サクランボ農家に用心棒降臨!チョウゲンボウが害鳥を追い払い、フン害を劇的に減らす
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 せっかくの甘いサクランボも、鳥のフンがついてしまうと、危険な病原体が潜んでいる可能性もある。

 だからこそしっかりと洗ってから食べるべきなのだが、サクランボが好きなのは人間だけでなく鳥も同様で、食べられたりフンをかけられてしまうことが多い。

 長年農家を悩ませてきたこの不衛生な問題に、心強い用心棒が現れた。「アメリカチョウゲンボウ」というハヤブサの仲間だ。

 ミシガン州立大学の研究によると、この小さな猛禽類を果樹園に招き入れるだけで、作物を荒らす害鳥が姿を消し、フン害が劇的に減少するという。

 薬も機械も使わず、チョウゲンボウが自然界の法則にしたがい食の安全を守ってくれるというのだから頼もしい。

 この研究は『Journal of Applied Ecology[https://besjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1365-2664.70209]』誌(2025年11月26日付)に掲載された。

小さくても頼りになる、空のハンター

 アメリカチョウゲンボウ[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%83%81%E3%83%A7%E3%82%A6%E3%82%B2%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%82%A6]は、北アメリカと南アメリカの広い範囲に生息する猛禽類で、ハヤブサの仲間では最小の種だ。

 体長は22~31cmほど。日本でも見かける「ユーラシアチョウゲンボウ」よりもひと回り小さく、公園にいるハト(ドバト)よりもさらに小柄ながらも、狩りの腕前は一流だ。

 彼らは空中でホバリングしながら鋭い視線で地面を探索し、昆虫やネズミ、そして自分より小さな鳥を見つけては捕食する。

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 この「小鳥を狩る」という習性が、結果として農作物を鳥のフンから守ることにつながる。鳥のフンは単に汚いだけでなく、人を病気にする病原体を含んでいる可能性があり、果実を汚染するリスクがある。

 研究の共著者でミシガン州立大学の農業生態学者、オリビア・スミス氏は、「鳥を作物に近づけないようにするのは難しいことです」と語る。

 これまでも農家たちは、カカシや忌避スプレー、防鳥ネット、大きな音を出す装置などを使って、招かれざる鳥たちを追い払おうとしてきた。

 しかし、こうした方法は費用がかかるうえに、必ずしも期待通りの効果が得られるとは限らない。

 研究チームによると、こうした対策をしていても、ミシガン州やカリフォルニア州などのサクランボ農家は、鳥による汚染で毎年収穫量の5%から30%を失っているという。

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果樹園にチョウケンボウのパトロール部隊を配備

 研究チームは今回、猛禽類を果樹園のパトロール隊として雇うことで、このリスクを減らせるのではないかと考え、ミシガン州北部の8つのサクランボ果樹園に巣箱を設置した。

 アメリカチョウゲンボウは、ヒナを育てるために木の洞(うろ)や狭い隙間を利用する習性があるため、設置された巣箱を気に入り、すぐに果樹園へと引っ越してきた。

 7月の収穫時期が近づくと、研究チームは果樹園で見かけたすべての鳥の種類を記録し、その行動を観察した。

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サクランボを食べる鳥が減り、フンの被害が激減

 結果は明白だった。アメリカチョウゲンボウが近くを飛んでいるとき、サクランボを好むコマツグミ(北米のツグミ類)、クロムクドリモドキ、ホシムクドリといった鳥たちが果樹園に寄り付かなくなったのだ。

 アメリカチョウゲンボウが果実を狙う鳥たちを追い払うことで、サクランボが食べられてしまう被害の確率は10分の1以下にまで減少した。

 さらに、鳥のフンによる被害についても大きな効果が見られた。アメリカチョウゲンボウがいる果樹園では、サクランボの木に残された他の鳥のフンの痕跡が大幅に減っていたのだ。

 データによると、枝に見つかるフンの量は約3分の1に減少していた。

 もちろん、アメリカチョウゲンボウ自身も生き物なのでフンをする。

 しかし、彼らが追い払ってくれる大量の果実を食べる鳥たちの数に比べれば、その影響は微々たるものだ。

 実際、アメリカチョウゲンボウの巣箱に近いサクランボの木ほど、鳥のフンの付着が少ないことが確認されている。

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食中毒のリスクを減らす頼もしい用心棒

 DNA分析の結果、採取された鳥のフンの10%から「カンピロバクター[https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/campylobacterqa.html#Q2]」が検出された。これは食中毒を引き起こす一般的な細菌だ。

 ただし研究チームは、これまでに発生したカンピロバクターによる集団食中毒と鳥のフンの関係性には慎重な姿勢を示している。

 鳥が原因と特定された集団感染は過去に1件のみで、2008年にアラスカのエンドウ豆畑で、渡り鳥のツルに関連したカンピロバクターの感染が報告された例があるだけだ。

 とはいえ、葉物野菜など、過去に集団感染の原因となった他の作物において、アメリカチョウゲンボウが食品の安全性を高める手段になり得ることをこの研究は示唆している。

 スミス氏は、「彼らはフンの量を抑えるのが本当に上手です。それは病原菌が広まる機会が減ることを意味します」と述べている。

 もちろん、これで農家の悩みがすべて解決するわけではない。アメリカチョウゲンボウにも好みの場所があり、ある地域には居着いても、別の地域には定着しないこともあるからだ。

 それでも、作物を清潔で健康に保つための手助けとしては大いに期待できる。

 研究の共著者であるキャサリン・リンデル氏はこう締めくくっている。

「アメリカチョウゲンボウもフンをしますが、生産者にとって彼らは、鳥害対策という『道具箱』に入れておける、低コストで手間のかからない便利なツールなのです」

References: Onlinelibrary.wiley.com[https://besjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1365-2664.70209] / Eurekalert[https://www.eurekalert.org/news-releases/1106971]

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