密猟者から救助されたセンザンコウ、MRI検査を受けて元気を回復
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 センザンコウは、「世界で最も密猟されている哺乳類の1種」と言われており、絶滅危惧種に指定されている生き物だ。

 2025年秋、南アフリカで密猟者から救出されたメスのセンザンコウが、野生動物としては珍しいMRI検査を受けた。

 保護された後も、原因不明の症状に苦しんでいたための検査だったが、その結果、脊髄に感染症を起こしていることが判明。

 献身的な治療を受けてすっかり元気になり、2025年12月に再度行われたMRI検査で完治したことが確認され、現在は野生へ帰る日を待っているそうだ。

取引寸前に密猟者の手から保護されたセンザンコウ

 このセンザンコウは、2025年9月下旬、リンポポ州の野生動物保護団体「ウモヤ・クルラ野生動物センター[https://umoyakhululawildlife.org/]」によって保護された。

 その日はちょうど、南アフリカの祝日であるヘリテージ・デーだったことから、彼女には「ヘリテージ」という名前がつけられたという。

 ヘリテージは、リンポポ州で行われていたおとり捜査の最中に、違法取引の現場から押収されたセンザンコウだ。

 実は南アフリカは、国際的なセンザンコウ違法取引の中継地の1つとされており、保護施設には次から次へと、密猟から救い出された個体が運び込まれてくる。

 保護された直後のヘリテージは、ひどく衰弱していた。密猟者たちは約2週間、ヘリテージに食べ物も水も与えずに監禁していたのだ。

 密猟者たちはそんなヘリテージを袋に入れて、買い手に引き渡そうとしていた。スタッフが保護した時には、ひどい脱水症状と栄養不良が見られたという。

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原因不明の症状を特定するためにMRI検査を実施

 ヘリテージはすぐにプロヴェット動物病院[https://provetwildlife.com/]に運ばれ、集中治療室で治療を受けることになった。

 ウモヤ・クルラ野生動物センターの所長、エマ・デ・イェーガーさんは、その時の様子を次のように語っている。

彼女は衰弱していた上に脱水症状を起こしており、尻尾や足をひどく引きずっていました

 センターでの献身的なケアによって、ヘリテージの体力は徐々に回復していったが、彼女が足を引きずる原因がどうしてもわからなかった。

 何度もX線検査やCTスキャンを繰り返したが、原因を突き止めることはできなかったのだ。

 そこで彼女の主治医デビー・イングリッシュさんは、ヘリテージにMRI検査を試みることにした。

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通常、私たちはセンザンコウにMRI検査を行うことは好みません。解剖学的に見て、センザンコウには呼吸を確保するために気管に挿管することは不可能です。つまり、これはリスクの高い検査なのです

 MRI検査を受けたことのある人なわかると思うが、この検査を受ける際は、ガンガンと大きな音が鳴り響くチューブの中でじっとしていなければならない。

 動物の場合はどうしても動いてしまうため、必然的に全身麻酔をかけることになる。だが、麻酔には一定のリスクが付きまとう。

 検査中に呼吸が弱くなったり止まったりする可能性もあるため、人工的に呼吸を確保する手段が必要なのだ。

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脊髄に感染症が確認された

 この病院で、センザンコウのMRI検査が行われたのはこれが初めてだった。しかし他に選択肢はなく、この「賭け」は報われることになる。

 最初のMRI検査で、ヘリテージには重度の脊髄膿瘍と脂肪組織炎が確認された。エマさんは、検査結果についてこう説明する。

センザンコウでこのような症状はこれまで見たことがありません。なぜこんなことが起きたのか、100%確信は持てませんが、密猟がこの事態に拍車をかけたことだけは確かです

 4週間後に実施された2回目のMRI検査では、症状に大幅な改善が認められたものの、まだいくつかの懸念事項が残っていた。

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 ヘリテージの症例は非常に稀なものだったため、治療は「暗闇の中で作業する」ようなものだったという。

 彼女は病院から、もっと落ち着いて過ごせるエマさんのセンターへと移され、抗生物質の点滴と、抗炎症剤の投与による治療が続けられた。

私たちは、これまでに100頭以上のセンザンコウと関わってきましたが、性格は本当にさまざまです。

ご想像のとおり、ほとんどの個体はとても怖がりで、治療を簡単にはさせてくれません。でも、ヘリテージはとても穏やかな性格なんです

 そして2か月にわたる集中治療が続けられた結果、12月4日に行われた3回目のMRI検査で、患部の完全な消失が確認されたのだ。

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密猟者に狙われるセンザンコウ

 センザンコウは、東南アジア~南アジアにかけてと、サハラ以南のアフリカに生息している夜行性の生き物だ。

 全身を覆う硬いウロコが特徴で、爬虫類と間違えられることも多いのだが、れっきとした哺乳類である。

  アリやシロアリを主食とし、危険を感じると体を丸めて身を守る習性を持つ。中国やベトナム、インドなどでは、ウロコや肉に薬効があると信じられてきた。

 ウロコはがんや喘息に効く薬として珍重されているほか、ブーツやカバンなどの革製品に使われ、肉も珍味として食べられているそうだ。

 そのため、センザンコウは世界で最も密猟されている哺乳類と言われており、南アフリカはその国際的な違法取引ルートの一部にもなっている。

 現在、世界には8種のセンザンコウが存在しているが、そのすべてが絶滅の危機にあるとされている。

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 ヘリテージもそんな密猟者の手で袋に入れられ、商品として取引されようとしていた。救出があと少し遅れていたら、治療も間に合わなかったかもしれない。

 元気になったヘリテージは、近々野生へと返される予定だそうだ。密猟は後を絶たないが、エマさんは悲観してはいない。

彼女は自信に満ちたセンザンコウです。彼女のために、素晴らしいリリース場所を見つけました。そこは彼女が暮らしていた場所のすぐ近くです。

リリースにあたっては、注意深く観察を続け、彼女が順調に適応し、センザンコウとして生きていけるよう見守っていきます

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References: Facebook[https://www.facebook.com/UmoyaKhulula/posts/pfbid0EusPYrbzsgRDjJ46uaWLXedbXnssfzMsMPhK9Ut1yDJBsMw8kr4CtqvZnZYdQTb6l?rdid=0uV6wNpJFkDSY084#]

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