ブラジルで「カボチャヒキガエル」の新種を発見
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 ブラジル南部の山岳地帯で、体長1cmほどの小さなオレンジ色のカエルが、新種として認定された。

 見た目や体色は、「カボチャヒキガエル」として知られるBracycephalus(ブラキケファルス)属の特徴を備えているが、詳しい形態比較や遺伝子解析、鳴き声の分析を通じて、新種であることが明らかになったのだ。

 このカエルはブラキケファルス・ルライ(Brachycephalus lulai)と名付けられた。

 ごく限られた山岳地帯にのみ生息する種の発見は、ブラジル南部の雲霧林の高い生物多様性を物語っている。

 この研究成果は、学術誌『PLOS ONE[https://doi.org/10.1371/journal.pone.0334746]』(2025年12月10日付)に掲載された。

体長わずか1cmのオレンジ色をした新種のカエル

 この新種が発見されたのは、ブラジル南部・大西洋岸のサンタカタリーナ州北東部にあるキリリ山脈。

 その標高750m以上の高地に広がる雲霧林の中でも、約8平方kmというごく狭い範囲の落ち葉の中が、このカエルの生息場所だという。

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 過去7年間にわたり、ブラジルの研究者たちはこの地域に生息するブラキケファルス属の個体群を網羅的に調査してきた。今回見つかった新種は、その過程で発見されたものである。

 鮮やかなオレンジ色の、ひときわ目立つ体色が特徴で、大きさはオスが8.9~11.3mm、メスが11.7~13.4mmと、メスの方が一回りほど大きくなる。

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独特の鳴き声が新種特定の決め手に

 サンパウロ州立大学(UNESP)の生物学者で、本研究の共著者であるマルコス・R・ボーンシャイン博士は、この発見について次のように語っている。

この新種は、多くの特徴が組み合わさっている点で、他に類を見ない独特の存在だと言えるでしょう。

中でも際立っているのは、オレンジ色の体色と、鳴き声の「広告音(オスが自分の存在を周囲にアピールする鳴き声)に見られる特徴です。1つの音節に、4つのパルスが含まれているのです

 この種は非常に体が小さく、落ち葉の中に隠れて見つけにくいが、オスがメスを呼ぶための鳴き声には、他の近縁種とは異なる特徴があったのだ。

 研究者たちは、このオスの鳴き声を手がかりに個体の位置を特定した。一方で、鳴き声の目立たないメスについては「無作為に」採集されたという。

 研究室に戻った研究チームは、採集した標本を慎重に分析し、遺伝子配列解析や形態学的研究を行って、近縁種との比較を進めた。

 その結果、チームはこのカエルをカボチャヒキガエルの新種と判断し、学名を「Bracycephalus lulai」と命名した。

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近縁種には生息が脅かされている種も

 このうち種小名にあたる「lulai」は、ブラジル大統領のルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァにちなんだものだという。ボーンシャイン博士は、この命名の理由についてこう説明する。

この献名を通じて、私たちは大西洋岸の森林全体、そして特に高い固有性を有しているブラジルの小型カエル類に焦点を当てた、保全活動の拡大を後押ししたいと考えています

 新種の生息域は狭いものの、その環境は比較的手つかずの状態が保たれており、研究者らは保全状況については「軽度懸念」に相当するとしている。

この新種は、アクセスが非常に難しい、よく保存された森林に生息しています。そのため、絶滅の危機にさらされているわけではありません。

絶滅の脅威にさらされていない数少ないブラキケファルス属の1種であり、私たちにとっては非常に心強いことです

 だがサンタカタリーナ州には、より深刻な絶滅危機にある近縁種のカエルも存在している。

 牛の放牧や観光のための森林伐採、採掘、山焼き、森林伐採といった継続的な生息地の破壊のほか、外来侵入植物による生息環境の変化から、彼らを守るための保護計画が不可欠なのだ。

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地域の生物多様性を保全する取り組みが不可欠

 ボーンシャイン博士にとって、今回の発見はブラジル大西洋岸森林の驚異的な生物多様性を浮き彫りにするものだ。

 彼はまだ学生だった1988年に、ブラジル南部で初めてブラキケファルス属の種を発見した。それ以来、この地域ではこの属の22種が発見されているそうだ。

これはおよそ1年半に1種の新種が発見されている計算になります。

ささやかな最初の発見から、科学がどれだけ進歩してきたかを目の当たりにできるのは、大きな喜びです。

しかし、既にすべての発見がなされたと決めつけるべきではありません。今後10年から15年の間に、ブラジル南部では、この驚くべき小さなヒキガエル類が、さらに8種から10種ほど記載される可能性があると私は考えています

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 現在、研究者らは、サンタカタリーナ州において「キリリ山脈野生生物保護区」の設立を提唱し、政府との協議が進められている。

 これは政府が私有地を買い上げることなく、この地域特有の生物多様性を守るという、連邦レベルでの現実的な解決策を提示するものだ。

ブラキケファルス属のカエルのさらなるサンプリングは、種内変異への理解を大きく深めると同時に、種の境界の見直しにも貢献すると期待されます。

一方で、現地での野外調査を支える資金の不足や、一部の山岳地帯へのアクセスの難しさは、サンプリング数を増やす上で依然として大きな障壁となっています。

場合によっては、密林の中に何kmもの調査用トレイルを切り開いて、ようやく調査が可能になることもあるのです

References: New Species Of Tiny Pumpkin Toadlet Is The Size Of A Pencil Tip, And We Cannot Cope[https://www.iflscience.com/new-species-of-tiny-pumpkin-toadlet-is-the-size-of-a-pencil-tip-and-we-cannot-cope-81853] / new species of tiny orange frog discovered in Brazil's cloud forests[https://phys.org/news/2025-12-species-tiny-orange-frog-brazil.html]

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