謎に満ちた恒星間天体「3I/ATLAS」が2025年12月19日、地球から約2億6870万kmの距離に最接近した。
3I/ATLASは彗星である可能性が高いと考えられており、現在は非常に特殊な軌道を描きながら二度と太陽系に戻ることなく宇宙の彼方へと旅を続けている。
この不思議な訪問者の可能性について、ハーバード大学のアヴィ・ローブ博士は驚きの構想を提唱した。
3I/ATLASのような恒星間天体を、高速の乗り物として利用しようというのだ。かつての探査機では数万年を要した星間空間への旅も、3I/ATLASの凄まじいスピードを借りれば大幅に短縮できるかもしれない。
地球に最接近し、ただ去っていった3I/ATLAS
3I/ATLASと地球との遭遇は、多くの人が期待したような劇的な展開にはならなかった。
以前から3I/ATLASが異星人の宇宙船であるという大胆な説を唱えてきたハーバード大学の天文学者、アヴィ・ローブ博士は、「3I/ATLASは地球を無視している［https://avi-loeb.medium.com/3i-atlas-ignores-earth-2e2c00682bf0］」と題したブログ記事の中でその状況を嘆いている。
地球に最接近した際、3I/ATLASは特別な行動をとることなく、ただ通り過ぎていった。
異星人に会えるという期待は薄れてしまったが、一方で、ローブ博士は続く文章で興味深い視点の転換を見せている。
3I/ATLASのような天体が、太陽系外を探査しようとする将来の試みに役立つ可能性があると提案したのだ。
3I/ATLASのような恒星間天体を高速の乗り物として利用
現在、NASAの探査機であるボイジャー1号とボイジャー2号は、地球の音や画像、音楽、メッセージを収めたタイムカプセルであるボイジャーのゴールデンレコードを積み、太陽系の外へと向かっている。
これらの記録は、地球外知的生命体に向けた人類からのメッセージであり、本質的には恒星間空間に放たれた瓶詰めの手紙のような役割を果たしている。
3I/ATLASのような風変わりな訪問者は、その凄まじい速度のおかげで、人類の宇宙船を太陽系外へと効率よく運んでくれる可能性があるとローブ博士は主張する。
秒速約60kmで移動している3I/ATLASに便乗することで、通常なら西暦3万年頃までかかる恒星間空間への到達を、西暦1万年頃へと大幅に早められるというのが博士の持論だ。
猛スピードで未知の領域へ到達できる恒星間天体
打ち上げから半世紀近く経ったボイジャー1号と2号は、ようやく太陽圏の境界に到達したばかりである。
物体が太陽の重力の影響を受けなくなるオールトの雲を越えて、真の恒星間空間に入るには、ボイジャー1号であってもさらに2万8000年かかる可能性がある。
ここ10年間の恒星間天体の発見は、人類が恒星間空間にタイムカプセルを送り出すための新たな機会を提供しているとローブ博士は語る。
メッセージを3I/ATLASのような天体に取り付けるために、博士は高出力レーザービームを使用してメッセージを刻む方法や、天体の表面に装置を取り付けるための迎撃ミッションを設計することを提案した。
恒星間天体に人類のメッセージを託す未来
3I/ATLASは2026年3月16日に木星から約5360万kmまで接近する予定であり、配置された宇宙船を使用してさらに詳しく観察する新たな機会が与えられている。
次に恒星間天体が太陽系内を猛スピードで通り抜けるのをいつ観察できるかは誰にもわからないが、ローブ博士によれば、私たちはその機会を逃すべきではないという。
天の川銀河で人類が尊敬を得るためには、自らの手で恒星間空間へと進出する努力をしなければならないとローブ博士は主張している。
博士自身、機会があれば自分の遺体をこうしたプロジェクトに託し、恒星間空間まで運んでもらいたいとさえ願っているそうだ。
References: Medium.com［https://avi-loeb.medium.com/3i-atlas-ignores-earth-2e2c00682bf0］ / We Could Hitch a Ride to Unknown Frontiers on Super-Fast Interstellar Objects Like 3I/ATLAS［https://futurism.com/space/hitch-ride-unknown-interstellar-object］ / Science.nasa.gov［https://science.nasa.gov/blogs/parker-solar-probe/2025/12/19/nasas-parker-solar-probe-observes-interstellar-comet-3i-atlas/］
