葬儀会社が服と間違えて亡くなった息子の脳を親に渡してしまう

葬儀会社が服と間違えて亡くなった息子の脳を親に渡してしまうの画像はこちら >>

 アメリカの葬儀会社が、個人の遺体の取り扱いにおいて、重大な過失を犯したとして告発されている。

 カリフォルニア州サンノゼで、葬儀会社が遺族に故人の衣服を返却する際、なんと間違って故人の「脳」を入れた袋を渡してしまったというのだ。

 袋を受け取った故人の父親は、衣類だと思い込んでいたため、自宅に戻ると袋の中身を洗濯機に入れた。すると、中から脳の一部が洗濯機の中に転がり落ちてきたのだ。

 遺族は葬儀会社に対し、精神的苦痛を受けたとして訴訟を起こし、原因が究明されることを望んでいる。

故人の衣類だと思って受け取った袋の中身は…

 アレックスことアレクサンダー・ピノンさん(27)は、2025年5月19日に亡くなった。遺族の希望により、その死因については明かされていない。

 遺族はサンノゼにある葬儀会社、リマ・ファミリー・エリクソン記念礼拝堂[https://www.dignitymemorial.com/funeral-homes/california/san-jose/lima-family-erickson-memorial-chapel/2460]に、アレックスさんの葬儀を依頼することにした。

 彼の母親は、同社と防腐処理・着替え・納棺・遺体の搬送・葬儀を含む、「フルサービスの追悼パッケージ」を契約。1万ドル(約156万円)以上を支払ったという。

[画像を見る]

 遺族はアレックスさんを納棺するにあたって、亡くなった時に着ていた服ではなく、きちんとした格好で見送りたいと希望した。

 遺族の弁護を引き受けたサメル・ハバス弁護士は、その時の家族の心境をこう語っている。

彼らは、息子にとって正しいことをしてやりたかっただけなのです。そして、尊厳ある別れをさせたいと願っていました

 そこで葬儀会社に彼に着せる衣服を渡して着替えさせてもらうとともに、、死亡時の服を返却するよう求めた。

 6月4日、アレックスさんの父親は、息子の服を返却してもらうために、葬儀会社の担当者、アニタ・シン氏のところへ出向いた。

 シン氏は、父親に「バイオハザード」表示のある赤い袋を手渡した。その中に、アレックスさんが来ていた衣類が入っていると説明されたという。

[画像を見る]

 父親は袋を受け取ると、車で自宅に帰り、そのまま中身を洗濯機の中に入れてしまった。だが次の瞬間、父親は衝撃を受けることになる。

 袋の中に衣類は入っておらず、代わりに人間の脳の一部が入っていたのだ。

その時点で彼らは、洗濯機の中に入っていたものが息子の脳だとは、まったく知りませんでした。

それが他人の脳と混ざっていたのか、それとも本当に息子のものだったのか、そのどちらなのかもわかりませんでした。何ひとつ、見当もつかなかったのです

葬儀会社からは謝罪も説明もなかった

 父親は洗濯機の中から「脳」をすくい取って袋の中に戻すと、その日のうちにもう一度葬儀会社へ赴いて、袋ごとシン氏に返却した。

 シン氏は父親から袋を受け取ったとき、それが誰のものなのか、何の説明もせず、謝罪の言葉も口にせず、ただ「私が引き受けます」とだけ答え、アレックスさんの衣類を改めて返却することもなかったという。

 アレックスさんの葬儀は、その翌日の6月5日に執り行われ、遺体は同じ葬儀社が運営するオークヒル記念墓地に埋葬された。

 担当者からの詳しい説明も謝罪もないまま、遺族は悶々とした日々を送っていた。だがその数週間後、事態は動く。

 葬儀会社で内部告発者が現れ、袋の中身は間違いなくアレックスさんの「脳」であったと証言したのだ。

 また、「脳」が返却された後、シン氏は2か月半もの間、その袋を箱に入れて、葬儀会社の中庭に放置していたことも判明した。

 最終的に、従業員の1人がその箱を見つけたが、「腐敗した人間の脳」の臭いに圧倒されたと語っているという。

[動画を見る]

遺体の取り扱いをめぐり訴訟に発展

 これを受けて、アレックスさんの遺族は、葬儀会社を「遺体の不適切な取り扱い」の疑いで訴訟を起こすことにした。

誤解しないでいただきたいのですが、人為的なミスは起こり得ます。起きてはならないこと、そして決して許されないことは、過ちを隠蔽することです。そして、この葬儀会社は、まさにそれをやったのです

