北大西洋に浮かぶ181の島々からなるバミューダ諸島。この場所は、船や飛行機が謎の失踪を遂げると語り継がれてきたバミューダ・トライアングルの北端に位置する。
近年の科学的な調査では、こうした失踪事件の背景には、海底から噴き出すメタンガスの泡による浮力の低下や、突発的な巨大波が関係しているという見方が強まっている。
しかし、科学者たちを悩ませている謎はそれだけではない。
実はこの島々は、地質学の理論上ではとっくの昔に海底へ沈んでいるはずなのだ。なぜバミューダ諸島は、今も青い海の上に踏みとどまっているのか。この長年の疑問に対し、最新の研究が真相に迫りつつある。
この研究成果は『Geophysical Research Letters[https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2025GL118279]』誌(2025年11月28日付)に掲載された。
火山活動が終わっても沈まない不思議な諸島
イギリスの海外領土、バミューダ諸島は、約3300万年前の火山活動によって誕生した。通常、火山列島ができる際には、地球の深い場所からマグマが湧き上がるマントル・プルーム[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%86%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%82%B9#%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%97%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%A0]という熱い柱が地殻を押し上げる。
この柱の熱によって海底が盛り上がる現象を海底膨張(sea floor swells)と呼ぶが、火山活動が止まって熱が冷めれば、盛り上がりは沈み、島も海の中へ消えていくのが自然な流れだ。
バミューダ諸島周辺にもこの盛り上がりは確認されているものの、肝心のマントル・プルームが見当たらない。
数千万年もの間、島を支える熱源がないにもかかわらず、バミューダ諸島は大西洋に沈むことなく存在し続けている。
地震の振動からバミューダの地下構造をあぶり出す
アメリカ・ワシントンDCにあるカーネギー研究所のウィリアム・フレイザー氏とイェール大学のジェフリー・パーク教授は、この矛盾を解くためにバミューダ諸島の地下深くに注目した。
地震の振動は、密度の高い場所では速く伝わり、密度の低い場所ではゆっくりと伝わる性質を持っている。この性質を利用して、バミューダ諸島の直下にあるマントルを通過した地震波の記録を詳細に解析した。
地球の内部をレントゲン撮影するように調査した結果、これまでの地質学的な報告にはなかった未知の構造が浮かび上がってきた。
地殻の下に張り付いた厚さ20kmの岩石層
解析の結果、バミューダ諸島の直下にある海洋地殻の底に、厚さ約20kmにも及ぶ比較的密度の低い岩石の層が隠されていることがわかった。
これはアンダープレーティングと呼ばれる現象で、上昇してきたマグマが地表に出る前に地殻の底に板のように張り付いて固まることを指す。
これは、かつて火山活動が活発だった3000万年から3500万年前に、マグマが地殻の裏側に板のように張り付いて固まったものと考えられている。
この厚い岩石の層が、熱を失ったマントル・プルームの代わりに浮力を生み出し、巨大な天然の浮き輪のような役割を果たして島々を海面へと押し上げている。
岩石層の浮力がバミューダを沈没から守っている可能性
この地殻下の岩石層が浮力を提供し続けているおかげで、バミューダ諸島は沈没を免れていると、今回の研究では結論付けられた。
研究者たちは、この特殊な地質構造こそが、マントルからの熱供給が途絶えた後も海底の盛り上がりを維持させている唯一の要因であると考えている。
この発見は、火山島の寿命や進化に関する従来の理論を大きく塗り替えるものになる。
将来的に気候変動で海面がさらに上昇しない限り、バミューダ諸島はこの未知の構造に守られながら、大西洋にその姿を留め続けることだろう。
References: Onlinelibrary.wiley.com[https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2025GL118279] / Mysterious Structure Identified Beneath Bermuda Could Explain Its Weird Geology[https://www.sciencealert.com/mysterious-structure-identified-beneath-bermuda-could-explain-its-weird-geology]











