人間の頭蓋骨を押しつぶすほど強力、AIロボットの危険性を元安全責任者が内部告発
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 映画『スター・ウォーズ』でおなじみのC-3POのような人型のヒューマノイドロボットが家事を手伝ってくれる未来はもうそこまでやってきている。だが、そこには恐ろしい危険も潜んでいるようだ。

 事の発端は、元安全責任者が、現在開発中のロボットは「生身の人間の頭蓋骨を押しつぶすほどの威力を持っている」と社内で幹部に危険性を警告したことだ。

 ところがその数日後、彼は会社を解雇されてしまう。この処分を不服として元安全責任者は裁判を起こし、隠されていた事実が明るみに出た。

 現場では、ロボットが誤作動により鉄製の冷蔵庫を切り裂く事故も起きていたと、元安全責任者は語っている。ロボット開発競争の裏で何が起きているのか?

ヒューマノイドの超人的パワーとスピード

 Figure AI[https://www.figure.ai/]社は、半導体大手のNVIDIAや、Amazonの創業者ジェフ・ベゾス氏といったそうそうたる顔ぶれから資金援助を受けている注目のスタートアップ企業だ。

彼らの作るヒューマノイドロボット(Figureシリーズ)は、人々の生活労働を支援する輝かしい未来の象徴として期待されている。

 しかし、その実態は楽観できるものではないようだ。

 CNBC[https://www.cnbc.com/2025/11/21/figure-ai-sued.html]が報じたところによると、かつて同社で製品安全責任者を務めていたロバート・グレンデル氏は、次世代ロボットが人間の頭蓋骨を骨折させる可能性があると警告したところ、会社を解雇されたと述べている。

 グレンデル氏の主張によれば、そのロボットは「超人的なスピード」で動き、「手」の握力や腕を振る際の衝撃力は、人間が痛みに耐えられる限界値の20倍にも達するという。  

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現場で起きた事故

 グレンデル氏は、シリコンバレーならではの「テクノロジーで未来を切り拓く」という前向きな職場環境を期待して入社したが、実際の現場は安全管理が不十分だったと主張している。

 彼によれば、実際にロボットの1体が誤作動を起こし、ステンレス製の冷蔵庫のドアに約6mmもの深い傷を刻み込んだ事故が発生したという。

 分厚い金属を切り裂くその力が、もし人間の近くで制御不能になればどうなるか。  

 彼はCEOのブレット・アドコック氏らに対し、このロボットには問題があるとし、こうした強力なロボットが、十分な安全対策なしに稼働すべきではないと警告した。 

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資金調達後に安全計画がうやむやに

 2025年後半、Figure AIの企業価値は390億ドル(約5兆8500億円)に急騰していた。グレンデル氏の弁護士によると、彼は投資家に見せるための「安全対策計画書」を作成し、提示していたという。

 しかし、巨額の資金調達が完了したのと同じ月、会社側はこの安全計画を中身のないものに変えてしまったと彼は主張している。

 グレンデル氏は、「安全を守ることは会社の義務だ」と訴えたが、会社側は聞く耳を持たなかったという。

  訴状によれば、彼は「ここが危険だ」とはっきり書いた報告書を提出したが、そのわずか数日後の9月、会社を解雇されたという。

 彼はこれを、警告をしたことへの報復だと考えている。

会社側は正当性を主張、法廷で争う構え

 これに対し、会社側の言い分は全く異なる。 解雇の理由について、会社側は当初「事業方針の変更」と説明していたが、公式には「本人の業績不振」が理由だとしている。

 Figure AIの広報担当者は声明を発表し、グレンデル氏の主張に対して真っ向から反論した。

 同社は、彼の解雇は正当な手続きによるものであり、彼が主張するような危険性や不正疑惑については「すべて虚偽である」と発表した。

 「法廷で徹底的に反論し、事実ではないことを証明する」と強い姿勢を見せている。

 一方で原告側の弁護士は、「法律は、危険な慣行を報告した従業員を保護している」と述べ、この裁判がヒューマノイドロボットの安全性に関する最初の重要な内部告発ケースになると位置づけている。

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加速するロボット開発競争

 現在、グレンデル氏は陪審員裁判を要求し、経済的損失や精神的苦痛への補償、そして懲罰的損害賠償を求めている。

 この騒動の背景には、テスラやボストン・ダイナミクス、中国のユニツリー・ロボティクスなどがしのぎを削る、猛烈なロボット開発競争がある。

 モルガン・スタンレーの報告によれば、この市場は2030年代に加速し、2050年までに約5兆ドル(約750兆円)規模になると予測される巨大産業だ。

 果たして原告が訴えるように安全は軽視されていたのか、それとも会社側が言うように事実無根の言いがかりなのか。

 真実は今後の裁判で明らかにされることになるだろう。

References: Figure AI sued by whistleblower who warned that startup’s robots could ‘fracture a human skull’[https://www.cnbc.com/2025/11/21/figure-ai-sued.html] / Whistleblower Says He Was Fired for Warning Execs That New Robot Could Crush Human Skull[https://futurism.com/robots-and-machines/whistleblower-fired-warning-robot-crush-skull] / Figure humanoid robot hand showed skull-cracking force in trials, whistleblower warns[https://interestingengineering.com/innovation/figure-ai-faces-whistleblower-lawsuit]

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