タトゥイーンのような双子の恒星を公転する惑星の撮影に成功
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 映画『スター・ウォーズ』に登場する「タトゥイーン」のように、空に2つの太陽が輝く惑星は実際に存在する。2つの恒星(連星)の周りを回る惑星はこれまでも発見されてきたが、その姿を直接撮影するのは難しい。

 だが今回、ノースウェスタン大学の研究チームが、地球から約446光年先にある、2つの恒星の近くを公転する若い惑星の撮影に成功した。

 軌道を移動している様子をとらえたタイムラプス映像も公開され、恐竜絶滅後に生まれたばかりの「リアル・タトゥイーン」の素顔がついに明らかになった。

眠っていた記録から2つの恒星を回る惑星を発見

 今回の発見は、最新の観測によるものではなく、10年近く前のデータの中に眠っていた。  

 研究を率いたノースウェスタン大学の天文学者、ジェイソン・ワン氏は、博士課程の学生だった2014年頃から、「ジェミニ・プラネット・イメージャー(GPI)」という観測装置の立ち上げに参加していた。

 GPIは、明るすぎる星の光を「サングラス」のように遮断し、そのそばにある暗い惑星を直接撮影するための特殊な装置だ。

 当時、ワン氏はチリにあるジェミニ南望遠鏡を使って500個以上の星を調査したが、見つかった新しい惑星はたった1つだけだった。

 それから約10年が経過し、装置の移設に伴うデータ整理のため、ワン氏は当時の記録を再び解析することにした。

  すると、2016年から2019年にかけて撮影された画像の中に、恒星(連星)の動きに合わせて移動する小さな点が映り込んでいるのが見つかったのだ。

  この小さな点が惑星であることがわかり「HD 143811 AB b」と名付けられた。

 「恒星」とは、太陽のように自らエネルギーを放出し、光り輝く星のことだ。そして「連星」とは、2つの星がお互いの重力で引っ張り合いながら、共通の中心の周りをグルグルと回っている状態を指す。

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連星の周りを回っている惑星はごくわずか

 「タトゥイーンのような惑星」と聞いて、以前話題になった「ケプラー16b」を思い出す人もいるかもしれない。だが今回の発見は決定的に異なる点がある。

 ケプラー16bなどは、惑星が星の前を横切る際の影(減光)を観測して発見されたもので、惑星の姿が見えたわけではない。

 

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 対して今回は、惑星が発する光を捉える「直接撮像」に成功したのだ。

 これまで、連星を周回する惑星を直接撮影できたケースはこれまでほんの一握りしかない。

 ワン氏によると、現在6,000個以上の太陽系外惑星が知られているが、このように連星の周りを回っているものはごくわずかしか存在しないという。

 こうした配置の惑星系であってはじめて、連星と惑星、両方の軌道を同時に追跡することが可能になる。

 公開されたタイムラプス映像には、2つの星が互いに回り合うそばを、惑星がゆっくりと移動していく様子が映し出されている。

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恐竜絶滅後に誕生した、巨大で若い惑星

 「HD 143811 AB b」は、木星の約6倍もの質量を持つ巨大ガス惑星だ。

 誕生してからまだ約1300万年しか経っていない。「ずいぶん昔のように聞こえるが、恐竜が絶滅してから5000万年も後のことだ」とワン氏は語る。

 宇宙の歴史から見れば、ほんの昨日生まれたような赤ちゃんだ。 その若さゆえに、形成時の熱をまだたっぷりと残している。

 表面温度は約770℃(1042ケルビン)もあり、金星の2倍近い灼熱の世界だ。熱が赤外線として輝いていたおかげで、望遠鏡は姿を捉えることができた。

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双子の恒星と惑星が織りなすダンス

 この惑星系は、2つの恒星がわずか18日という猛スピードでお互いの周りを回り合っている。

そしてその外側を、今回発見された「HD 143811 AB b」が約300年かけてゆっくりと公転している。

 ワン氏はこの様子を、双子の恒星が非常に速くダンスをしていて、その周りを遠くから惑星がゆっくり回っている状態と表現している。

 ちなみに、惑星の名前にある「AB b」という記号にも意味がある。「A」と「B」はそれぞれ中心にある2つの恒星を指しており、その両方の周りを回っている最初の惑星だから「b」と名付けられたのだ。

 通常、連星系では重力が複雑に作用して惑星を弾き飛ばしてしまうため、惑星が生まれるのは難しいと考えられてきた。

 しかし、この惑星は安定して回っている。

 ワン氏らは、まず中心の連星が形成され、その後に周囲で惑星が生まれたのではないかと推測しているが、正確な仕組みはまだ謎に包まれている。

 研究チームは今後も観測を続け、この奇妙で美しい3つの天体がどのように空を移動していくのか、その軌道を詳しく追跡する予定だ。

 この研究成果はプレプリント[https://arxiv.org/abs/2509.06729]が出されており、『The Astrophysical Journal Letters』に発表される予定だが、エクセター大学のヨーロッパの天文学者らも同じ発見を『Astronomy and Astrophysics[https://www.aanda.org/articles/aa/full_html/2025/10/aa57104-25/aa57104-25.html]』(2025年12月11日付)に掲載している。

References: Aanda[https://www.aanda.org/articles/aa/full_html/2025/10/aa57104-25/aa57104-25.html] / Eurekalert[https://www.eurekalert.org/news-releases/1109026]

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