アメリカ都市部のアライグマに変化。顔つきが変わり攻撃性が低下、家畜化の傾向
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 人間が自然の中に生活圏を広げていくことで、その都市に馴染むための「新たなペット」が生まれつつある。

 アメリカのアーカンソー大学の研究者たちは、都市で暮らすアライグマの体に変化が現れていることに気づいた。

 鼻先が短くなって丸顔になり、攻撃性も低下しているという。

 これは「家畜化症候群」と呼ばれる現象で、人間のそばで暮らすうちに野生のアライグマが少しずつ適応を始めた兆しだと考えられている。

 かつてオオカミが犬へと変わったように、アライグマもまた、人間と共に生きる道を歩み始めているのかもしれない。

 この研究成果は『Frontiers in Zoology[https://frontiersinzoology.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12983-025-00583-1]』誌(2025年10月2日付)に掲載された。

アメリカの都市部に住むアライグマの変化

 アライグマ(Procyon lotor)は北アメリカ原産の中型哺乳類で、パンダのような黒いマスク模様の顔と縞のある太い尻尾が特徴だ。体長はおよそ40~60cm、体重は4~9kgほど。

 夜行性で雑食性。前足の指が非常に器用で木登りや泳ぎも得意である。

 前足を水中に突っ込んで獲物を探る姿が手を洗っているように見えることから、種小名「lotor」は、ラテン語で「洗うもの」を意味し、漢字でも洗熊と書く。

 本来は、森で果物や昆虫、小動物、魚などを食べていたが、人間の生活圏に順応し、ゴミをあさることも多い。このことからアメリカでは「ゴミパンダ(Trash Panda)」の異名を持つ。

 アーカンソー州、アーカンソー大学リトルロック校(UALR)のラファエラ・レッシュ[https://www.researchgate.net/profile/Raffaela-Lesch-2]助教授が率いる研究チームは、都市部に現れるアライグマの姿に変化が起きていることに気が付いた。

 そこで、アメリカ合衆国本土に生息するアライグマを対象に、都市部と農村部での体の違いを詳しく調べた。

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鼻先が短くなり丸顔に、穏やかになったアライグマ

 研究チームは、アライグマが都市でどのように変化しているのかを確かめるため、2000年から2024年までの間、自然観察アプリ「iNaturalist[https://www.inaturalist.org/]」にアメリカ各地の一般市民が投稿したおよそ2万枚のアライグマの画像を使って、都市部と農村部の個体を比較した。

 コンピューターを使ってアライグマの頭の形や鼻先の長さを詳しく分析したところ、都市に住むアライグマの鼻先は、農村部の個体より平均3.56%短いことがわかった。

 顔全体もやや丸くなっており、どこか親しみやすいキャラクターのような印象となっていた。

 鼻先が短くなるという変化は、犬や猫など、長い時間をかけて人間と共に暮らす動物によく見られる生物学的プロセス「家畜化症候群」の初期段階にあることを示唆しているという。

 こうした変化は、人間が暮らす都市という環境への適応の一部だと考えられている。

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人間に好かれればゴミが食べられる

 「家畜化症候群」とは、動物が人間のそばで暮らすうちに共通して起こる変化のことだ。

 たとえばオオカミが犬へと家畜化したときのように、攻撃性が低下し、耳が垂れたり、毛の模様が多様になったり、鼻先が短くなったりする。

 このような特徴は、性格だけでなく体の構造そのものが変わることで現れる。

 アライグマにも同じような変化が起き始めているのではないかと、研究チームは考えている。

 人間が作り出した都市では、ゴミとなっている食べ物が豊富に手に入り、天敵も少ない。そのため、人間をあまり怖がらず、人の存在を受け入れられる個体ほど生き残りやすくなる。

 レッシュ助教授は「都市という環境そのものが、アライグマの体つきや性格を少しずつ変え始めているのかもしれない」と語る。

 この研究は、家畜化が人間による飼育や繁殖によってのみ起こるのではなく、自然の中でも環境によって起きうることを示している。

 つまり、人間の存在そのものが、新たな進化を引き起こす要因になっているということだ。

 

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アライグマがペットになる未来?

 研究チームによると、都市のアライグマが人の住む場所の近くに集まる理由は単に「ゴミとなった食べ物」があるからだという。

 レッシュ助教授は「人間の暮らしている場所には必ずゴミがある。アライグマはそれを好み、簡単に食べ物を得られる。人間に嫌われなければ、豊富な食料が手に入ると学んだのだ」と語る。

 現在、レッシュ助教授のクラスでは、この研究をもとにさらに調査を続けている。次はアルマジロやオポッサムなど、ほかの都市動物にも同じ傾向が見られるかを確かめる予定だという。 

 犬は人による選択交配で、猫は自然な共存で家畜化が進んだ。アライグマは猫のパターンに近い。人間が意図せず作り出した都市という環境が、アライグマに「人と共に生きる道」を選ばせているのだ。

 もし人間に慣れた個体だけが生き残り、交配を繰り返す状況が続けば、家畜化は犬や猫よりも早く進む可能性がある。数百年後には、ペットとして、あるいは地域犬や地域猫のように、人間と共に暮らすようになるかもしれない。

 すでにアライグマをペットとして飼っている家庭もある。

知能が高く手先の器用なアライグマが、安全でフレンドリーになれば、飼いたいという人はさらに増えるだろう。

References: UALR[https://ualr.edu/news/2025/10/16/raccoons-show-early-domestication/] / Biomedcentral.com[https://frontiersinzoology.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12983-025-00583-1]

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