オーストラリアは、日常の中での野生動物たちとの距離感が、とても近い国である。鳥や哺乳類はもちろん、爬虫類や虫たちも極めて身近な環境だ。
だが、人間と彼らが共存するのは、時には難しいこともある。鋭い爪や牙、あるいは毒といった「凶器」を持つ相手となるとなおさらだ。
11月のある日、自宅に蛇が出たとの通報で現場に駆けつけた「蛇駆除師」は、水の中で蛇が見せた驚くべき「生存術」に、驚きを隠せないでいた。
通報を受けて到着した現場で見たものとは…
2025年11月、オーストラリアのキャンベラを拠点に、蛇の駆除を行っている「ACT Snake Removals」のギャビン・スミスさんは、通報を受けて一軒の住宅を訪れた。
通報の内容は、この家にある貯水槽のような構造のバランスタンクに、蛇が1匹閉じ込められているというものだった。
早速現場に駆けつけたスミスさんは、ほぼ10年にわたってこの仕事をしてきた、「蛇使い」として経験豊富なはずの自分の目を疑うことになった。
家主は蛇がもう死んでいると思っていたようですが、私は自分の目で確かめることにしたんです。その決断は間違っていませんでした
確かに、蛇は最初もう死んでいるように見えた。だが近くによって見てみると、少なくとも数時間は水中にいたにもかかわらず、蛇はまだ生きていたのだ。
自分の身体でイカダを作って生き延びた蛇
だが、スミスさんを驚かせたのは、そんなことではなかった。この蛇は泳ぎ回って体力を消耗したり、おぼれたりする危険を冒すようなことはしなかった。
その代わりに自分の身体を結んで「いかだ」のような形を作り、顔だけを水面に出してじっと浮いていたのだ。
これなら疲れ切ってしまうこともなく、呼吸も確保できる。助かるチャンスが来る時まで、蛇はほとんどエネルギーを消費せず、ただ浮かんで待っていたのだ。
正直に言って、これまで自分が見た中で最も驚くべきものの一つでした。この動きに文字通り、度肝を抜かれたんです
蛇はスミスさんと目が合うと、チロチロと舌を出してこちらを見上げた。まるで「早く助けろ」とでも言っているよう。
動かずに待つ、という蛇の選択は間違っていなかった。スミスさんが到着したことで、蛇は無事に救出されたのだ。
ヘビと関わる仕事をしてきて、本当にいろいろなものを見てきました。今回の映像も例外じゃありません。
ここに写っているのは若いブラウンスネークで、逃げ場のないタンクの中で一晩生き延びたんです。自分の体をいかだのようにしてね。
もし何時間も泳ぎ続けていたら、体力を消耗して溺れていたはずです。だから、この行動がどれほど衝撃的だったか分かってもらえると思います。
まあ、何百万年もの進化のおかげで、こういう知恵も身につくのかもしれませんね
毒蛇ではあったが、救出して別の場所に開放
ブラウンスネークは、オーストラリアに棲息するコブラ科の毒蛇で、民家にもよく現れるため被害が絶えないんだとか。
2005~2015年の10年間にオーストラリアで発生した、蛇に噛まれた事件のうち、実に41%がこのブラウンスネークによるものだそうだ。
毎日こんなのを相手にしていたら、命がいくらあっても足りない気がするが、そこはベテランのスミスさん、すぐにこの蛇を助けてやったそうだ。
フックを使って慎重に水から引き揚げてやると、蛇は「とにかく、早くこの状況から抜け出したい」とでもいう様子だったという。
ちなみに、多くの蛇は泳ぎも得意だが、今回の場合は密閉されたバランスタンクに閉じ込められていたとのことで、さすがの蛇も外に出られなかったのだろう。
ベテランの「蛇駆除師」であるスミスさんは、蛇の生態や行動に精通している。だがそれにもかかわらず、彼の蛇への興味や敬意は、日々深まるばかりだそうだ。
蛇たちは決して、私を驚かせることを止めません。今回の件は、間違いなく重要な経験でした。こんなものは今まで見たこともなかったんですから
この蛇の様子がSNSに投稿されると、たくさんのコメントが寄せられていた。
- 舌をチロチロさせる元気はまだ残ってるんだな!
- 驚くべき生存テクニックと本能だね
- 自分もプールから何匹ものヘビを救い出してきたけど、こんなのは初めて見たよ
- ヘビへの尊敬の念がますます深くなるよ
- 家主さんとギャビンさんに感謝だよね
- これは重要な観察記録になるんじゃないかな?
- 見つけてもらえなければ、いずれ溺れてしまっていただろうね
- これはすごい。自然の力って本当に驚かされる
- 本当にその通りだよ。長く忘れられない光景だし、正直かなり感動した!(ギャビンさんコメ)
- 本当に賢いよね。まさに生き残るための本能なんだと思う。
すごく興味深い- すぐ助けてくれたんでしょ?
- うん、この映像を数秒撮ったあとで、すぐに救い上げたよ。ヘビの驚くべき省エネ行動と生存本能を示す貴重な映像だからね(ギャビンさんコメ)
蛇と共存するための「通訳」のような仕事
スミスさんが運営する「ACT Snake Removals」は、オーストラリア首都特別地域(ACT)のキャンベラ一帯で、蛇の駆除活動をしている。
オーストラリアには毒蛇も多く、スミスさんの会社は24時間365日体制で、通報を受け付けているんだそうだ。
通報を受けると現場に出動し、住宅や庭、ガレージなどに迷い込んだ彼らを安全に捕獲して、郊外のより適した場所に移送する。
単なる駆除だけでなく、蛇の種類の同定や敷地内の危険個所のチェック、安全のための講習などの需要も多い。
スミスさん自身は、自分の仕事は人と蛇の間を取り持つ、「通訳」のようなスタンスで行っているんだそうだ。
南半球のオーストラリアでは、蛇の活動が活発になるのは、気温が上がる10月から3月にかけての、いわゆる「スネークシーズン」である。
これからの季節、こうやってスミスさんが活躍する場面も、きっと多くなることだろう。
スミスさんたちの蛇退治の映像は、「ACT Snake Removals」のFacebook[https://www.facebook.com/snakesandrescues]やInstagram[https://www.instagram.com/act_snake_removals]などで随時紹介されている。
彼らの仕事に興味のある人はぜひ見に行って見てほしい。











