ロシア全土でポルシェが突如動かなくなる奇妙な現象が発生。その理由とは?
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 ある日車が動かなくなる奇妙な事件がロシアで多発。そこにはポルシェという共通点があった。

 11月末から12月上旬にかけ、ロシア各地で数百台のポルシェが突如として走行不能に陥った。

 エンジンが動かず、ドアも開かないなどの異常が相次ぎ、かの有名なドイツ発祥の高級車が一夜にして無用の長物と化したのだ。

 一体何が起きたというのだろう?

衛星通信が途絶えセキュリティシステムが作動

 高級車であるポルシェがただの鉄の塊となってしまった奇妙な出来事だが、のちに原因は衛星セキュリティシステムの通信途絶にあることが判明した。

 ポルシェ専用の車両追跡・盗難防止システム「Vehicle Tracking System(VTS)」は、GPS追跡システムに近いが、盗難防止機能と直結する点が決定的な違いである。

 衛星通信を通じて車両の位置を監視し、異常があればエンジンを停止させる仕組みとなっている。

 通信が途絶えたことでシステムが「盗難」と誤認したため、燃料供給の遮断や突然のエンジン停止といった、盗難防止装置の作動を招き、結果として数百台のポルシェが同時期に走行不能となったという。

 だが、急な異常事態に「意図的な妨害」説も浮上。各国メディアが取り上げる事態へと発展している。

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ロシアのディーラーが暫定対応

 ロシア最大のディーラー「Rolf」は、11月28日以降サービス依頼が急増したと報告している。

現在、すべてのモデルと内燃機関タイプで接続が失われています。どの車両もブロックされる可能性があります (Rolf社サービスディレクター・ユリア・トルシュコワ氏)

 同社は応急処置として、工場出荷時のアラームユニットを分解・リセットする方法を公開。バッテリーを10時間以上外すという荒技まで試みられているが、恒久的な修復には至っていない。

 オーナーらは高級車を前に途方に暮れ、SNSには「数千万円の鉄の塊になった」という嘆きがあふれている。

 なお今回走行不能になったのは、ポルシェの特定のモデルに限らず、2013年以降に製造された VTS 搭載モデル全般だった。

 報道では特にカイエン、マカン、パナメーラ、911 などの主要モデルが影響を受けたという。

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意図的説も。通信が途絶えた原因は不明

 通信の途絶の原因はつかめぬままだが、Rolf広報はこの事件について「意図的に引き起こされた可能性」をほのめかしている。

 だが証拠はなく、ハッカー集団の犯行声明なども今のところ出ていない。また、ロシア以外の国で同様の障害などは確認されていない。

 この事態にポルシェが対応してると思いきや、同社は2022年のウクライナ侵攻以降、ロシアでの商業活動を停止しているため、現地に正規のサポートも存在しないという。

VTSを手動で無効化する必要がありました。システムを再起動したり、バッテリーを何時間も外した後にようやく復旧できたオーナーもいます (ロシア・ポルシェマカン・クラブのオーナー)

 オーナーらは自力で修理を模索するしかなく、各国からは「地政学的緊張とサイバーリスクが交錯する事件」として注目されている。

「次はどの国?」「デジタル戦争か」SNSで憶測が飛び交う

 アメリカのメディアKTLAもこの件を取り上げ、12月10日公開のYouTube動画の再生数は5万回を突破。

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 SNSでは「次は他国でも起きるのか」「これはデジタル戦争の一端ではないか」といった憶測が飛び交い、事件は単なる自動車トラブルを超えて国際的な関心を集めている。

 一方、インドのテックメディア techstory は、この件について本来対応すべきポルシェがロシアで運営不能な状態を指摘、このように批判している。

同社は依然として、売却も正常な運営もできない子会社を保有している。この膠着状態が危機対応の複雑化を招いており、特に旧式のソフトウェアや機能不全の地域インフラが故障の一因となっている可能性が高い

 またインドのビジネス・金融系メディア mint は、Youtubeでロシアと対立するヨーロッパの指示で起きたのではないか?という憶測についても報じていた。

 12月9日に投稿されたこの動画の再生数は6万回を超えている。

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スイッチ1つで深刻な影響。便利さの裏に潜むリスク

 この事件で想起されるのが便利さの裏に潜むリスクだ。衛星が途絶えセキュリティシステムが切れただけで数千万円する高級車が無力化する出来事が実際に起きてしまった。

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 これは単なる自動車トラブルではなく、IoTの浸透が進む社会全体に突きつけられた問いかもしれない。

 現代の便利な暮らしに不可欠なもの、つまりスマートフォン、家電、都市インフラなどのすべてがネットワークに依存するこの時代は、たった1つの“スイッチ”が切られるだけで生活そのものが停止しかねない、という現実に常に直面している。

 私たちが日常で意識せずとも、その現実はビクともしないが、今回の事件はその脆弱性を世界に示す一例になったようだ。

 テクノロジーと共に生きる時代だからこそ、この先目指すは便利でも安心して使えるシステム作りではなかろうか。

References: Odditycentral[https://www.odditycentral.com/auto/porsches-across-russia-suddenly-stop-working.html] / Indiatimes.com[https://economictimes.indiatimes.com/news/international/us/porsches-across-russia-mysteriously-shut-down-is-this-a-james-bondstyle-cyber-hit/articleshow/125870100.cms] / Canalcarro[https://canalcarro.com/en/panic-in-russia-porsche-cayenne-macan-and-panamera-suddenly-stop-all-over-the-country/] / Techstory[https://techstory.in/porsche-russia-system-failure-satellite-outage/]

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