熱気球はヘリコプターや小型飛行機より10倍危険、新たな研究で判明
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 のんびりと空に浮かぶイメージの気球も実はあなどれない。オーストラリアの新たな研究で、熱気球はヘリコプターや小型飛行機よりも飛行リスクが高いことが明らかになった。

 オーストラリア運輸安全局が2025年11月26日発表した報告書によると、熱気球はチャーター機やヘリコプターに比べ、1フライトあたりの重大な事故発生率が10倍に相当するという。

 なぜこれほど危険なのか?その実態に迫ってみよう。

熱気球の安全性に関する調査結果

 オーストラリアの航空事故調査機関であるオーストラリア運輸安全局(ATSB)は、2014年から2022年の間に同国内で発生した79件の気球事故を詳しく調査した。

 その結果、料金を支払って乗る一般客にとって、気球での飛行は、小型機やヘリコプターの貸切飛行よりも、怪我や重大な事故に遭う確率が、1フライトあたり約10倍高いことが明らかになった

 調査期間中に死亡事故の記録はなかったが、主な要因が着陸時に集中するリスクや風の影響であることが確認された。

 研究についてATSBのアングス・ミッチェル最高責任者はこう述べる。

飛行ごとに見ると、気球飛行は小型飛行機やヘリコプターでの同等の運航に比べて、重大な事故やトラブルが起きる可能性が高く、乗客が負傷する確率も高かった

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着陸時が最も危険。主なリスク原因は風

 調査では、着陸時が最も危険であり、負傷や事故の多くが着陸段階で発生していた。

 主な要因としてはまず、風の影響が挙げられ、79件の事例のうち35件で風が安全要因に関与。そのうち8件が重大なトラブル、5件が事故につながった。

 また計画・判断不足もあった。該当するのは事例うちの15件で、うち7件が重大な事故、3件が事故につながった。

 同報告書と併せて公開された調査では、2025年7月7日にクイーンズランド州ビューデザートで発生した大型気球の事故が挙げられている。

 7日早朝、乗客20人とパイロットが乗った気球が、着陸前に霧に遭遇、さらに風向の急変で着陸予定地の変更を余儀なくされた。

 パイロットが代わりの着地場所を決め着陸したが、完全停止できず、バスケットが地面を跳ねて前進、エンベロープ(球皮)が枯れ木に接触して軽微な損傷を受けた。

 幸いにも着陸時に乗客たちが安全のために事前に受けていた緊急時の対応に従い、不時着時の姿勢を取っていた。この対応が功を奏し、負傷者ゼロだった。

 ATSB はすべての手順に従ったパイロットを称賛。

 またミッチェル氏は、この重大事故は「動的で変化する気象条件への対処が迫られるパイロット特有の課題」とし、事業者が講じられる安全対策の一部も実証した、と述べた。

効果的な安全説明の重要性と、重大なトラブルや事故が多発しやすい着陸時に乗客が正しい姿勢をとることで、負傷の可能性や重症度を大幅に軽減できることを浮き彫りにしています

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カギは正確な気象判断

 ご存じの通り、熱気球は風に流される乗り物だ。

 パイロットは高度ごとの風向を利用して進路を調整するが、着陸地点選びは常に「計算されたリスク軽減プロセス」であり、安全を保障するものではない。

 では熱気球の安全な運航のカギは?ミッチェル氏いわく「正確な気象判断」だ。

 だが近年パイロットはより極端な気象パターンに対処しなければならず、頻繁に飛行することが困難になっている。

気球の大型化でリスクが増大

 近年オーストラリアではリスクの「母数」も拡大している。最大24人も乗れる大型熱気球が増えているのだ。

  クイーンズランド州を拠点とする ホット・エア・バルーン・オーストラリア の運航責任者であり、自身も年間6000人の乗客を運ぶパイロットである ジェイ・シェッサー氏は オーストラリア放送協会ABC の取材でこのように述べている。

