中国で頭に大ケガを負った女性が、自身の耳を足に移植して保存するという手術を受けた。
血流を確保し、5か月間足の甲で生かされ続けていた耳は、頭部の傷が癒えた時点で、もともとあった場所に耳を再度移植する手術が行われた。
顕微鏡下で、細い血管や神経を繋ぐ困難な手術は無事に成功。女性は元の姿を取り戻すことができたそうだ。
工場事故で頭部から耳が引きはがされてしまう
中国・山東省の工場で働いていた30代の女性孫さん(仮名)は、2025年4月、勤務中に髪の毛が機械に巻き込まれるという事故に遭った。
孫さんは左耳と頭皮、顔の一部に深刻な損傷を受けるという大ケガを負い、山東省立医院に搬送された。
命に別状はなかったものの、左耳は頭皮と共に頭部から引きはがされてしまった。彼女の外見を回復するには、左耳を再び移植するしかない。
だが、耳があった場所の神経や血管、頭皮などの損傷がひどかったため、すぐに移植手術を行うことができなかった。
治療を担当した仇申強医師のチームは、耳を本来の位置とは別の部位に一時的に移植し、血流を確保して生かしながら再移植のタイミングを待つ、いわゆる「異所性移植」を選択した。
足の甲に移植され、再移植の日を待つことに
移植先に選ばれたのは、彼女自身の足の甲だった。足の甲は皮膚が薄く、血管も0.2~0.3mmと耳のものに近い細さのため、移植が容易だったからだ。
手術は10時間にも及び、医師らは顕微鏡下で神経や血管を探し出し、耳と足を繋いでいった。まるで「針の先に刺繡をする」ような、困難を伴う手術だったという。
さらに、頭部と顔面の損傷を回復するための手術も同時に行われ、一度はがれた皮膚を整えて、再び元に戻す処置が試みられた。
手術は無事に成功したが、その後も課題は途切れなかった。
さらに、耳の血流にもトラブルが発生。移植後5日目には静脈が閉塞し、耳全体が変色する事態に陥った。
仇医師は耳に細い針を刺し、15分ごとに血液を排出する処置を24時間続けた。すると血流は改善し、10日後には状態が安定。耳は健康な状態に戻ったという。
こうして彼女の耳は、足の甲で生き続けることになった。孫さんはその後5か月間、この状態で日常生活を送ったのだ。
無論、見た目の違和感は大きく、靴も緩いものを選び、歩く際には細心の注意を払わなければならなかった。
だが「耳を失わずに済む」可能性が、孫さんを支え続けた。彼女は足にある耳を大切に守りながら、「左耳」との再会を心待ちにしていたという。
手術は無事に成功し、耳は元の位置に戻った
10月になると頭部に移植された皮膚も安定し、腫れや炎症もすっかり落ち着いたため、いよいよ耳をもとの位置に戻す手術が行われることになった。
今度の手術は、耳を足の甲から切り離して、元の位置に再移植するものだ。だが、傷口にある組織の癒着や変形が激しく、手術は一筋縄ではいかなかった。
仇医師らは再び顕微鏡を使って、血管や神経を根気よく探し出し、丁寧に1本1本繋いでいく。
最後の血管が繋がって血流が再開された時、青白かった耳が徐々に生気を取り戻していった。その瞬間、手術室にいたスタッフ全員が、安堵の息をついたそうだ。
下は現地メディアによる報道である。移植手術直後の写真もあるので、視聴する際は注意してほしい。
鏡の中で左耳と再会した孫さんは、喜びの涙をこらえきれなかったという。彼女はその時の心境をこう語っている。
もう人生は終わったと思っていましたが、先生方のおかげで第二の人生が与えられ、再び人生に立ち向かう勇気が湧いてきました
また、主治医の仇医師は、今回の手術について、次のように話している。
わずかでも可能性があるなら、私たちは100%の力を尽くして救います。「粘り強く、妥協せずに完璧を追求する」という理念は、1つひとつの手術、そして患者の健康を守るすべての場面に込められた約束なのです
孫さんの左耳は無事に元の位置に戻ったが、治療はここで終わりというわけではない。
References: Woman “Wears” Severed Ear on Her Foot for Five Months Before Reattachment[https://www.odditycentral.com/news/woman-wears-severed-ear-on-her-foot-for-five-months-before-reattachment.html] / 脚背养耳5个月,山东女子离断左耳“回家”记[https://cj.sina.com.cn/articles/view/5328858693/13d9fee45020029u06]











