歴史好きや旅好きに朗報!なんとマップでタイムスリップが可能に。「すべての道はローマに通ず」のことわざが、スマホやPCから瞬時に体感できるのをご存じだろうか。
国際研究チームが公開中の「Itiner-e」は、 西暦150年頃のローマ帝国全域の道路網をデジタルで再現したもの。
”古代版Googleマップ”のごとく、当時の街道を検索し、旅程までシミュレーションできるのだ。
石畳の主要道路から砂漠のキャラバンルート、アルプス越えの峠道まで、広大な帝国を支えた道が鮮やかに蘇る。
かつての超大国の広大な道路網を眺めつつ、有名な街道沿いの旅のプランも立ててもいい。古代ローマの研究者にも役立つ「デジタル遺産」にせまっていこう。
この研究成果は、『Scientific Data[https://www.nature.com/articles/s41597-025-06140-z]』誌((2025年11月6日付)に掲載された。
古代ローマ帝国全域の道路網をデジタル化で再現
話題のItiner-e[https://itiner-e.org/](アイテナリー e)は、今から1875年ほど前の西暦150年頃、最盛期にあったローマ帝国全域の道路網をデジタル化で再現したもの。いわば「ローマの古代版Googleマップ」だ。
そのマップはPCでもスマホでも見て操作できる。
Itiner-eは考古学的記録や歴史資料、地形図、衛星画像を組み合わせて構築された高精度データセットで、これまでの推定値を上回る、総延長約30万kmにおよぶ道路をインタラクティブに閲覧・検索・ダウンロードできる。
主要な幹線道路から副道までが網羅され、古代の旅を現代のマップ感覚で体験できるのが最大の魅力。
研究者にとっては交通史の分析ツール、一般ユーザーにとっては古代旅行のシミュレーターとして楽しめる「デジタル遺産」といえるだろう。
判明した圧倒的なスケール
ヨーロッパ各地から集まった国際的かつ学際的な科学者チームに作成されたItiner-e。そこで注目すべきは圧倒的なスケールだ。
参考として、2世紀のローマ帝国は人口約6,000万人。領域はブリテン島からエジプト、シリア砂漠まで広がっていた。
Itiner-e の最新データによると、当時の道路総延長は 約30万km(299,171 km)、帝国全体の総領域は 約400万平方 kmもあった。
数字だけでも壮大だが、当時の様子を再現したItiner-e の動画を観ると古代の旅人になったような錯覚に陥る。
と同時にマップを俯瞰することで、都市と都市とを結ぶ線、交易と軍事、文化の流れなど、深い考察に没頭できる。
高い設計思想により痕跡を残した道路
当時のローマの道路は多層構造だった。基盤に溝を切り、瓦礫や砂利を敷き固めたのち、土と砂を重ね、その上に石を積み敷設された。
また水はけを良くする工夫として、路面はわずかにアーチ状にされていた。結果、維持費が安価で済んだことがわかっている。
1900年近くを経た現在まで、その痕跡が残るのは、偶然ではなく、古代ローマ時代の職人の高い設計思想のたまものだったのだ。
そんな道路の光景に思いをはせると、石畳の道をしっかりとした足取りで踏み進むローマ軍の靴音、荷車の軋みの音まで聞こえてきそう。
Itiner-e で古代ローマを旅
Itiner-eで、サラマンカ(現スペイン、当時はローマ帝国のヒスパニア属州)からコモ(イタリア)までを調べると、徒歩で約447時間。その距離は約1720km。およそ19日間の旅に相当する。
パンプローナ(現スペイン北部)からピレネー山脈を越え、トゥールーズ(現フランス南部、当時ガリア属州)とニーム(現フランス南部、当時ガリア・ナルボネンシス属州)を経由。そしてアルプスを抜けてトリノ(イタリア)へ。
そのルートを丁寧にたどっていけば、旅の途中の休息や補給、そこで眺める景色といったものまでがリアルに感じられるかも。
現代のボローニャからミラノへ続く道は、古代のボノニア(Bononia:ボローニャの古代ラテン語名)からメディオラヌム(Mediolan(i)um:ミラノのラテン語名)へ続く道(1,355km 。徒歩で344時間)と重なる。
この道のりも14日間とけっこうな長旅だ。
実は10万 km以上も長かったローマの道
Itiner-e は14,769もの道路区間を収録。道路区分で言えば、幹線道路34.6%、副道65.4%だという。
バルセロナ自治大学のパウ・デ・ソト氏をはじめとする国際研究チームは、このマップを「ローマ帝国全域の道路網を対象にした最も詳細で包括的なオープンデジタルデータセット」と説明している。
より詳しく言えば、道路全体のうち、正確な位置が確定しているのは2.737%、より精度が低いのものが89.818%、残りの7.445%は仮説から再現している。
なにぶん昔のことなので無理もない話だがそこには「存在は確かなのだが、正確な位置がはっきり定まっていない」道路が含まれている。
一方、これまで低解像度の直線で表されていた山道を、高解像度のデジタル化により地形沿いの曲がりくねった道に更新するなど、実際の環境に即した修正もなされている。
その結果、従来の推定値、約19万 kmより10万 km以上も長い、 総延長約30万kmが確認されたのだ。
初の全域カバーで研究に役立つインタラクティブマップ
今回の古代ローマ帝国の全域カバーは、当時の道路網の発展や都市間交流の精密な検証をおこなう研究者に役立つ、と評されている。
加えて、Itiner-e は交通史や都市史の分析に耐える構造化データも提供するなど、古代ローマ帝国の広大な全貌がここまでクリアになったのは初のことであり、きわめて画期的なことなのだ。
こうしたことから「Googleマップのように古代の道路網を探索できるインタラクティブなマップ」とも称されている。
PCや手元のスマホが古代へのパスポートに
PCや手元のスマホが古代へのパスポートになるような面白さ。手軽に時を超えられるItiner-eの登場はちょっとした衝撃だ。そこに現れた道は今もあなたをローマへ導いている。
歴史好きや旅好きにもってこいだし、開いて眺めて想像するだけでもワクワクが加速する。
なお操作については、残念ながらItiner-eに日本語入力はなく、地名もローマ帝国時代の地名と難しい部分もあるが、前面のボタン操作でマップ上に現在の地名や他の国名や国境を表示できる。
基本操作はGoogleマップ風。ルート作成も同様だが、徒歩のほか、牛舎やロバ、バージョンのルート計算もあったり。
拡大して道をポイントすると、そこがオレンジから紫色になり、歴史的な詳細情報なども表示される。
また高精細の3D表示のほか面積や距離を測ることもでき、なかなかに興味深い。
さらにデータセットの完全版のダウンロード方法など、詳しくはItiner-e サイト内にチュートリアルの動画集[https://itiner-e.org/tutorials]をチェックだ。
いろいろ使ってみたい人は参考にしてみてはいかがだろう。
というか、テルマエロマエで、日本にタイムスリップしてやってきた設計技師の阿部寛(ルシウス・モデストゥス)がいた時代は西暦130年ごろだから、あの頃に近いローマを見られるのも楽しいな。
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References: Itiner E[https://itiner-e.org/]











