2025年11月22日、タイ南部を襲った洪水の中で、ペットの犬と猫を連れた女性が自宅の屋上に取り残され、約29時間にわたりそこから動けない状況が続いた。
SNSで「ジャズ」と名乗るこの女性は、ペットを置いて避難することを拒み、水位の変化を見ながら屋上で救助の機会を待ち続けた。
翌23日、水が引き始めたタイミングで女性は自力で脱出し、女性と動物たちは無事が確認されたそうだ
洪水でペットと共に屋根の上に取り残された女性
この洪水は2025年11月中旬から続いた大雨が原因で、ソンクラー県を中心とするタイ南部の複数の場所で都市部の道路や住宅が広範囲に浸水した。
この雨で、排水路の容量を上回る雨量が続いたため、住宅街では時間を追って冠水が進み、地上階が水に浸かる世帯が相次いだ。
ジャズさんの住む住宅でも浸水が急速に進み、階段部分が水没し始めたため、彼女は犬と猫を抱えて屋根裏へ上がり、そのまま屋上に避難した。
周辺では住民の避難が進んでいたが、ジャズさんにはペットたちを残し、自分だけ避難するという選択肢はなかった。
だが、屋上に上がったことで、外に出て避難するルートはほぼ立たれることになる。
そして22日の午前3時ごろ、彼女は自身のFacebookにリール動画を投稿し、次のようなメッセージで助けを求めた。
屋根の上に取り残されています。至急助けを求めています。水位がどんどん上がっていて、下がる気配がありません。アチラ・クアンラン村(ムー3)、クアンラン地区の電気を切るよう手配をお願いしたいです
ジャズさんは投稿の中で自分のいる場所の住所を明かし、感電を防ぐために近隣の電力を遮断するよう依頼した。
屋根の上から救助を待ち続ける
彼女は近隣の状況を発信し続け、近くにある別の家でも子供が2人取り残されていると報告した。この間も水位は上昇を続け、ますます避難は困難に。
助けが必要です。船を手配してください。
どうして最初から出てこなかったのか、などと責めないでください。
いろんなことが重なって本当に苦しいです。熱も出てきて、家にある薬を取りに降りようとしたら、水が頭の高さまで来ていました。最後の位置情報は変わっていません。ありがとうございます
救助隊が来るも、ペットは連れていけないと知り避難を拒否
実はジャズさんのもとへ、一度は救助隊がやって来たのだそうだ。だが激しい雨の中で、安全面から、動物もいっしょに避難させることはできないと断られた。
彼女は救助隊の主張を理解しつつも、ペットを置いてはいけないと、自分もボートに乗ることを拒否。
その後、愛犬には問題行動を起こさないよう口輪をつけたが、救助隊が戻ってくることはなかったという。
ジャズさんは限られた水や食料をペットたちに分け与えながら、さらに不安な一夜を過ごすことになった。
ペットたちは屋根の上で不安そうに鳴き続け、猫は怯え切ってキャリーから出て来なかったそうだ。
ジャズさんはそんな愛犬と愛猫を置き去りにして、1人だけ避難することはできなかったのだ。
愛犬をバケツに入れて無事に避難に成功
翌23日、雨は少し弱まり、道路を覆った水がわずかに減少してきた。この機を逃さず、ジャズさんは避難する決断をした。
彼女は犬を大きめのバケツに入れ、猫たちを抱きかかえながら慎重に浸水した道路を歩いて避難することに。
周囲の住民が移動を手助けし、ジャズさんとペットたちは、無事に安全な場所まで避難することができたそうだ。
私たちは外に出てきました。水は胸のあたりまで達していました。これ以上水位がまた上がるのが怖かったので、思い切ってリスクを冒しました。
あらゆる面で助けようとしてくれた皆さん、本当にありがとうございました。今はもう安全です。すごくお腹が空いています。3日近く何も食べていなかったので…
過去300年間で最大の大雨
ハートヤイ県では、11月21日に335mmという過去300年間で最大の降雨量が記録された。
19~21日の3日間の累計降雨量は630mmに達し、これは2010年にハートヤイ県で発生した大洪水の累計降雨量428mmを上回ったという。
今回の洪水ではタイ南部の12の県で、140万世帯以上、380万人以上が被害を受け、道路の寸断や停電、公共施設の浸水などが相次いだ。
ジャズさんが30時間近くも屋上で待機することになった背景には、交通の遮断や救助船の不足など、複合的な要因が重なっていたとみられる。
今回の洪水では、ジャズさんが取り残されていたクアンラン地区を含むハートヤイ市内の広い範囲で、住人やペットたちが孤立する事例が相次いだ。
テレビ司会者として知られるプレ・ナコーン氏は、ボランティアとして救助活動に参加していた際、取り残されていた犬を発見。
水が引いた後、プレ氏はその犬が無事であることを確認し、餌を届けた様子を投稿して話題になった。
ジャズさんとペットたちが無事に脱出できたことが確認されると、SNS 上では安堵の声が広がった。
- 勇気を出して本当によく頑張ったね。あなたもワンちゃんも猫ちゃんもどうか無事でありますように
- 昨日からずっと投稿を追いかけて応援していました。水位がこれ以上上がらないように祈っていました。無事で本当に良かったです。あなたは本当にすごいです
- 無事だと知って本当に嬉しいです。そして、ワンちゃんたちを決して見捨てなかったあなたの姿勢を心から称えたいです
- 本当にすごいよ。無事で良かった。あなたも、ワンちゃんも猫ちゃんも、最高の飼い主さんに恵まれているね
- ぎゅっと抱きしめたい気持ちです。相手を決して置き去りにしない姿に胸が温かくなりました。
ゆっくり休んで、ご飯も食べてね- 本当に偉いよ。無事で何より。ゆっくり休んで、ご飯食べて、自分のことも大切にね
浸水被害が大きかった地域では、現在も住宅や道路の復旧が続いている。タイ南部はモンスーンの影響を受けやすく、洪水が起こりやすいことで知られている。
ジャズさんの助けを求める最初の投稿は、タイのインターネット上で大きな注目を集めることとなった。
これをきっかけに、災害時のペットの扱いを含めた、避難体制の見直しが実現することを、ジャズさんを含め多くの人たちが望んでいる。
ジャスさんは最後にこう語っている。
動物が嫌いな人には決して理解できないでしょう。でも、犬や猫にも命はあります。私たちは、彼らにとっての世界のすべてなんですよ
References: Thai woman stays on rooftop with pets for days during floods, refusing rescue without them[https://www.scmp.com/news/people-culture/article/3335335/thai-woman-stays-rooftop-pets-days-during-floods-refusing-rescue-without-them]











