あの乗り物が観客の歓声に包まれながら大疾走!三輪タクシー「トゥクトゥク」のユニークなオフロードレースをご存じだろうか。
Red Bull 主催で不定期開催される「Red Bull Tuk It(レッドブル トゥクイット)」は、これまでのトゥクトゥクのイメージを激変させる、スリルとスピード満載のワイルドな競技だ。
その中身は、腕に自信のあるドライバーらが、転倒に抗いながら、無茶なコースに果敢に挑み、川を渡ったり山を越えたりしながらゴールを目指すというもの。
2020年にスリランカで2日間にわたって開催されたレースの様子を見ていこう。
Red Bull主催。前代未聞のトゥクトゥクレース
トゥクトゥク(三輪タクシー)といえば、東南アジアや南アジアで広く使われる”庶民の足”。
スリランカでは「スリーホイーラー」などとと呼ばれ、都市から農村まで、暮らしに密着した移動手段として定着している。
そのため、本来は街中を低速で“のんびり走る乗り物”であり、モータースポーツとは無縁と考えられてきた。
その概念を覆したのがイベント好きなRed Bull。世界各地の“日常の乗り物を非日常の競技へと変貌させる”イベント企画の一環で、前代未聞のトゥクトゥクレースを開催したのだ。
スリランカの多様な地形250kmを走破する特設コース
今回紹介するレースは2020年2月22日から23日にかけて開催されたもの。
スリランカの面積は日本の1/6ほど。小さな島国ながら短い距離の間に、農村、川、山、密林、都市がぎゅっと詰まった地形で知られる。
この大会では、その地形を生かし、西部の村カルアグラから中部の都市ダンブッラまで、およそ 250kmを走破する特設コースが用意された。
つまり挑むのは、オフロード、川の横断、山岳地帯の急など多様な地形が盛りだくさんのスペシャルコースとなる。
ルートとしては風光明媚な一方で、通常の運転とはかけ離れたテクニックやセンスが要求される。
ベテランのトゥクトゥクドライバーですら先が読めない、極めて過酷で難易度の高いレースだ。
そもそもトゥクトゥクで、この無茶なコースを転倒せずに走ること自体が難しい。
転倒を防ぐには、ドライバー以外のメンバーが、速度と地形に合わせて自分の体重を使ってバランスを取らねばならない。と同時にうっかりすると車外に飛び出し負傷するだけでなく、観客まで巻き添えにするリスクもある。
のんびり屋のタクシー」が「爆走マシン」に
参加は3人1組で、総勢228チームがレースに挑んだ。沿道には地元の人々が集まり、声援と笑顔で選手を励ます。
中には応援ついでに転倒した車体を戻すのを手助ける人も。
最大の魅力は、いつもは「のんびり屋のタクシー」が「爆走マシン」に変貌するギャップだ。
レースでは トゥクトゥクの小さな車体が砂利道を跳ね、急な坂を駆け上がる。
その迫力は本格的なラリーさながら。ぬかるみで泥だらけになりながらも必死に駆けるドライバーに観客も手に汗握り、そのスリルに息を呑む。
タイヤのパンク、エンジントラブル、転倒からの怪我などにも苦しめられる選手たち。
それでもあきらめず、車を修理をしてはレースを続けるチームもいた。
そんな姿に人々も拍手喝采。競技というより地域のお祭りのように盛り上がり、その場のみんなが夢中になった。
優勝チームにとっては「伝説的な旅」に
2日間にわたるレースを制し、栄えある総合優勝を勝ち取ったのはチーム93-4だった。
このレースはスピードだけでなく、チームワークや持久力、お互いを信頼する心が試される。
実際あまりのキツさに脱落したチームも多く、完走したのはおよそ1/3、わずか72チームだったそう。
このレースのダイジェスト版はYoutubeでも公開されており、162万回も再生されている。
スリランカの観光資源になる可能性も
海外メディアも、この競技を「世界で最もユニークなレース」と紹介。
SNSでもシェアされ、小さなトゥクトゥクの激しいレースに国内外の多くの人が関心をもつほどに。ゆくゆくはスリランカの観光資源になりそう。
ちなみにこのトゥクトゥクレース「Red Bull Tuk It」は、2026年10月に再びスリランカで開催予定だ。
なじみあるトゥクトゥクのハードな一面が楽しめるユニークなイベント。
現地の人も心待ちにしてそう。
References: Odditycentral[https://www.odditycentral.com/auto/southeast-asias-tuk-tuk-racing-scene-is-no-joke.html] / Redbull[https://www.redbull.com/int-en/events/red-bull-tuk-it-2020]











