「養育費を払いたくない」という理由で毎年名前を変えていた男性

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 離婚する時は結婚する時よりも、気力も体力も時間も手間もそぎ落とされていくもの。すべての手続きが終われば、やっとスッキリ新しい人生が送れる。

 …ようになるかと思いきや、もしも子供がいて、養育費を払い続けなければならない立場となったら、その負担はかなり長い間続くことになる。

 なんとかして払わずに済ませたい、バックレたいと思い始めるのも時間の問題。ロシアのとある男性は、この支払いを免れるために、ある奇抜なアイデアを思い付いたのだが…。

養育費から逃れるために、毎年改名していた男性

 離婚後にも養育費の問題であれこれ揉め事が発生するのは、古今東西共通のことらしい。

 ロシアのシベリア西部にあるチュメニという街で、養育費の徴収を担当している執行官のロマン・コレネフ氏は、次のような体験を語っている。

 地元に住んでいる1人の男性が、養育費の支払いを逃れるために、年に一度自分の名前を変えていたんだそうだ。

 この男性は、一度自分の名前を全部変えて、1年後にまた元の名前に戻し、それからさらに改名する…といったことを延々と続けていた。

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ロシアでは改名するのはかなり簡単

 ちなみにロシアでは、名前の変更は比較的簡単にできるらしい。単に「気に入らない」とか「人生をリセットしたい」とか言ったような理由で、ほぼ何でも理由として認められるんだそうだ。

 名前の変更は14歳になれば誰でも可能で、しかも「父親の名前」から派生したはずの父称も自由に変えられる。手数料は5,000ルーブル(約1万円)。

 ロシアの人名は、基本的に個人名・父称・姓からなる。例えばドストエフスキーのフルネームはフョードル・ミハイロヴィッチ・ドストエフスキーである。

 フョードルが個人名で、ドストエフスキーが姓。

父親の名前がミハイルだったので、ミドルネームが父称のミハイロヴィチになっているという具合だ。

 プーチン大統領の場合は、フルネームがウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチンで、個人名と父親の名前がともにウラジーミルであることがわかる。

 女性の場合は父称の語尾の「ヴィチ」が「ヴナ」あるいは「エヴナ」になるが、父称がつくことには変わりはない(女性は姓の語尾も変わる)。

 自分の父親を変えることはできないから、これは不変なのかと思いきや、気に入らないとか親と不仲とかの理由で、父称もやっぱり変更可能。

 この男性の場合は、名前を変えることで別人になり、養育費の支払いから逃れられるという目論見があったようだ。

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改名しても養育費の支払い義務に影響はなかった

 だが、もちろんそうは問屋が卸さない。いくら改名しようが、この男性に養育費の支払い義務があることには変わりはない。

 そこでこのケースでも、法執行官であるコレネフ氏の出番と相成ったのである。

氏名が変わった場合、その事実は登記所から法執行官に報告されます。改名という方法で、養育費の支払いから逃れることはできません

 コレネフ氏はこう説明する。この「改名ループ作戦」は、当局同士の情報連携によってあっさり見破られ、養育費の支払い義務そのものが消えることはなかった。

 その後の詳しい処分内容までは報じられていないが、少なくとも「名前を変えれば借金がリセットされる」という発想が、通用しなかったことだけは明らかである。

ロシアでは養育費未払いは犯罪扱いになることも

 ここで、ロシアにおいて離婚の際の養育費の取り決めについて、さらっと触れておこう。

 ロシアでは、未成年の子供に対する養育費は「ロシア連邦家族法典[https://www.wipo.int/wipolex/en/text/498129]」で細かく定められていて、子供が1人なら親の収入の4分の1、2人なら3分の1、3人以上なら2分の1を目安とするのが原則とされている。

 夫婦のどちらかが離婚に同意しなかったり、養育費の支払いを拒否したりするケースでは、裁判所で離婚の判決が下されることになる。

 円満に協議離婚となり、養育費に関しても揉めずに合意できた場合でも、公証人の前で養育費に関する契約を結ぶことが多いそうだ。

 この公証付き契約は、裁判所の判決と同じ効力を持つ「執行文」として扱われ、支払いが滞ればそのまま強制執行の対象になる。

 万一、養育費の未払いが続いた場合、この文書は連邦司法執行局(FSSP)に送られ、コレネフ氏のような司法執行官が扱うことに。

 その結果、給与や年金からの天引き、銀行口座や車・不動産の差し押さえ、出国禁止や運転免許の一時停止といった、厳しい措置が順次発動するんだとか。

 それでも未払いが続く場合には、ロシア刑法157条に基づき刑事事件として扱われ、罰金や労働、拘禁といった処分が科される可能性もある。

 つまり我らがおそロシアでは、一度裁判所や公証人を通じて養育費が決まった段階で、支払いは事実上「国家管理」の領域に入り、改名程度の小細工では逃げ切れない制度になっているのである。

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 というわけで、コレネフ氏の経験談に出てきたこの男性、いくら名前を変えてみても、最初から逃げ道などなかったのだ。改名にかかる手数料を、国家に寄付していたようなものである。

「改名くらいで逃げられるわけない」と冷ややかな声

 この話を聞いたネットユーザーたちは、あきれ果てたといったコメントを寄せている。

  • バカげてるわ。自分の子にお金を払わないだけじゃなくて、自分でこんな面倒を増やすなんて。
    (改名したら)書類を全部変えて、銀行も保険も免許証も職場も、ぜんぶ情報更新しないといけないんでしょ?
  • 何回改名しようが、法律上親であることには変わりないし、養育費を払う義務は消えないでしょ。払っていなかった分も、どうせ全部支払うことになるんだよ。自分で子供を作っておいて、今さら自分には関係ないみたいな顔して逃げ道を探してるけど、そんなのは通用しない!
  • 名前をコロコロ変えて逃げ回るくらいなら、いっそ性別を変えたらよかったのでは
  • バカだねえ。役所同士がデータを回すに決まってるじゃん。少なくとも「この人は改名しました」って通知くらいは行くでしょ。そんなやり方で責任から逃げられるわけないって
  • 個人番号(マイナンバーのようなモノ)は変わらないんだから、誰もチャラにしてくれないよ。名前を300回変えたところでね
  • ダチョウみたいに頭だけ隠したつもりなんだよ。
  • 養育費から逃れたい連中って本当に何でもやるね。でも年を取ったら、結局その子どもたちに助けを求めてすり寄ってくるんだよ
  • 養育費が高くて払えないなら、もっと安くなるようまず交渉すべきだったのでは?
  • この男、いったい何歳なんだよ…
  • でも、もう何回も名前を変えているってことは、それなりに効果があったってこと?
  • AIの作り話でしょ

 そもそも改名が簡単ではない日本では、こんな発想は出て来ないかもしれないが、養育費の未払いは世界中どこでも跡を絶たない問題だろう。

 養育費は慰謝料や生活費ではなく、子供のための権利である。このくらい厳しくガッツリ取り立てるシステムがあってもいいような気がするけど、どう思う?

References: Man Changes His Name Every Year to Avoid Paying Child Support[https://www.odditycentral.com/news/man-changes-his-name-every-year-to-avoid-paying-child-support.html]

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