そいつらは仲間じゃない!自分を犬だと思い込んでいるカピバラ、脱走を繰り返す
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 イギリスの動物保護施設に、1匹のカピバラが保護された。もともと群れで生活する習性があるため、さぞや仲間たちに会えてうれしかろうと思いきや、全然そんなことはなかった。

 そのカピバラは同族との交流を徹底的に拒み、何度もカピバラの飼育エリアから脱走を図ったのである。

 その理由は、このカピバラの生い立ちにあった。幼い頃から犬に囲まれて育ったせいで、自分を犬だと思い込んでいたのだ。

 本来は不可能なはずの1.5mものゲートを7回も飛び越え、犬や人間が過ごす場所へと通い詰める執念を見せた結果、ついにスタッフも根負けすることになった。

仲間との共同生活を拒絶し続けたカピバラのジョージ

 イギリス、スタッフォードシャー近郊にある動物保護施設「ワイルドサイド・エキゾチック・レスキュー」のオーナーであるリンジー・マッケンナさんは、保護したカピバラのジョージ(オス)が新しい環境に馴染めるよう、あらゆる手を尽くしてきた。

 カピバラは通常10~20頭ほどの群れで生活する社会的な動物であるため、マッケンナさんはまず、ジョージ氏を他の5頭のカピバラたちがいる、水泳用のプールや芝生が整った広い囲いの中に入れた。

 しかし、ジョージはこの場所を好まなかった。威嚇的な態度をとっていたため、他のカピバラたちと敵対的な関係となってしまった。

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 そこでスタッフは、ジョージを1頭の温厚なカピバラとだけペアにしてみた。まずは自分以外のカピバラに慣れてもらおうと思ったのだ。

 だがこれも失敗に終わった。

 そこでスタッフはジョージのために専用のプールを作ろうと計画した。

 だがその間も、彼は施設内で人間や犬たちが過ごしているエリアへ行くために、1.5mもの巨大なゲートを何度も飛び越えて脱走を繰り返していたのだ。

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犬と一緒に育ったことで身につけた独自のアイデンティティ

 そもそも、カピバラは南米原産の動物で、イギリスの自然の中にはいない。

 ジョージは幼い頃、前の飼い主にエキゾチックペットとして購入された。エキゾチックペットとは、一般的に飼育される犬や猫以外の珍しい動物を指す言葉だ。

 2023年、当局が前の飼い主にジョージの飼育環境改善のためにプールを作るよう要求したがこれに応じなかったため、ワイルドサイド・エキゾチック・レスキューが介入し、2023年に保護した。

 ジョージは小さな時から家の中で犬と一緒に飼育されていた。

 そのため、自分を犬だと思い込んでいるようで、幸せを感じると犬のように跳ね回って走り、仰向けになってお腹を撫でられることをせがむ。

 もし犬たちがソファに座っていれば、自分も一緒に座ろうと、重い体で犬の上に座ろうとしてしまうこともある。

 ジョージにとっては同族のカピバラたちと一緒にいるよりも、人間や犬のそばにいるほうが自然で安心できるのだ。

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ジョージの意志を尊重し、犬たちと一緒に暮らすことに

 ジョージ氏が囲いから脱走した回数は、1年間で合計7回に及んだ。

 これほどの情熱を見せつけられたスタッフは、彼が心地よく感じられない場所に無理やり住ませることはできないと悟った。

 この施設の理念は動物の選択を尊重することにある。

 ジョージは自らの意志で、カピバラの群れではなく施設内の犬や人間と一緒に暮らす道を選んだのである。

 2024年の初めから、ジョージは念願の生活を送っている。

 朝になるとミーアキャットの囲いに立ち寄ってマッサージを受ける。

ミーアキャットたちの気分が乗らない場合は、アライグマのところへ行って背中を掻いてもらう。

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 そして1日の大半を、そこで新たに出会った親友の保護犬、マイロと一緒に過ごしている。

 2頭が農場の庭を一緒に歩き回ったり、ソファで寄り添って眠ったりする姿は、今では施設の日常となった。

 マイロが発する犬特有のエネルギーが、ジョージ氏に大きな安らぎを与えているのだ。

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過去の環境が作り上げた特別な個性とともに生きる

 ジョージはときにいたずらっ子な一面も見せる。食べ物を準備しているスタッフに前足をかけて立ち上がり、隙を見て食材を盗もうとすることもある。

 彼はビタミンCを強化した専用のフードや新鮮な野菜を十分に与えられており、空腹で困っているわけではない。

 カピバラやモルモットは体内でビタミンCを作れないため、こうした食事管理が欠かせないのだ。

 スタッフたちは、ジョージが野生本来の姿でカピバラの群れと暮らせなかったことに複雑な思いを抱くこともある。

 幼い頃から室内ペットになっていたため、本来の習性に適応できなくなってしまったことは悲しい事実かもしれない。

 それでもマッケンナさんは、ジョージが今、自分の意思で選んだ環境で最高に幸せに暮らしていることを大切に考えている。

 夜は安全な場所で眠り、昼間は大好きなマイロと共に過ごす。

ジョージにとって、この場所こそが自分らしくいられる唯一の家なのだ。

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