南アフリカ西海岸にあるウエスト・コースト国立公園で、170年ぶりに野生のヒョウが確認された。1頭のヒョウが自動撮影カメラに写っていたのだ。
これは、長らくこの地から姿を消していたヒョウが、再びかつての生息地へと戻りつつあることを示している。
その背後には、人間が絶滅に追いやったヒョウを再びこの地に戻すための、20年に及ぶ地道な保全活動があった。
人間の活動によってバラバラに分断されてしまった自然を再びつなぎ合わせ、通り道を作る「野生生物回廊」という取り組みが、ついに実を結んだのだ。
170年ぶりに姿を現したヒョウ
南アフリカ西海岸では、1800年代半ばを最後に、野生のヒョウの確実な目撃情報は途絶えていた。
だがついに、その時は訪れた。
ケープタウンの北にある「ウエスト・コースト国立公園」に設置された野生動物観察カメラ(トレイルカメラ)が、その姿を写し出したのだ。
公開された写真には、暗闇の中で眼を光らせ、警戒心を持ってあたりをうかがうヒョウの姿がはっきりと捉えられている。
南アフリカ国立公園局(SANParks)は2025年11月13日、Facebook[https://www.facebook.com/South.African.National.Parks/posts/pfbid02bZEstDTw8dzFbb4tKbSY3DKzdgdJAi4PgwyyaiMzuXkFRJiEmoKedve13vu2JUgzl]に写真を投稿。この発見を「生態系が回復している力強い証拠」とし、ヒョウが自らの力で故郷に戻ってきた歴史的な瞬間だと位置づけている。
なぜヒョウは姿を消したのか?
そもそも、なぜ170年もの間、この地域からヒョウがいなくなってしまったのだろうか。
ヒョウはアフリカからアジア、極東ロシアまで広い範囲に住んでいる動物だ。今回撮影されたのは、その中でもアフリカ大陸に生息する「アフリカヒョウ(学名:Panthera pardus pardus)」である。
アフリカヒョウはオスの体重が60kg~90kgにもなる大型のネコ科動物で、金色の毛皮に「ロゼット」と呼ばれる梅の花のような美しい斑点を持つ。
力が強く、木登りが得意で、捕らえた獲物を他の動物に奪われないよう、木の上に運んで食べる習性がある。
かつては西海岸一帯にも生息していたアフリカヒョウだが、19世紀に入ると状況が一変した。
入植者による牧畜が盛んになると、家畜を襲う害獣として徹底的に駆除されたのだ。
加えて、美しい毛皮を目的とした狩猟や、開発による生息地の減少が追い打ちをかけ、この地域から「地域的に絶滅」してしまったのである。
現在、ヒョウという種全体は国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「危急種」に指定されており、絶滅のリスクが高い状態が続いている。
分断された土地をつなぐ「野生生物回廊」
一度は人間によって追い出されたヒョウが、なぜ戻ってくることができたのか。それは自然に起きたことではなく、ヒョウを呼び戻すために「道」を作った人々がいたからだ。
SANParksをはじめ、民間の地主、西ケープ大学、地元自治体、そして保護団体「ランドマーク・レオパード・アンド・プレデター・プロジェクト」などのチームが結束し、過去20年もの歳月をかけてある壮大な保全活動を行ってきた。
それが「野生生物回廊」の構築だ。
人間が道路や街を作ったことで、これまで繋がっていた森や草原はバラバラに分断され、動物たちは移動手段を失っていた。そこでプロジェクトチームは、分断された土地と土地の間に、動物たちが安全に通れるルート(緑の通り道)を確保し、再びつなぎ合わせたのだ。
彼らはケープタウンからバーグ川の間をモニタリングしながら、北部、西部、東部ケープ州にまたがる広範囲な回廊を整備し続けた。この地道な努力によって「帰り道」が完成し、ヒョウは誰にも邪魔されることなく移動して、かつての故郷である西海岸までたどり着くことができたのだろう。
新たな保全活動の在り方、囲い込むのではなく、通り道を作る
今回の成功は、保護活動のあり方が変わりつつあることも示している。
これまでは、動物を特定の「保護区」の中に囲い込んで守る方法が主流だった。
そこで保全チームは、「人間が暮らす土地の中でも、動物が安全に通過できるルートを作る」という方針に力を入れたのだ。
SANParksの広報担当者JP・ロウ氏は、地元メディアに対し「野生生物回廊により、ヒョウのような野生生物が風景の中をより自由に、安全に移動できるようになりました」と語っている。
今回撮影された個体がこの場所に定着するかどうかはまだ分からないが、少なくとも「道」は開かれたのだ。
アフリカ各地で見られる回復の兆し
大型ネコ科動物の回復に向けた動きは、南アフリカだけではない。北に位置するザンビアのカフエ国立公園でも成果が出ている。
保護団体「パンセラ(Panthera)」によると、同公園内でのヒョウの推定生息数が3倍に増加したという。
カフエ国立公園の面積は約2万2400平方kmで、これは日本の四国(約1万8800平方km)よりも広く、北海道の約3分の1相当の大きさに匹敵する。
さらにこの公園は、その3倍の広さを持つ「グレーター・カフエ・エコシステム」の一部である。
エコシステムとは広域生態系のことで、国立公園本体だけでなく、その周りを取り囲む自然保護エリアや動物管理地域も含めた、動物たちが自由に行き来できる巨大な生活圏のことだ。
パンセラの理事長ジョン・エイヤーズ氏は、「この地域は長年の密猟などで傷ついてきましたが、回復への計り知れない可能性を秘めています」と期待を寄せている。
170年の時を経て撮影されたヒョウの姿。
References: Facebook[https://www.facebook.com/South.African.National.Parks/posts/pfbid02bZEstDTw8dzFbb4tKbSY3DKzdgdJAi4PgwyyaiMzuXkFRJiEmoKedve13vu2JUgzl] / Capetownetc[https://www.capetownetc.com/news/west-coast-sees-leopard-return-after-170-years/]











