トラの舌に隠された驚異。金属製削り器レベルの破壊力を持つ「糸状乳頭」の秘密
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 猫がペロペロと舐めてくれるのは愛情表現の一種だ。多少のザリザリ感はあるものの、甘んじて受け入れる飼い主は多いが、トラに愛されたい、なんなら舐められたいという願望は、今すぐ捨てたほうがよさそうだ。

 数年前から定期的にSNSで話題となっているトラの舌のクローズアップ写真は、もはや生物の器官というより、職人用の金属製削り器レベルの破壊力をまざまざと見せつけている。

 無数の鋭いトゲがびっしりと並んでおり、もし舐められようものなら、皮膚ごとそぎ落とされてしまうだろう。

 この構造は「糸状乳頭(しじょうにゅうとう)」と呼ばれ、獲物の肉を骨から削ぎ落とすために進化した究極の生体ツールである。今回は、その恐るべき舌の秘密に迫ってみよう。

鋭いトゲが無数に並ぶトラの舌の糸状乳頭

 まるでおろし金か剣山のように表面を埋め尽くしている白いトゲ状の無数の突起は「糸状乳頭(しじょうにゅうとう)」と呼ばれ、ネコ科動物の舌の特徴である。

 もちろんイエネコの舌にもあるが、トラの場合はサイズも強度も桁違いだ。一般の猫がプラスチック製の家庭用おろし器なら、トラはまさにステンレス製の職人用削り器レベル。

 これらの突起は、我々の髪の毛や爪を構成しているのと同じ「ケラチン」という硬いタンパク質でできている。

 糸状乳頭は、喉の奥に向かって「くの字」にカーブしており、一度引っかかったものを絶対に逃さないフックのような形状をしている。この特殊な構造こそが、トラという捕食者の生存戦略を強力に支えているのだ。

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骨についた肉を根こそぎ削ぎ落とすトラの舌

 なぜこれほど物騒な舌が必要なのか。その最大の理由は、獲物を無駄なく食べるためだ。

 野生下のトラにとって、捕らえた獲物の栄養を余すところなく摂取できないことは死活問題となる。

 この強靭な糸状乳頭は、食事の際に高性能な削り器として機能する。

 獲物の皮や羽毛をバリバリと引き剥がすのはもちろん、牙では取りきれない骨の隙間にある肉まで、こそげ取るように削ぎ落としてきれいに平らげることができるのだ。

 もし人間がこの舌で、親愛の情をもって「ペロリ」となめられたとしたらどうなるか。おそらく数回なでられただけで皮膚はずるりと剥け、流血沙汰になるかもしれない。

 海外の掲示板などでは「人生の教訓:トラには絶対になめさせるな」という、もっともな忠告が添えられている。

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毛づくろいをすることで体を衛生に保ち、体温調節機能も

 この万能ブラシが活躍するのは食事の時だけではない。彼らが日課とする毛づくろい(グルーミング)においても、糸状乳頭は欠かせない道具となる。

 硬い突起はヘアブラシのように体毛のもつれを解き、毛皮についた泥や寄生虫を物理的に除去する。

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 さらに近年の研究で、毛づくろいは、体温調節に重要な役割を果たしていることも明らかになっている。

 以前カラパイアでも紹介したが、ジョージア工科大学の研究によると、ネコ科6種(イエネコ、ボブキャット、クーガー、ユキヒョウ、トラ、ライオン)の糸状乳頭は、先端が「スコップ」のような空洞になっており、毛管現象によって効率よく唾液を溜め込める構造になっているという。

  汗をかいて体温を下げるのが苦手なネコ科にとって、分厚い毛の奥にある皮膚まで唾液を届け、その気化熱で体を冷やすことは生命維持に関わる重要な機能だ。

  あのザリザリした舌は、獲物を解体するための削り器であり、体を清潔に保つブラシであり、さらに冷却水を循環させるラジエーターの役割まで果たしているわけだ。

 動物園でトラが舌を出しているのを見かけても、決してその感触を自分の肌で確かめようとしてはいけない。

あれは我々の柔肌が耐えられる代物ではないのだから。

追記(2026/01/09)

文中の誤り、「摂取する」を「摂取できないこと」に変更して再送します。

References: Boingboing[https://boingboing.net/2025/11/12/this-close-up-photo-reveals-why-a-tigers-tongue-is-so-dangerous.html]

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