うれしいニュース。絶滅危惧種の鳥「タカヘ」のペアに待望のヒナ誕生
Image by Istock <a href="https://www.istockphoto.com/jp/portfolio/leizhu?mediatype=photography" target="_blank">Lei Zhu</a>

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 ニュージーランドから心温まるニュースが届いた。自然保護区で暮らす、繁殖能力がないと思われていた絶滅危惧種の飛べない鳥「タカヘ」のペアに、奇跡的にヒナが誕生したのだ。

 現在、世界にわずか500羽ほどしか残っていないこの希少な鳥にとって、新しい命の誕生は種を絶滅から守るための大きな希望となる。

 恐竜のようにたくましく育つヒナの様子、そしてかつて一度は絶滅したと考えられていたタカヘの数奇な運命について詳しく見ていこう。

子供ができないと思われていたタカヘのペアにヒナが誕生

 ニュージーランドの首都、ウェリントンの中心部から車で10分ほどの場所にある、完全にフェンスで囲まれた世界最大の都市型自然保護区ジーランディアで、驚くべき発見があった。

 2025年11月、保護区内の茂みでタカヘのヒナが発見されたのだ。

 今回ヒナを誕生させた父親のベンディゴと母親のワイターは、2年前に子供を作ることができないペアとしてこの保護区にやってきた。

 過去の営巣も失敗に終わっていたため、スタッフはこのペアから新しい命が生まれることを全く予想していなかった。

 ところが2025年10月にワイターが給餌場から姿を消したことで状況が一変した。

 不審に思ったスタッフが茂みにトレイルカメラを設置したところ、そこには元気に鳴くヒナの姿が映っていたのだ。

 安全を確保するためにヒナの存在はこれまで厳重に隠されてきたが、ようやくその愛らしい姿が公開された。

 生後約7週間のヒナは、ふわふわとした黒い産毛に覆われ、不釣り合いなほど大きな白い足と爪、そして先端がわずかに白い黒いくちばしを持っている。 

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一夫一妻制で強い絆を結ぶ飛べない鳥「タカヘ」

 タカヘはニュージーランド固有の飛べない大型の鳥で、ツル目クイナ科に属し、全長は50~60cm、体重は2~3kgほどで、ニワトリくらいの大きさがある。

 鮮やかな青と緑の羽をまとい、頑丈な赤いクチバシと脚を持つ。その姿を正面から見ると、まるで竹馬に乗った地球の模型のようにも見える独特な姿をしている。

 オスとメスは雌雄同色(しゆうどうしょく)で、オスが若干大きい程度で見た目はほとんど変わらない。

 タカヘは非常に古い歴史を持つ鳥で、見つかっている化石は少なくとも更新世(約258万年前から約1万年前までの期間)までさかのぼり、当時からその姿はほとんど変わっていない。

 かつてニュージーランドには陸生の哺乳類がいなかったため、タカヘは天敵を恐れることなく地上で進化し、羽が退化して空を飛ぶ能力を失った。

 また、一度ペアを組むと生涯にわたって同じ相手と連れ添う一夫一妻制という強い絆を持っている。

 そのため、繁殖が難しいと判断されたペアであっても、無理に引き離して別の相手と組ませることはせず、穏やかに暮らせる場所へと移される。

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一度は絶滅宣言が出されたが、再発見される

 かつて南島全体に広く生息していたタカヘだが、19世紀以降、人間が持ち込んだオコジョやイタチ、ネコといった哺乳類による捕食に加え、タカヘの主食である高山植物の草をシカに奪われたことで絶滅の危機に追い込まれた。

 1898年に鳥類学者により絶滅が宣言されたが、1948年にマーチソン山脈の奥深くで劇的に再発見され、それ以来、国を挙げた保護活動が続いている。

 保護活動が始まった当初、卵を肉食動物から守るために人工孵化が行われた際、飼育係が親鳥に似せた「赤いクチバシ付きの靴下」を手にはめてヒナにエサを与えたというエピソードは有名だ。

 これはヒナが人間に慣れすぎないようにするための工夫だった。

 また、先住民マオリの一部族であるナイタフの人々にとって、タカヘは祖先と共に暮らしてきた大切な鳥であり、その羽毛をマントに織り込むほど神聖な存在として扱われてきた。

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恐竜のような成長期と未来への希望

 ジーランディアの保全・復元マネージャーであるジョー・レディントン氏は、今回の発見をまさに奇跡だと語る。

 子供ができないと診断され、繁殖を期待されていなかったベンディゴとワイターだが、実の子を授かったことで手本のような立派な親ぶりを見せ、ヒナを溺愛している。

 ヒナは現在、脚ががっしりと太くなり、クチバシも大人に近い形へと変化する成長期を迎えている。その姿は産毛の残る体に立派な骨格が備わり、まるで恐竜のようでもある。

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 ニュージーランドでは、2050年までに被害の多い外来の肉食動物を一掃しようという大きな目標を掲げている。

 今回の誕生は、適切な保護環境があれば、繁殖を諦めていたペアであっても新しい命を育めるという、保護活動への強い自信につながった。

 生後3ヶ月になると、ヒナは大人のタカヘに近い姿へと成長し、個体識別のための足環を付けられる予定だ。

 ヒナの性別はまだ判明しておらず、成長してから血液検査でDNAを調べたり、大人になってからの行動を観察したりすることで、いずれ明らかになるという。

生涯の伴侶と共に困難を乗り越えて誕生したこの小さな命は、絶滅の危機にあるタカヘにとって、明日へとつながる輝かしい希望の光となっている。 

References: akahē pair thought to be infertile hatch chick at Zealandia[https://www.rnz.co.nz/news/national/582469/takahe-pair-thought-to-be-infertile-hatch-chick-at-zealandia] / ‘Miracle’ of Zealandia: chick is born to rare takahē pair thought to be infertile[https://www.theguardian.com/environment/2025/dec/21/takahe-chick-rare-born-new-zealand]

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