これは珍しい!オーストラリアでピンク色のカモノハシが発見される
ピンク色のカモノハシ Image credit:Cody Stylianou/Youtube

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オーストラリアのビクトリア州で、ピンク色をしたカモノハシが発見された。地元の釣り人が撮影した映像には、水面を泳ぐ姿が収められている。

 カモノハシは、哺乳類なのに卵を産んだり、電気を感じるクチバシを持っていたりと、不思議な特徴を持つ動物だが、今回はその愛らしい色合いで注目されたようだ。

 専門家の分析によれば、ピンク色の理由はアルビノや白変種といった色素の欠乏ではなく、生まれつきの珍しい色のバリエーションが極端に現れたものだという。

思わず二度見!ピンク色のカモノハシを釣り人が発見

 ビクトリア州に住むコーディ・スティリアノウさんは、州南東部のギプスランドにある川で釣りをしていた際、水面近くを動く奇妙な影を見つけた。

 最初は巨大なマスが泳いでいるのかと思ったが、その動きは魚とは明らかに違っていた。

 不思議に思ってスマホを構えると、水面に顔を出したのはなんとピンク色のカモノハシだった。

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 スティリアノウさんは、実は数年前にも同じ地域で、この個体によく似た特徴を持つ、もっと小さなピンク色のカモノハシに遭遇したことがある。

 今回目撃した動物は、数年を経て年をとり、かなり大きく成長した当時の個体と同じであると彼は考えている。

 ピンキー(Pinky)と名付けられたこのカモノハシは、クチバシと足がピンク色をしていた。

 スティリアノウさんは、日当たりの良い場所を泳ぐ姿を15分ほど観察し、その様子を動画に収めることに成功した。

 同じ河川系で何匹ものカモノハシを見てきたスティリアノウさんも、数年の時を経てたくましく成長した姿を見せてくれたピンキーの姿には、深く感動したという。

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アルビノや白変種ではなく、個性の1つ

 なぜこのカモノハシ「ピンキー」はピンク色をしているのか?

 オーストラリア・カモノハシ保護団体の責任者であるジェフ・ウィリアムズ氏によると、カモノハシの体色にはもともと大きな個体差があり、今回の個体は色が極端に薄いグループには入るものの、アルビノや白変種といったメラニン色素欠乏の状態には該当しないという。

 これは色彩変異と呼ばれるもので、人間にも髪の色や肌の質感に違いがあるのと同じように、個性の1つだという。

 ウィリアムズ氏は、遺伝的な偏りによって時として極端な特徴を持つ個体が生まれることがあり、それは人間でいうところのそばかすが多い人がいるのと同じような現象だと説明した。

 また、環境DNA分析などを行う野生動物生態学者、ジョシュ・グリフィス氏は、カモノハシは川の生態系において自分を食べる天敵がほとんどいない頂点捕食者であるため、たとえピンク色で目立ったとしても、襲われる危険性は低く安全面での問題はないと分析している。

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哺乳類なのに卵を産む。カモノハシという不思議な生き物

 カモノハシは、哺乳類でありながら卵を産む単孔類(たんこうるい:別名、カモノハシ目)という非常に珍しいグループに属している。

 その体には、カモのようなクチバシやビーバーのような尻尾など、いくつもの異なる動物を繋ぎ合わせたような特徴が備わっており、まさに動物界の珍獣だ。

 例えば、クチバシには獲物が動くときに発する微弱な電気を感じ取るセンサーがあり、濁った水の中でも目を使わずに獲物を正確に探すことができる。

 大人になると歯が完全になくなり、代わりに硬い角質でできた板を使って獲物をすり潰して食べる。

 また、足には水かきがあって泳ぎが得意だが、オスの後ろ脚には長さ15mmほどの鋭い蹴爪(けづめ)が生えており、ここから毒を出す

 この毒は主に繁殖期のオス同士が縄張りを争う際に使われるものだが、人間が刺されると、数ヶ月も激痛が続くほど強力なものとして知られている。

 寿命は野生環境では12年から15年ほどだが、天敵のいない飼育下では20年以上生きることもある。

 2020年の研究では、体内の蛍光物質によって、吸収した光(紫外線など)を異なる色(緑、赤、青など)の光として再放出する「生物蛍光」をすることも明らかになった。

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絶滅の危機を乗り越えて個体数は回復傾向に

 現在、カモノハシは国際自然保護連合(IUCN)によって、絶滅の恐れがある準絶滅危惧に指定されている。

 1990年代頃まで、カモノハシの数は大幅に減少していた。これは、ヨーロッパからの入植による水路への影響が顕著になり、河川の流れが乱されたり水路沿いの自生植物が伐採されたりしたことが原因だ。

 特にビクトリア州では個体数の減少が続いており、環境の変化に非常に敏感な動物として保護が急がれている。

 幸いなことに、近年の植樹プログラムや河川環境の改善によって、一部の地域では個体数が回復しつつある。

 ウィリアムズ氏は、まだ油断はできないものの、各地で行われている調査の結果からは個体数が戻ってきている明るいニュースも届いていると語っている。

 数年前から厳しい自然界を生き延び、大きく成長した姿を見せてくれたピンキーのような個体がのびのびと泳げる環境を守ることは、カモノハシという種全体を未来へつなぐことにもなるだろう。

References: Pink platypus spotted in Gippsland far from a monochrome monotreme[https://www.theguardian.com/australia-news/2025/dec/23/pink-platypus-spotted-in-gippsland-victoria] / Rare pink platypus spotted in East Gippsland river by Melbourne fisherman[https://www.abc.net.au/news/2025-12-20/story-rare-albino-pink-platypus-found-in-east-gippsland-river/106106194]

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