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滑走路がない熱気球の着陸では、毎回木々や電線、風の変化を考慮したリスク軽減手順を踏みます

人々はこれらの気球がどれほど大きいかを理解していません

乗客24人とパイロット1人の気球は、航空業界では大型機に分類されます。以前は年間340日飛んでましたが、今は天候の影響で飛行回数は半分以下です

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ATSBが呼びかける安全対策の方向性

 こうした点をふまえ、ATSBは報告書で飛行リスク削減につながる安全対策として以下を推奨。

  • 利用可能なすべての気象データを活用し、風を含む天候、および飛行安全への影響の理解を深める
  • 電線や視界不良などのリスクを予測し、安全を優先
  • 法的義務はないが、安全管理システムの導入を検討

気球のパイロットに対しては法律で義務化されていませんが、安全管理システムの導入で、リスクの特定と管理に体系的なアプローチが得られるでしょう

すべての気球運航会社およびパイロットに対して、運航の観点からこの資料を検討し、乗客および気球の安全を最も適切に確保する方法を検討するよう呼びかけます (ミッチェル氏)

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ブラジルでは8人死亡の重大事故も

 一方、ブラジルでは6月21日に重大事故が発生した。サンタカタリナ州上空で熱気球が空中で炎に火を噴き、乗客が炎を避けるためにバスケットから飛び降りざるを得なくなったのだ。

 ブラジルの新聞によると、パイロットが熱気球が燃えていることに気づいた後、できるだけ早く降下しようと試み、航空機が地上に近づいたときに乗客に飛び降りるよう指示した。

 乗客の何人かはそれで生き延びることができたが、他の乗客は時間内にバスケット火災から逃れられなかった。

 同州知事のジョルジーニョ・メロ氏が X(旧Twitter)で報告[https://x.com/jorginhomello/status/1936423747306549586]したところによれば、搭乗者21人中、8人が死亡という痛ましいもので、熱気球の致命的なリスクを示すものとなった。

 その後の調べで火災の発生源は、航空機のバスケット内に設置されたバックアップバーナーだったことが判明した。

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海外で気球は「航空機」 日本では「空中障害物」

 なお気球は、多くの国で「航空機」として法的に扱われることが多く、「遊具」や「レジャー装置」というより、正式に航空法規制の対象になっている。

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 オーストラリアの民間航空安全局CASAは、熱気球を「lighter-than-air aircraft(軽航空機)」として、航空法規制の枠内に含めている。

 またカナダのモントリオールを拠点とする国際民間航空機関ICAOにおいて、気球は「軽飛行機」、米国連邦航空局 FAAでも「操縦者が搭乗する、エンジンを持たない軽航空機」として明確に規定されている。

 さらに欧州航空安全局EASAでは、熱気球の運航・ライセンス・整備・認証を航空機規則の一部として管理し、熱気球の型式認証基準も定めており、EASA加盟国もその規則に基づいている。

 一方、wikipedia によると、日本で気球は「空中障害物」扱いだそう(2025年12月2日現在)

 飛行機と比べ、マイルドな「観光の乗り物」のイメージを持たれやすい気球だが、やはりそこにはリスクがある。そのへん意識を変えてかないとだ。

 にしても一度に24人も乗れる気球があること自体知らなかったよ。

大きさに比例して危険も増すわけだから、そりゃはよ対策ってなるよねって感じだよ。

References: Atsb.gov.au[https://www.atsb.gov.au/media/news-items/2025/accurate-weather-assessment-critical-reducing-risk-commercial-ballooning-passenger-injuries] / ECFR[https://www.ecfr.gov/current/title-14/chapter-I/subchapter-C] / ICAO[https://www.icao.int/sites/default/files/Meetings/a42/Documents/WP/wp_191_en.pdf] / Easa.europa.eu[https://www.easa.europa.eu/en/document-library/easy-access-rules/balloon-rule-book-easy-access-rules]

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