アルゼンチンの水族館で、中南米最後の1頭として飼育されていたオスのシャチ、シャメンクは35歳で亡くなった。
死因は、高齢に伴う合併症による心肺停止とみられている。
シャメンクはこの水族館で33年間を過ごした。飼育下のオスのシャチとしては一般的な寿命を超えていたものの、その死は海洋哺乳類の飼育の在り方をめぐる議論を再び巻き起こしている。
水族館側は適切な保護の結果だったと主張する一方で、動物愛護団体は孤独な環境での不当な拘束だったと批判を続けてきた。
中南米最後の飼育シャチが水族館で生涯を閉じる
アルゼンチン最大級の海洋公園「ムンド・マリノ(Mundo Marino)[https://mundomarino.com.ar/murio-kshamenk-la-orca-rescatada-de-un-varamiento-en-san-clemente/]」は、2025年12月14日、飼育していたシャチのシャメンク(Kshamenk)が心肺停止により死亡したと発表した。
14日の朝、シャメンクは健康状態が変化し、長年連れ添った飼育員や獣医師チームに見守られながら、その日のうちに息を引き取った。
現在、詳しい死因の分析が進められているが、は高齢に伴う合併症によるものとみられており、専門家チームによるつきっきりの監視と懸命な看護にもかかわらず回復できなかったと説明されている。
水族館は声明の中で、シャメンクは常に適切な医療監督の下に置かれ、継続的なケアを受けていたものの、死を避けることはできなかったと述べている。
シャメンクが水族館にやってきた経緯
シャメンクがこの水族館に来たのは1992年のこと。当時、まだ子供のシャチだったシャメンクは、大西洋沿岸で座礁しているところを発見された。
泥沼に閉じ込められて自力で海へ戻ることができず、危機的な状況にあったところを救助された。
深刻な衰弱状態にあったシャメンクを救うためにはどうしたらいいか?
国際的な専門家やアルゼンチン当局が協議を重ねた結果、野生に戻すことは困難であるとの判断が下された。
そこでシャメンクはムンド・マリノに移送され、33年にも及ぶ長い水族館生活がスタートしたのである。
水族館側は、こうした長年の献身的なリハビリとケアがあったからこそ、シャメンクは野生のオスのシャチの平均的な寿命を超えて生きることができたのだと主張している。
スタッフたちにとってシャメンクは単なる飼育動物ではなく、まさに家族の一員であった。
水族館の主任獣医師は、シャメンクを支えてきたチームの深い悲しみを代弁し、シャメンクから学んだ教訓を今後の動物保全に役立てていくことが自分たちの使命であると述べている。
食い違う保護団体側の主張
一方で、この33年に及ぶ物語には別の視点も存在する。
一部の環境団体や動物愛護団体は、当時の座礁は救済というよりむしろショーを目的とした意図的な捕獲であったと長年にわたって主張している。
一部の団体はこの出来事を、3頭のシャチの誘拐であった[https://laderasur.com/articulo/kshamenk-la-orca-prisionera-del-circo-acuatico/]と表現し、連れて行かれる途中で1頭が死に、もう1頭は後に水槽の壁に体をぶつけて死んだと主張している。
また、シャメンクは長年、同種の仲間に触れることなく、たった1頭で孤独な環境に置かれていることは適切ではないとして、解放を訴え続けていた。
近年、ドローンによる空撮映像で、シャメンクが小さな水槽の中を浮いたり回ったりしている姿が公開されると、その状況は国際的な注目を集めた。
動画がSNSで拡散されると、シャメンクを解放して海洋サンクチュアリ(海洋保護区)へ移送することを求めるオンライン署名には数万人の賛同が集まった。
ムンド・マリノ側は、動物を閉じ込めて利益を得ているという批判を否定している。
シャチは社会的な動物であり、家族グループの中で生きる生き物であるため、シャメンクが生きていくには人間のケアが必要だったと説明している。
科学的に見るシャチの寿命と世界で続く飼育の現状
シャチの寿命は、野生のシャチであれば、オスは平均して30年から50年ほどで、中には60歳を超える個体もいる。メスはさらに長生きで、平均50年から80年、最高で100歳近くまで生きる。
これに対し、飼育下のシャチは多くが10年や20年で命を落としており、35歳まで生きたシャメンクは飼育環境下では比較的長寿と言える数値であった。
35歳で亡くなったシャメンクの寿命を、適切なケアによる長寿と見るか、あるいは不自然な環境によるものと見るかについては、今も人々の立場によって解釈が分かれている。
また、知能が高く家族の絆を重んじるシャチにとって、水槽という閉鎖的な環境が倫理的に許容されるのかという問いにも、まだ明確な答えは出ていない。
2024年1月の時点での推計によれば、世界中の海洋公園で少なくとも54頭のシャチが飼育されている。
内訳は、中国が24頭、アメリカが17頭、日本が6頭、スペインが4頭、フランスが2頭、ロシアが1頭だ。
フランスの水族館「マリンランド・アンティーブ」にいる2頭は、施設が閉鎖になったが、移転先が決まらず、廃墟となった濁った水槽で泳いでいる状態が長く続いていたが、2025年12月13日にカナダの海洋保護区への移送が正式に決定した。
References: Mundomarino.com.ar[https://mundomarino.com.ar/murio-kshamenk-la-orca-rescatada-de-un-varamiento-en-san-clemente/] / Kshamenk, last captive killer whale in Latin America, dies in Argentina[https://www.upi.com/Top_News/World-News/2025/12/19/latam-argentina-killer-whale-dies/5441766166497/]