 ハバス弁護士はこう語る。訴状によると、遺族は検死官がアレックスさんの解剖を行っており、脳の一部が摘出されていたことを知らなかったという。

 また、アレックスさんの「脳」を父親に渡したシン氏は、裁判に先立ち、葬儀会社を退職していたことも判明した。

故人の遺体の取り扱いは、遺族に極度の精神的苦痛やトラウマ、そして深い心の痛みを与えました。

自分の子供の脳の一部を洗濯機の中で発見し、それをすくい出さなければならなかったという恐怖は、どんな家族であっても決して耐えるべきものではありません。

遺族はショック、深い悲しみ、悪夢、不安、うつ状態など、長期にわたる心理的な被害を受けています。こうした出来事は、故人を悼む過程で、悲しみに区切りをつけるプロセスを妨げてしまったのです

[画像を見る]

同様の事件は以前にも発生していた

 実は同様の事件が、以前にもアメリカで起こっており、今年になってこちらも裁判になっている。

 2023年11月、ジョージア州で亡くなったティモシー・ガーリントンさん(56)[https://www.nbcphiladelphia.com/news/local/funeral-homes-philadelphia-georgia-deceased-son-brain-lawsuit-parents/4241358/]の遺体がペンシルベニア州にある葬儀会社に送られた。

 その際、遺族が遺品を受け取ったのだが、その中にラベルのない赤い箱が入った段ボール箱があった。

遺族は中身を確認せずに、その箱を車の中に置いておいた。

 数日後、車内に異臭が漂ったために箱を確認すると、その周囲には液体が漏れ出しており、中にはティモシーさんの脳が入っていたのだ。

 こちらも葬儀会社からの謝罪はなかったといい、ティモシーさんの両親も、「実際は何が起こったのか」の説明を求め、2025年11月になって訴訟を起こした。

ネットでは葬儀会社に対する不信感も

 相次ぐ葬儀会社の不祥事に、現地のインターネットでは不信感をあらわにするコメントが寄せられていた。

  • 自分はアニタ・シンといっしょにこの葬儀会社で働いていたことがあるよ
    • 本当に? どうしてこんなことが起きたんだろう
      • まず、この施設では遺体の処置自体は行っていないんだ。アニタは、解剖が行われる場所に立ち入れる立場ではなかった。だから彼女は、名前が書かれた袋をそのまま渡しただけだと思う。問題が起きた原因は、処置を行っているチームにあるんじゃないかな
  • なんで脳が取り出されてるの? 身体の一部を売ろうとしてたってこと?
    • 死因が不審で解剖が必要な場合、脳を調べるのは珍しくないよ
  • でも、脳を取り出すのは大変じゃないの? なんでわざわざ?
    • 検死の際は、脳を取り出して重さを量らないといけないんだよ
  • 10~15年前、マサチューセッツ州で、抜き打ち検査で免許を剥奪された葬儀社があったよ。冷凍設備がなくて、遺体は室温で放置され、一部は腐敗していた。ひどい話だったよ
    • 私の地域にも、州の監督機関に賄賂を渡して検査を逃れているんじゃないかと思っていた葬儀会社があったよ。うちはそこから火葬を請け負っていたんだけど、1人で5人同時に防腐処理していた。そこでは家族の希望に関係なく、全員に防腐処理を施し、支払いが終わるまで遺体を保管していたんだ
  • 僕の兄の脳も、埋葬から数か月後に箱で届いた。
    脳が取り出されていたなんて、その時まで知らなかった。その後で、2度目の埋葬を行った。ホラー映画みたいで、本当に奇妙だった
    • えっ、その箱を開けたの?
      • 開けてない。父の家に行ったら、「そこにお前の兄の脳がある」と言われた。本当に衝撃だったよ
  • 本当に最悪だ。去年息子を亡くした身として、遺体が冒涜されるニュースを見るたびに胸が悪くなるよ。もしかしたら、私が持っている遺骨は息子のものじゃないんじゃないか、と考えてしまう日もあるんだ。100%自分の息子だと確信できたらいいのに
  • なんというか、もう適切な言葉が見つからないよ…

 ピノンさんの遺族は、被告である葬儀会社に対し、過失、詐欺、精神的苦痛を与える行為、契約違反を行ったとして、その責任を追及している。

 どちらの事件も現在係争中であり、まだ判決には至っていない。ハバス弁護士は、アレックスさんの事件について、次のように語っている。

 ハバス弁護士は、葬儀会社や資格を有する葬儀の担当者は、遺体を尊厳と敬意をもって取り扱うことを託された専門職なければならないと指摘した。

遺族がこの先の人生で、どれほどの苦しみを背負うことになるのかは、はかり知れません。



1つだけ言えるのは、これは決して忘れることのできない出来事だということです。彼らは一生、これを背負って生きていかなければならないのです

 弁護士らは、既にオークヒルに埋葬されているアレックスさんの遺体と脳を、再び一緒にするための対応について協議を続けているという。

References: San Jose mortuary accused of mistakenly giving parent his son’s brain in bag[https://www.kron4.com/news/bay-area/san-jose-mortuary-accused-of-mistakenly-giving-parent-his-sons-brain-in-bag/]

編集部おすすめ