これまで太陽系外惑星だと思われていたものの正体が、実は巨大な天体同士の激突によって生まれた塵の雲だったという驚きの事実が、ハッブル宇宙望遠鏡の観察により判明した。
現場は25光年先にあるみなみのうお座の恒星で1等星であるフォーマルハウトの周囲にある、まさに惑星が誕生する途中のエリアだ。
この発見によって、かつて惑星だと思われていた光が忽然と消えた謎が解け、天体が激しくぶつかり合いながら新しい惑星が形成されていく状況が明らかとなった。
この研究成果は『Science[https://www.science.org/doi/10.1126/science.adu6266]』誌(2025年12月18日付)に掲載された。
25光年先で起きた謎の太陽系外惑星消失事件
秋の夜空に明るく輝くフォーマルハウト(みなみのうお座α星)は、みなみのうお座にある恒星で、全天に21ある1等星の1つとして知られている。
この恒星の周りには、小さな岩石や塵が集まった巨大な円盤状のベルトが広がっている。
ノースウェスタン大学やカリフォルニア大学バークレー校などの国際研究チームは、2008年、このベルトの中で輝くフォーマルハウトbという光を発見した、これが将来的にどのような惑星へと成長していくのか、その惑星形成のプロセスを解明しようと、20年以上も監視を続けてきた。
ところが、2023年にハッブル宇宙望遠鏡で再び観測したところ、その光は跡形もなく消え去っていた。
それどころか、別の場所に新しい光が現れていたのである。
研究チームが調査を進めた結果、その正体は完成した惑星ではなく、天体同士が衝突した瞬間に飛び散った巨大な塵の雲であったことがわかった。
ぶつかり合って大きくなる惑星誕生の仕組み
天体同士の衝突がなぜ惑星の形成と深く関係しているのか、疑問に思うかもしれない。
実は、地球のような惑星は最初から大きな球体として誕生するわけではなく、宇宙に浮かぶ小さな岩石が合体を繰り返して作られる。
その材料となるのが、直径数kmから数十kmほどの岩石や塵が集まってできた小さな天体、微惑星だ。
これらが何度も激しくぶつかり、その勢いで合体して少しずつ大きくなることで惑星へと育っていくのである。
今回のケースでは、2つの微惑星が猛スピードで激突した際に、膨大な量の塵が周囲に撒き散らされた。
この広がった塵の雲が中央の星の光を鏡のように反射したことで、遠く離れた地球からは、まるで一つの巨大な惑星がそこにあるかのように輝いて見えていたのだ。
10万年に1度の現象がわずか20年の間に2回も発生
理論上では、このような大規模な天体同士の衝突は10万年に1回程度しか起きない非常に珍しいものだ。しかし、フォーマルハウトの周囲ではわずか20年の間に2回も同様の現象が確認された。
ノースウェスタン大学のジェイソン・ワン助教授によれば、4つの独立した分析によって、光の点が天体同士の衝突による一時的なイベントであることが証明されたという。
私たちが目撃した光の消失と出現は、将来的に新しい惑星が生まれるための合体プロセスの真っ只中であることを示している。
太陽系の外側で、天体がぶつかり合って成長していく様子がリアルタイムで確認されたのは初めてのことであり、宇宙の進化を知る上で大きな意味を持っている。
次世代望遠鏡が解き明かす新しい惑星誕生の物語
今回の発見は、これからの惑星探索に重要な教訓を与えた。巨大な塵の雲が何年もの間、本物の惑星のふりをして観測者を惑わせる可能性があることがわかったからだ。
チリで建設が進んでいる巨大マゼラン望遠鏡[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%A8%E5%A4%A7%E3%83%9E%E3%82%BC%E3%83%A9%E3%83%B3%E6%9C%9B%E9%81%A0%E9%8F%A1]などの次世代望遠鏡で生命が住める惑星を探す際、こうした一時的な衝突の残骸と本物の惑星を正しく見分ける能力が不可欠になる。
カリフォルニア大学バークレー校のポール・カラス教授は、この教訓が将来の惑星探査ミッションにおいて重要になると指摘している。
今後はジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使い、雲の中に水や氷が含まれているかといった組成まで調査される予定だ。
最新鋭の望遠鏡が、宇宙で起きているダイナミックな進化の劇的瞬間を鮮明にとらえてくれることに期待しよう。
References: Eurekalert[https://www.eurekalert.org/news-releases/1109998] / Science[https://www.science.org/doi/10.1126/science.adu6266]











