リアル・ターミネーターか。カンフーの蹴り技を完璧にこなすヒューマノイド「T800」が量産へ
Image credit:EngineAI T800

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 映画『ターミネーター』に登場するサイボーグと同じ名前を持つヒューマノイドが、現実の世界に現れた。

 中国のスタートアップ企業であるEngineAI社が開発した「T800」は、産業用としての量産化が目前に迫っている。

 武術の達人のように鋭いカンフーの蹴り技を繰り出し、人間を相手にスパーリングまでこなす身体能力は、見る者を圧倒する。

 10億元、日本円にして約213億円という巨額の資金が投じられたこのプロジェクトは、SFの世界を実用的なテクノロジーへと変えようとしている。

カンフーの達人のような最新型ヒューマノイド

 2023年に中国の深センで設立されたEngineAI[https://www.engineai.com.cn/product-t800]社は、最新のヒューマノイド(人型ロボット)であるT800を公開したことで、世界のロボット業界に大きな衝撃を与えた。

 T800は「常識を覆すために生まれた」というキャッチコピー通り、公開された映像には空中高く跳び上がってハイキックを放つなど、これまでのロボットの常識を超えた動きが収められている。

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 その動きがあまりにも滑らかだったため、インターネット上ではコンピューターグラフィックスによる偽物ではないかと疑う声も上がったほどだ。

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CEOを蹴り飛ばして証明した驚異的な身体能力

 こうした疑惑を打ち消すため、EngineAI社の最高経営責任者である趙同陽(Zhao Tongyang)氏は、自らがT800に蹴り飛ばされる衝撃的な動画をSNSに投稿した。

 開発の責任者が自ら体を張って性能を証明する姿は、自社製品に対する並々ならぬ自信の表れといえる。

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 T800は身長1.73m、バッテリーを含めた重量は75kgという、成人男性に近い体格を持っている。

 機体には航空宇宙分野で使用されるマグネシウムとアルミニウムの合金が採用されており、過酷な環境に耐える頑丈さと、機敏に動くための軽さを両立させた。

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アスリートに匹敵するパワーと高度な冷却システムを搭載

 このヒューマノイドには合計で43箇所の自由度(関節の動かせる方向)が備わっている。

 特に関節部分には最大450Nm(ニュートンメートル)という非常に強い力、トルク(関節を回す力の強さ)を生み出す機構が組み込まれており、人間のアスリートと同等、あるいはそれ以上の瞬発力を発揮できる。

 手には片方だけで7箇所の自由度があり、5kgまでの物体を器用に扱うことが可能だ。

 さらに脚部にはアクティブ冷却システムが搭載されているため、激しい動きを続けても熱がこもりにくく、重労働を長時間継続できる設計になっている。

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高性能なAIの脳と全固体電池で過酷な現場作業にも対応

 動力源には次世代の電池として注目される全固体電池(液体を使わない安全で高密度なバッテリー)が採用されており、モジュール式(部品交換が容易な方式)で簡単に交換できる仕組みだ。

 1回の充電で最大4時間の高強度な作業が可能となり、将来的にはバッテリーの性能向上にも柔軟に対応できる。

 周囲の状況を把握するための目にあたる部分には、360度をスキャンするライダー(LiDAR:レーザーで周囲を測る装置)が搭載されている。

 レーザー光で周囲の距離を測るこの装置と、米エヌビディア(NVIDIA)社の高性能なAIユニットを組み合わせることで、1秒間に275兆回の計算ができる275TOPSという処理能力を実現し、一瞬で障害物を避ける判断を下せる。

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2026年の出荷に向けて量産が開始される

 T800は現在、産業用としての活用が優先されており、工場での部品取り付けといった反復作業を主な任務としている。

 そのため、現時点ではタオルを畳んだり針に糸を通したりといった繊細な作業は得意ではない。

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しかし、テスラのオプティマス(Optimus)やボストン・ダイナミクスのアトラス(Atlas)といった強力なライバルがひしめく中で、EngineAI社は独自の立ち位置を築こうとしている。

 すでにメルセデス・ベンツなどの大手自動車メーカーがヒューマノイドの導入を進める中、T800の量産モデルは2026年半ばに出荷が開始される予定だ。

 このプロジェクトには黄浦江資本(Huangpu River Capital)や河南投資グループといった複数の投資機関から、合わせて10億元(約213億円)を超える資金が寄せられている。

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References: Engineai.com.cn[https://www.engineai.com.cn/product-t800] / Watch: T800 humanoid kung fu kicks its way to mass production[https://newatlas.com/ai-humanoids/engineai-t800-humanoid/]

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