形成した可能性のある洞窟が8か所特定された。
中国・深圳大学の研究チームは、NASAの観測データと高解像度画像を調べ、洞窟周辺の岩石が水に溶けやすい成分を多く含むことを確認した。
洞窟の内部は地表より環境が安定し、生命の痕跡が残りやすいと考えられる。
そのため、研究チームはこの8か所を地球外生命の手掛かりを探すうえで最優先で調査すべき地点だと提案している。
火星の生命は地下に潜んでいた可能性
火星の地表は放射線、砂嵐、急激な温度変化にさらされ、生命が存在し続けるには厳しい環境だ。
深圳大学の研究チームは、地下洞窟なら、こういった影響を避けられるため、生命の痕跡が長く残る可能性が高いことに注目した。
そこで研究チームは、火星北半球にあるヘブルス渓谷に注目した。
ヘブルス渓谷[https://www.jpl.nasa.gov/images/pia11704-pits-and-channels-of-hebrus-valles/]は、火星の赤道付近にある広大なエリジウム平原の北西部に位置する溝状の地形で、細長い谷や連続する崩落穴が並ぶ地域である。
過去に地下の水が地形の形成に関わったと考えられてきたため、水の活動を調べる際の重要な地点とされてきた。
研究チームは、この渓谷にあった8か所の穴を調査した。
水によって作られた地下洞窟を特定
研究チームは、NASAの火星探査機が取得した熱放射分光計(TES)のデータを解析した。TESは、岩石や地表が放つ赤外線の特徴を調べることで、そこに含まれる鉱物の種類を特定する装置である。
解析の結果、8か所の穴の周辺に炭酸塩と硫酸塩が多く含まれていることが確認された。これらの成分は地球でも水に溶けやすく、カルスト地形の形成に関わる物質として知られている。
さらに高解像度画像をもとに3D構造を解析した。その結果、穴が地盤の崩落によって生じた形状を示していることがわかった。
研究チームは、これらの証拠を踏まえ、8か所の穴が火星で初めて確認された「水によって形成された可能性のある地下洞窟」であると結論づけた。
生命の痕跡を探すなら地下洞窟
洞窟の形成に水が関わったのであれば、その場所には液体の水が流れていた時期があったと考えられる。
液体の水は生命が存続する条件の一つであり、地下洞窟がその痕跡を残している可能性は十分にある。
NASAのパーサヴィアランス探査車がジェゼロ・クレーターを調査している理由も、水の存在が生命探索の中心にあるからだ。
地下洞窟の内部は地表より温度が安定し、放射線の影響も弱い。研究チームは、「生命の痕跡を探すなら、水で形成された地下洞窟だ」と主張する。
地下洞窟は有人探査の安全な拠点に
研究チームは、これら8か所の地下洞窟が生命探索だけでなく、将来の有人探査にも役立つと説明した。
地表よりも環境が安定しているため、安全な拠点になり得るというのだ。
これらの点を踏まえ、研究チームは、この8か所を将来の火星ミッションで最優先に調べるべき地点として提案している。
この研究成果は『The Astrophysical Journal Letters[https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/ae0f1c]』誌(2025年10月30日付)に発表された。
References: Jpl.nasa.gov[https://www.jpl.nasa.gov/images/pia11704-pits-and-channels-of-hebrus-valles/] / Mars may hide water-carved caves that once sheltered alien life[https://interestingengineering.com/future-of-space/ancient-martian-caves-water-alien]











