恒星間天体3I/ATLASの最新画像公開。2つの尾と激しい活動を観測
2025年12月4日に公開されたハッブル宇宙望遠鏡がとらえた3I/ATLAS Image Credit: NASA, ESA, STScI, D. Jewitt (UCLA). Image Processing: J. DePasquale (STScI)

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 まだまだ謎に満ちた恒星間天体「3I/ATLAS」。氷の火山によるジェット噴出や、めまぐるしく変わる尾の形状など、話題に事欠かないこの「宇宙の旅人」の最新情報が届いた。

 2025年12月4日、NASAやESA(欧州宇宙機関)が、新たな観測画像を一斉に公開したのだ。

 公開されたこれらの画像には、ハッブル宇宙望遠鏡の鮮明な写真に加え、探査機ジュースが捉えた「2つの尾」、さらには本来映るはずのない別の探査機のデータへの写り込みまでが含まれていた。

 3I/ATLASは我々の予想を上回る明るさで、活発に活動しているようだ。

NASAのハッブル宇宙望遠鏡が捉えた変化

 運用開始から35年目を迎えるNASAのハッブル宇宙望遠鏡は、発見当初の2025年7月の時点で早くも3I/ATLASにレンズを向けていた。

 当時、地球から約3億6500万km離れていた天体は、まだ活動の兆候が薄く、画像では青っぽくぼやけた塊にしか見えなかった。

 しかし、2025年11月30日に撮影され、2025年12月4日に公開された画像は全く異なる様相を呈している。

 3I/ATLASは太陽に最も近づく「近日点」を通過した影響で、内部の氷が激しく昇華し、格段に明るさを増していたのだ。

 画像中央には、ガスと塵の大気である「コマ」に包まれた核がくっきりと写り、背景の星々が光の筋となって流れる様子は、この天体が猛スピードで駆け抜けていることを物語っている。

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ESAの探査機ジュースも奮闘

 今回の同時公開で最も科学者を唸らせたのは、ESAの木星氷衛星探査機「Juice(ジュース)」が捉えた一枚だ。

 木星へ向かう途中のジュースは、3I/ATLASからわずか6600万kmという至近距離を飛行していたため、その姿を捉えることができた。

 だが現在、機体を太陽熱から守るためにメインアンテナを「盾」にしており、そのデータを地球に送るには低速な小型アンテナしか使えない状態だった。

 完全なデータが地球に届くのは2026年2月の予定だが、運用チームは待ちきれなかった。

 そこで彼らは、本来2031年の木星到着後に使う「ナビゲーションカメラ(NavCam)」を作動させ、撮影データの「わずか4分の1」だけを切り取って先行ダウンロードするという荒業に出たのだ。

 その執念は実を結んだ。

画像には「2種類の尾」が明確に写っていたのである。

 一つは、太陽風に流されて真っ直ぐ伸びる青白い「プラズマ尾(プラズマ・テール)」。もう一つは、より大きな粒でできた「ダスト尾(ダスト・テール)」だ。

 ESAによると、このダスト尾の一部は太陽の方角へ伸びているように見え、かつて話題になった「アンチテイル」のような構造を作り出しているという。

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NASAの「PUNCH」ミッションが偶然3I/ATLASをとらえる

 今回の公開では、ハッブルとジュース以外の探査機からも、驚くべき「写り込み」画像が新たに発表された。

 中でもNASAの「PUNCH」ミッションが捉えた映像は、宇宙の広大さと偶然の面白さを感じさせるものだ。

 PUNCHは、「スワン彗星(SWAN彗星)」を追跡していたのだが、2025年9月11日から22日にかけて撮影された動画では、SWAN彗星が火星(画面上の明るい点)と、おとめ座の1等星スピカ(画面下の明るい点)の間を優雅に通り抜けていく中、スワン彗星の左下側を、左から右へサッと横切っていく「3I/ATLAS」の姿[https://science.nasa.gov/blogs/punch/2025/12/02/nasas-punch-tracks-comet-discovered-by-soho-spacecraft/]があった。

 火星、スピカ、スワン彗星、そして3I/ATLAS。本来狙っていなかったはずの豪華な共演は、この天体が予想以上に明るく輝いていたからこそ実現したものだ。

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太陽観測衛星STEREOがとらえた3I/ATLAS

 さらに驚くべきは、太陽観測衛星「STEREO」の報告だ。

 当初、3I/ATLASは暗すぎてSTEREOのカメラには映らないと計算されていた。しかし、9月に撮影されたデータを今回改めて処理して重ね合わせたところ、そこにはっきりとその姿が浮かび上がったのである。

 これは、3I/ATLASが科学者たちの予測よりもはるかに明るく、激しくガスや塵を放出していることを意味している。

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12月19日、地球に最接近

 NASAとESAから一斉に公開されたこれらの画像は、この恒星間天体が私たちの太陽系とは異なる環境で生まれ、今なお激しい変化の最中にあることを示している。

 3I/ATLASは2025年12月19日、地球に約2億6900万kmまで最接近する。

 二度と戻らないこの宇宙の旅人の最後の姿を記録するため、地上の望遠鏡から宇宙の天文台まで、人類の持つあらゆる「眼」が今、一点に注がれている。

References: Science.nasa.gov[https://science.nasa.gov/blogs/punch/2025/12/02/nasas-punch-tracks-comet-discovered-by-soho-spacecraft/] / Science.nasa.gov[https://science.nasa.gov/blogs/3iatlas/2025/12/04/nasas-hubble-space-telescope-revisits-interstellar-comet/] / ESA[https://www.esa.int/ESA_Multimedia/Images/2025/12/Comet_3I_ATLAS_shows_activity_in_Juice_navigation_camera_teaser]

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