アメリカ・フロリダ州の動物園で、鹿と七面鳥という異色のコンビが、種を超えた熱い友情を見せてくれている。
動物園が公開した映像には鹿に優しく毛づくろいをされ、うっとりと寄り添う七面鳥の姿が映っており、まるで絵本の中のような世界が広がっていた。
本来は野生で群れの中で生きる彼らが、動物園という環境で育んだ心温まる光景は見る人の心を穏やかに包み込んでくれる。
七面鳥と鹿、アメリカでは馴染みの野生動物
日本では鹿といえば奈良公園が有名だ。七面鳥は日本に生息していないので、あまりなじみがないが、アメリカでは鹿も七面鳥も、住宅街のそばに住んでいて見かけることも多い。
ペンシルベニアに住んでいたパルモも、裏庭で何度も鹿や七面鳥と遭遇している。ほかにもリスやすかんく、アライグマなど、アメリカでは野生動物に遭遇する機会はとても多い。彼らは人間と共に暮らす、いわば「ご近所さん」なのだ。
そんな彼らが動物園で心を通わせた。
フロリダ州メルボルンにあるブレバード動物園では、自然の生態に近い状態で、野生動物を飼育・公開しており、野生下でも生息域が重なっている種は、同じスペースで飼育している。
オジロジカのピーチ(メス)と、フロリダ半島にのみ生息する七面鳥一種、オセオラターキーのピルズベリー(メス)もそのひと組だ。
このコンビは異種でありながらとても仲が良く、常に寄り添っており、寝るのも食べるのも一緒の大親友だ。
七面鳥が震えているのはうれしさの現れ
動画には、鹿のピーチがピルズベリーの顔に自分の顔を優しく押し当て、ていねいに毛づくろいする様子が映っている。
ピルズベリーはその間、小さく震えながらピーチに寄り添っている。
だが動画を見た人たちからは、「ピルズベリーが震えているのは鹿におびえているのでは?」と心配する声が上がった。
確かに、自分よりずっと大きな鹿に顔を近づけられたら、怖がっていると考える人がいてもおかしくない。
それに対しブレバード動物園の飼育員であるマロリーさんは、この震えこそが「幸せの証」なのだと説明してくれた。
七面鳥がこのように体を震わせるのは、リラックスして満足しているときのサインだという。これは猫が喉をゴロゴロと鳴らすのと同じ意味を持つそうだ。
ピーチにお手入れをしてもらっているピルズベリーは、恐怖どころか心地よさに浸っている状態なのである。
さびしがり屋で仲間を必要とする七面鳥
野生の七面鳥に不用意に近づくのはおすすめしないが、適切な環境で愛情を持って接すれば、実はとても人懐っこくて社交的な動物だ。
彼らは孤独を嫌うさびしんぼうで、野生でも群れで行動し、仲間と一緒にいることで安心する。農場や保護施設などでは、1羽だけで飼うことは推奨されていない。
常に仲間の七面鳥や、他の種類の鳥や家畜といった動物たちと一緒にいる必要がある。
今回のピルズベリーにとって、その誰かは同じ動物園で暮らす鹿のピーチだったのだろう。
ちなみにアメリカでは11月の第4木曜日が感謝祭(サンクス・ギビングデー)だ。
収穫と恵みに感謝するために始まった感謝祭は、古くから家族が集まり、七面鳥の丸焼きを食べるのが伝統行事となっている。
感謝祭で食べられている七面鳥は、家畜化された「ドメスティックターキー」という別の品種なので、ピルズベリーが食卓に上がることはないが、七面鳥の知られざる一面を知ることで、命をいただくことへの感謝の気持ちを改めて思い出させてくれるのではないだろうか。











