飼い主が寝ている間に発作を予知した猫。一晩中寄り添い「ふみふみ」で安心させる
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  犬はてんかん発作の兆候を嗅ぎ取ることができる。特別な訓練を受けた介助犬は世界中で活躍しているが、何の訓練を受けてない飼い猫も、飼い主の危機を察知し、献身的に守ろうとすることがあるようだ。

 アメリカで暮らすイジーさんは昨年、初めててんかん発作を起こし不安な気持ちを抱えていたが、心強い味方になってくれたのは、愛猫のボビーだ。

 ボビーは病気の深刻さを理解したようで、自ら助けようとする行動を起こすようになった。

 発作を起こす直前になると、彼女をじっと見つめたり、ベッドで寝ていると、飛び乗って肩をたたいたり、布団の上からふみふみをして、必死に危機を知らせようとしてくれているのだという。

発作の兆候を感じ取り、独自のサインで知らせようとする

 イジーさんが初めて発作を起こしたのは2024年11月のこと。その後、度重なる発作を目の当たりにした黒猫のボビー(オス)は、ただごとではない事態を敏感に感じ取ったようだ。

 ボビーは発作の兆候を感じ取ると、イジーさんの顔をじっと見つめて無言で知らせようと合図してくれるようになった。

 ベッドで寝ているときにその兆候が表れると、飛び乗ってきて体をやさしくたたいて知らせようとしたり、布団を前足でふみふみする。さらにはピッタリ体をくっつけて発作が始まっても安心させようとする。

 ボビーが警告してくれるのは、特に症状が重い「大きな」発作のときだけだという。

 てんかん発作は「できるだけ早く発見・対応すること」が重要だ。予兆に気づけると、安全な場所で待機したり、薬を使用したり、周囲への連絡をすることができるため発作をコントロールしやすくなるのだ。

 訓練を受けた介助犬はその兆候を嗅ぎ取り、飼い主に知らせるのが役目だが、ボビーは特に訓練を受けることなく、この役目をこなしていたのだ。 

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睡眠中の発作から飼い主を守る完璧な連携プレー

 ボビーが見せた献身的な行動は、イジーさんが眠っている間に設置されたカメラにもはっきりと記録されていた。

 2025年10月18日にTikTokへ投稿された動画には、イジーさんが全身の発作を起こす直前、ボビーは体の上に乗って異変を知らせようとしている姿が映し出されている。

 ボビーは発作が続いている間も、片時もそばを離れなかった。発作が収まった後も、イジーさんが目を覚ますまでの3分間、体を前足で揉むふみふみを続けてマッサージを行い、安心させようと努めた。

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 さらには、背中側で眠ることで寝返りを防ぎ、朝までその体を支え続けたという。これは嘔吐物などで喉を詰まらせる危険を防ぐための、非常に理にかなった行動である。

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孤独な闘病生活を支える、何よりも心強い相棒

 発作の最中にボビーがそばにいてくれることは、イジーさんにとって大きな心の支えとなっている。ボビーがいるだけで、緊張が和らぎ、安心感を得られるという。てんかん発作は周囲に理解されにくく、とてつもない孤独を感じるものだ。

 病気と共に生きる新しい生活に適応しようと奮闘するイジーさんにとって、常に寄り添ってくれるボビーの存在は、孤独感を癒やす何よりの特効薬となっている。

 イジーさんによると、ボビーは数秒間だけ意識が途切れる「欠神発作(けっしんほっさ)」や、笑いや興奮が引き金となる軽い発作のときは警告しないそうだ。

 もしボビーがそれらの発作に反応したときは、それより大きな発作が近づいている合図だという。

 イジーさんを襲う主な発作は「焦点発作」や「強直間代発作(きょうちょくかんだいほっさ)」と呼ばれるもので、これらは突然全身の筋肉が硬直し、激しい震えとともに意識を失う重い症状を引き起こす。

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寂しがり屋だった保護猫が、飼い主を救うヒーローに

  イジーさんとボビーの出会いは、イジーさんが発症する約1年半前の2023年夏にさかのぼる。

 ボビーはアメリカ・テキサス州にあるボートの下で発見された保護猫だった。

その後、コロラド州の保護施設へ移送されたが、一緒にいた兄弟猫たちは先に引き取られ、ボビーは独りぼっちになってしまった。

 寂しがるボビーを見かねた施設側が声をかけた相手が、当時すでに4匹の子猫の預かりボランティアをしていたイジーさんだったのだ。

 かつて孤独だったボビーをイジーさんが救い、今度はボビーが孤独な闘病生活を送るイジーさんを救っている。2人の間には、言葉を超えた深い絆があるのかもしれない。

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 猫が実際にてんかん発作を予知できるかどうかについては、まだ科学的な結論は出ていない。

 しかしイジーさんのように、愛猫の不思議な能力を信じる飼い主は数多く存在する。

 一部の専門家たちは猫が優れた嗅覚を使って発作を感知しているのではないかと推測している。犬と同様に、発作が起きる前に体内で生じる化学変化のにおいを、猫も嗅ぎ取っている可能性があるかもしれないという。

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