息子を亡くした母親の願いを受け、写真をチベットの聖なる山に届けにいったバイカー
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 チベットにある聖なる山「カイラス山」は、仏教やヒンドゥー教など、さまざまな宗教の聖地として、多くの巡礼者が訪れている。

 このカイラス山にある「往生石」という岩に、亡くなった人の写真を届けて祈りを捧げる様子が、近年中国のSNSで投稿されるようになってきた。

 そんな中、1人のバイカーがカイラス山を目指す中、息子を亡くした母親の願いに応えるために、彼女の息子の写真を往生石に届けることにしたのだ。

4,800kmを走ってチベットを目指すバイク乗り

 18歳になったばかりのドウ・ジアチーさんは、江蘇省新沂市の自宅からチベット自治区のラサまで、電動バイクで旅をした。

 彼は11日をかけて約4,800kmもの旅を終え、2025年11月24日、いよいよラサに到着した。

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 ドウさんの目的地は、チベット自治区西部のカイラス山にある、「往生石」と呼ばれる岩だった。

 標高約5,700mの高地にあるこの岩は、昨年くらいからSNSで広く知られるようになったという。

 ここを訪れた人々が、既にこの世を去った愛する家族や恋人、ペットの写真を、祈りを込めてこの岩に貼ったり、故人が愛用した品々を岩のもとに残す様子が、投稿されるようになったからだ。

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SNSに寄せられたある母親からのメッセージ

 ドウさんは自分の旅の様子を、中国のSNSに投稿し続けていた。旅の途中、彼は1人の女性からこんなコメントを受け取った。

あなたはとても勇敢ですね。高山病の症状は出ていませんか? 「往生石」を訪れる予定はありますか?

私は、息子を救うために骨髄と幹細胞を提供し、できる限りのことをしました。でも、息子を失ってしまったんです。

私はずっと、「天国に一番近い場所」と言われるチベットに行きたいと願っていました。そしてそこに、息子の写真を置きたかったのです。

でも、健康上の問題があってそれは叶いません。

あなたを尊敬しています。どうぞお体に気をつけて…

母親の願いをかなえるため写真を届けに向かう

 そこでドウさんは、彼女にこう返信した。「息子さんの写真を送ってください」

 母親の願いを叶え、往生石までシュアンニンさんの写真を届けてあげようと思ったのだ。

 女性は、シュアンニンというニックネームの息子の画像をネット上からドウさんに送り、ドウさんは途中でその画像をプリントできる店で写真にしてもらうと、往生石を目指した。 

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 だが、残念なことに現地は極寒のため、カイラス山一帯は封鎖されてしまっていた。

 ドウさんは2025年11月24日、チベットの首都ラサにあるポタラ宮の前で、シュアンニンさんの写真を掲げて動画を撮影し、SNSにこのようなキャプションをつけて投稿した。

残念ながら厳しい寒さのためにカイラス山が閉鎖されていて、女性の願いを叶えてあげられませんでした

 母親からは、すぐに返信のコメントが届いた。

あなたはもう、十分素晴らしいことをしてくれました。シュアンニンの写真をポタラ宮まで連れて行ってくれたなんて…。

もうそれだけで、このおばさんに思い残すことはありません。どうか無事に帰ってきてください

 その[https://vdo.ai/contact?utm_medium=video&utm_term=ndtv.com&utm_source=vdoai_logo]翌日、母親は再びメッセージを残して、自分の気持ちを語った。

昨日からずっと涙が止まりません。息子が亡くなってから6年間、私は一度も幸せだと感じたことがありませんでした。



人生で最後に幸せを感じたのは、医師から私の幹細胞が、息子のものと適合したと告げられた時でした。

本当にありがとう。あなたはこの世界で最も大きな愛を見せてくれました。優しくて勇敢なあなたに、心から幸運を祈ります

さまざまな宗教の聖地として未踏を貫くカイラス山

 カイラス山は、サンスクリット語で「カイラーサ」、チベット語では「カン・リンポチェ」と呼ばれる標高6,656mの山である。

 チベット高原・ガンディセ山脈(トランス・ヒマラヤ山脈)の西に位置しており、仏教はもちろん、ヒンドゥー教、ジャイナ教、ボン教などで聖地とされる聖山だ。

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 ヒンドゥー教ではシヴァ神の住処とされ、仏教では須弥山と同一視されているほか、チベット仏教の勝楽尊(チャクラサンヴァラ)という、、タントラの本尊の住処としても崇敬を集めている聖地である。

 巡礼者たちは標高4,675mのたるチェンを出発し、仏教徒・ヒンドゥー教徒・ジャイナ教徒は時計回りに、ボン教とは反時計回りに山の周囲をめぐって祈りを捧げる。

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 今回の舞台となった「往生石」は、このカイラス山への巡礼路の途中、標高およそ5,650m~5,700mのドルマ・ラ峠にある。

 チベットでは、ここは亡くなった人を偲ぶための神聖な場所である。亡き親族の遺品をこの場所に置くことで、その魂は安らぎを得て、転生輪廻の機会を授かると信じられているのだ。

 だが、この場所に故人の写真が貼られるようになったのは、つい最近のことのようだ。どうやらSNSが普及してきたここ10年くらいの間に、新たな「伝統」として定着してきたらしいのだ。

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 カイラス山自体は聖山であり、登山は中国政府によって禁じられている。山頂まで登れるのは「罪を全く犯したことのない人間のみ」なのだそうだ。

 実際には1980年代に、イタリア人の登山家ラインホルト・メスナー氏が、一度中国政府から登山許可を得たが、彼自身が登頂は冒涜に当たるとしてこれを辞退。

 その後スペインの登山家が許可を得るも、他の登山家たちからの強い抗議を受けて計画を断念[https://web.archive.org/web/20220501155707/https://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/asia/tibet/1331876/Climber-calls-off-ascent-of-sacred-peak-amid-protests.html]したという。

 以後は許可が下りることなく、現在まで登頂に成功したものは知られていない。今後もカイラス山は未踏の聖山として、多くの巡礼者を集め続けることだろう。

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References: Chinese Man Fulfils Woman's Wish By Placing Her Dead Sons Photo On Sacred Tibet Stone[https://www.ndtv.com/offbeat/chinese-motorcyclist-honours-womans-late-son-by-placing-photo-on-sacred-tibet-stone-9757052] / China motorcyclist fulfils woman’s wish, places dead son’s photo on Tibet stone ‘near heaven’[https://www.scmp.com/news/people-culture/trending-china/article/3334846/china-motorcyclist-fulfils-womans-wish-places-dead-sons-photo-tibet-stone-near-heaven]

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