実はそれアートです。「鏡が汚れている」と勘違いして掃除してしまったボランティア
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 台湾の美術館で、展示室を巡回していたボランティアが、鏡を使った作品を「汚れている」と誤認し、キレイに拭き取ってしまうという事案が発生した。

 だがその鏡についた「汚れ」こそが、その作品の核心的な要素であったため、アートとしての作品の意味自体が失われてしまう事態となった。

 美術館側はこの作品を制作したアーティストに謝罪するとともに、保険対応も含めて協議が続けているという。

諸行無常を表現したアート作品

 2025年11月、台湾北部、基隆市の基隆美術館では「We are Me-我(們)到此一遊」と銘打った現代美術展が開催されていた。

 これは基隆市の文化観光局が主催していたもので、数々のアート作品が展示されていたのだが、その中に「倒裝的語句(倒置構文)-16」と題された作品があった。

 この作品はアーティストの陳松志さんの作品で、木製のボードに「埃(ほこり)を被って曇った鏡」がかけられている。

 鏡には、「40年の長い時間をかけて堆積したほこり」が表現されており、「中流階級の歪んだ文化意識」を象徴しているのだという。

 表面に堆積したほこりによって、時間の流れや無常を可視化することが作品の核心となっていた。

 もちろん、本当に40年かけてほこりを積もらせた作品ではなく、そういうコンセプトで制作されたものなのだが…。

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「気を利かせた」ボランティアが鏡のほこりをふき取ってしまう

 ところが、文化観光局所属のボランティアが、鏡面の「ほこり」を本物の汚れだと誤解して、トイレットペーパーできれいに拭き取ってしまったのだ。

 本人はまったくの善意だったのだが、美術館の職員がすぐに気づいて制止した時には、既に大部分の「汚れ」は拭き取られ、鏡は輝きを取り戻してしまっていた。

 作品のキモであった「汚れ」がキレイになったことで、ボランティアの行った「掃除」は、作品自体の意義を喪失させることになってしまったのだ。

 こちらがその劇的ビフォーアフターである。上がビフォーで、鏡の表面には白っぽい汚れがついていて、何が映っているのかよくわからない。

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 そしてこちらがアフターの写真。ピカピカになった鏡面には、美術館の階段がはっきりくっきり映っている。

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作品の「原状回復」はほぼ不可能、作者に謝罪

 文化観光局は直ちに作者である陳さんに連絡を取って謝罪するとともに、今後の対応を話し合ったが、残念ながら作品を元通りにすることは困難であることが判明した。

 観光局は陳さんへの謝罪と今後の対応について、次のようなコメントを発表している。

どれほど謝罪しても、このたびの出来事が、陳松志氏の創作活動に与えた損害への償いとはならないことを痛感しております。

基隆美術館は、基隆市における国際的な芸術創作および文化交流の場として、芸術活動の支援、文化遺産の保護、芸術リテラシーの育成、そして都市美学の醸成に責任を負う立場にあります。

私たちは今回の過ちを真摯に受け止め、各方面の専門家から寄せられる指摘や助言を謙虚に受け入れ、再発防止と改善、さらなる専門的な芸術施設としての発展に努めてまいります

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むしろ良くなった?現代アートに対するネットの意見

 この出来事に、ネット上ではいろいろなコメントが寄せられているが、こういったいわゆる現代アートに対し、「?」な感想を持つ人が多かったみたいだ。

  • 傑作を台無しにしたんじゃないよ。むしろこの作品を「次の段階」に昇華させたんだ
  • ちょっと待って、あの「アート」って本当にただの汚れた鏡だったの?
    • そう。今の時代は、哲学っぽい話をくっつければ何でも高額アートになる。散らかったコーヒーテーブルも、バナナをテープで貼っただけでもね
  • 作者にとって意味があるか、見る側に何かを示しているなら何でもアートになり得るんだな
  • 似たようなアート作品を、地元の公園のトイレで見たことあるわ
  • 今の方がずっと見栄えいい。展示はこのまま残して、ボランティアの名前を「新しい作者」として書いておけば?
  • かわいそうに、中産階級の「ゆがんだ自己認識」を台無しにしちゃったね
  • 中産階級って?
    • 文字通り、毎日必死に生きなくてもいいってこと。歪んでるよね。子供たちは一生ローンに縛られる未来を押し付けられてるのに
      • だから鏡の汚れが拭き取られたのは、皮肉としてぴったりなんだよ。「日常の神秘性」が剥がれたわけだ
  • どう感じようと、現実は物理と化学に縛られている。あれは本当にただの汚れた鏡だ。
    「身の回りのものの見え方を変えてるだけ」なら、注目されなくても仕方ない
  • 別のものに間違われる時点で、それはもうアートじゃない
  • うちにも汚れた家具があるけど、DMくれたらアートとして高値で売るよ
    • アートは「感情的反応を引き起こすために作られたもの」。イラッとさせるのも含めてね
  • だから説明する銘板が必要なんだよ。じゃなかったら、素人でも一目でわかるアートを作るかだね
  • 壁にバナナ貼ったやつの中国版だな
  • 汚れた鏡も面白いけど、壁バナナの輝きには勝てない
  • これは作品を台無しにしたのか、それとも作家のメッセージをむしろ強調したのかな

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損害賠償は成立するのか?

 今回の件に関し、弁護士は「作品についたほこりを拭き取っただけ」では、作品そのものに財産的な損害が発生したとは認められない場合が多いと指摘している。

 そのため、保険が「損害を補填する」という考え方に基づくものであれば、今回の件は損害が発生したとみなされず、保険金が支払われない可能性があるという。

 確かに破壊したり汚したりしたわけではないので難しいところではあるが、ホコリも作品の一部だったとするならば、作品を棄損したことになるかもしれない。

 なお、鏡をキレイにしてしまったボランティアに対しての具体的な処分は公表されていないものの、当局では今後、スタッフやボランティアへの教育を徹底していくと発表しているそうだ。

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References: 特展作品遭志工誤認髒汙擦拭 基隆文觀局致歉[https://www.cna.com.tw/news/acul/202511050455.aspx]

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