中国のゲーム業界ではよく知られた起業家の徐波氏が、お金を返してくれないとして、元交際相手を訴えた。だがそこから火種が広がっていく。
元交際相手がSNSへの投稿で、徐氏が代理出産で子供をもうけていたことを暴露したのだ。その数、なんと300人…!
この徐氏、何かとお騒がせな人物であるのは確かなようだが、本当に300人もの子供を作ったのだろうか。
ゲーム開発で財を成した一獲千金の億万長者
まず、今回話題となっている徐波という人物について、サクッと紹介しよう。
徐波氏は1977年生まれ。父子家庭で育ち、最終学歴は中卒とされ、中国では高等教育を受けずに社会的成功を収めた人物として紹介されることが多い。
2001年、20代前半で大手IT企業・NetEase(網易)に入社し、オンラインゲーム「大話西遊Online」に関わった。
同社ではカスタマーサポートを経て企画職に移り、その後は「夢幻西遊」など、同社のゲーム制作に参加したと言われている。
2006年にNetEaseを退社して独立し、広州を拠点にしたゲーム会社、Duoyi Network(多益網絡)を設立した。
その後はターン制MMORPG「神武」シリーズを主力タイトルとして展開し、中国国内で一定のユーザー層を築いてきた。
徐氏自身も長者番付に名を連ねる存在となり、億万長者として知られるように。2024年現在の徐氏の資産は、約275億元(約6150億円)とされている。
つまり彼は、幼少期の貧しい生活を脱却して、アメリカンドリームならぬ「中国夢」を叶えた人物として、立志伝に名を連ねる人物なのだ。
度重なる女性蔑視・従業員蔑視の問題発言
徐氏はまた、過去に女性や子供をめぐる発言で、たびたび批判を浴びてきた人物でもある。
一夫一婦制を「愚行」と断じ、女性の権利を認めることには大反対。
実際に徐氏は、SNSを通じて常に「23歳以下」の見目麗しい優秀な女性を募集しているが、彼女たちに求めるのは「子供を産むこと」だけ。
自分を「百万人に一人のエリート」「中国初の父親」と呼び、50人の息子をエリートとして育てれば、少なくとも10人は、トップクラスの成功を収めるだろうとも語っていた。
そして徐氏はそれを実践するために、アメリカの代理出産を仲介する会社を通じ、多くの子供たちをもうけているというのだ。
また、経営者としても理解に苦しむ言動が多く、従業員への信じられないような命令は、特に批判の的となった。
- 入社から1年が過ぎた新入社員は、自分(徐氏)にご祝儀を渡すこと
- これを拒否した社員は、自己批判文を書くこと
- 自主的に10%の減給を喜んで受け入れること
- 退職する際は、社員食堂での食事代を会社に返済すること
つまり、徐氏に対するこうした「問題発言を繰り返す成金」というイメージが、中国社会では広く共有されているのだ。
元交際相手からの反論が思わぬ反響を呼ぶ
今回、徐氏の子供の件が注目されるきっかけとなったのは、彼の元交際相手とされる女性がSNSに投稿した内容だった。
この元交際相手は「湯敬(タン・ジン)」という名前の女性で、正式な結婚はしていなかったものの、徐氏と14年間一緒に暮らしていたという。
彼女は徐氏の「後宮」の中でトップとされていた存在で、彼との間に2人の娘をもうけたほか、代理出産による徐氏の子供たちの養育も任されていたんだそうだ。
ところが2024年3月、徐氏が彼女を相手取り、彼女が持って行った金銭の一部を返還するよう求める訴訟を起こした。
訴訟の内容は、湯さんが徐氏から横領した約3億元(約67億円)を返還するよう求めるものだったが、裁判では証拠が不十分であるとして、徐氏側の主張は退けられた。
その後、2025年11月15日になって、湯さんは自身のSNSに徐氏の主張に対する反論を投稿した。この反論の中で、彼女は次のように語っている。
私が引き取った11人の子供は、いずれも私が自ら育てています。私は自分の2人の娘の養育権を守るため、懸命に努力してきました。
私がしてきたすべての行動は、どれだけ誤解され歪められようと、子供たちに安定した、安心できる成長環境を与えるためのものでした
つまり彼女は、代理出産で生まれた徐氏の11人の子供たちを苦労して育てていること、すべては子供たちを守るための行動だったと主張しているのだ。
300人の子供を代理出産で産ませていた?
さらに、訴訟となった横領の問題についても、湯さんは以下のように説明する。
過去10数年にわたり、300人の子供を抱える大家族を維持し、運営していくための生活費は、莫大な額になりました。
その間、私が受け取ってきたお金の大部分は、共同生活の期間中に発生した、日々の生活費に消えていったんです
徐氏が代理出産で設けた子供たちは、彼女が手元で育てている11人だけではない。世界中に、なんと約300人もの子供たちがいるというのだ。
そして徐氏が返還を求めたお金は、徐氏自身が代理出産で作った大勢の子供たちを育てるために使われたというのが、湯さんの主張である。
これに対し、Duoyi Network公式アカウントは、湯さんの主張は「デマ」であり、代理出産で生まれた子供は12人であるとしている。
確かに300人というのは疑わしい気もするが、徐氏はアメリカで少なくとも20人の子供を作るつもりだと発言している。
また、「男の子は女の子よりも優れている」ので、男の子が欲しい」とも希望しているんだそうだ。
ネット上には、徐氏が代理出産でもうけたの子供たちとされる映像[https://www.youtube.com/watch?v=9DQkGAfLZ9Q]がいくつか出回っている。確認できる限り全員が男児で、顔もよく似ているようだ。
アメリカ・中国双方の法律の壁
中国では代理出産が原則として認められておらず、富裕層が国外、特にアメリカでの代理出産を利用する例は以前から問題視されてきた。
しかし、富裕層ならではの抜け道は存在するらしい。徐氏も代理出産で生まれた子供は外国籍であり、中国の計画出産制度には違反していないと主張している。
確かにアメリカで生まれた子供たちは、アメリカ国籍を持つアメリカ人でもある。湯さんは子供たちの多くが、中国の戸籍を持っていないことを明かしている。
だが、事態は徐氏の思惑通りに進んでいるわけではないようだ。アメリカでは代理出産で生まれた子供の場合、法的な親子関係を認定する手続きが必要である。
たとえ生物学的な親子関係があったとしても、法的な親としての権利は、自動的には発生しないからだ。
実は徐氏の場合、短期間に多数の申立てが行われたことから、アメリカの裁判官が彼の申立てを認めず、親権の申請を却下[https://www.wsj.com/us-news/what-to-know-surrogacy-china-billionaires-3734339e]したと報じられている。
アメリカでの代理出産でたくさんの子供を作り、その中から優秀なエリートを育てる…という徐氏の夢の前に、アメリカの法律が立ちふさがった形である。
彼が自分の血を引く子供たちを、自分の思い通りのエリートにし、自分の血筋で固めた「王朝」を築く日は、いつかやって来るのだろうか。
References: Billionaire Self-Described as “China’s First Father” Allegedly Has Hundreds of Children[https://www.odditycentral.com/news/billionaire-self-described-as-chinas-first-father-allegedly-has-hundreds-of-children.html] / “富豪董事长被女友卷走3亿”案,最新回应→[https://finance.sina.com.cn/wm/2025-11-17/doc-infxstsk3768006.shtml]











