2035年、ロボット犯罪が当たり前に?ヨーロッパ警察組織が予測するディストピアの正体
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 2035年、あなたの隣にいるロボットは敵か、味方か。ヨーロッパ連合(EU)の専門機関である欧州警察機構が、10年後の未来にロボットに関連する犯罪が蔓延する可能性があるという衝撃の報告書をまとめた。

 仕事を奪われた人々の怒りが暴動を呼び、ハイテクを悪用したテロが日常を脅かす。そんなSF映画のような暗黒の世界がやってくるかもしれないと、警察当局が本気で警鐘を鳴らしているのだ。

 さらに興味深いのは、それに対抗するために未来の警察が手にすると予測されている特殊兵器の存在だ。

 一体どんなディストピアが待っているのか?欧州警察機構の専門部門が導き出した、恐ろしくも目が離せない近未来の予測を見ていこう。

 この予測はEuropol’s Innovation Labの報告書『The Unmanned Future(s)[https://www.aanda.org/articles/aa/full_html/2025/12/aa56911-25/aa56911-25.html]』(2025年12月10日付)に掲載された。

自動化社会の限界とディストピアの幕開け

 オランダのデン・ハーグに本拠を置く「欧州警察機構(エウロポル)」は、1999年に本格稼働したヨーロッパ連合(EU)の専門機関だ。この組織の内部には、最新技術が将来どのように犯罪に悪用されるかを先回りして予測する専門部門「イノベーション・ラボ(Innovation Lab)」が存在している。

 この部門は、警察官が現場で使える新しい捜査ツールの開発を行ったり、世界中の専門家や企業をつないでハイテク犯罪への対策を練ったりする、いわば「未来の犯罪を予測する研究所」だ。

 2025年12月10日、イノベーション・ラボは、自動化が進みすぎることで、10年後の社会構造そのものが崩壊しかねないという予測を報告書[https://www.aanda.org/articles/aa/full_html/2025/12/aa56911-25/aa56911-25.html]にまとめた。

 これは、決してSFの話ではなく、警察機構の専門家たちが科学的な分析に基づいて導き出した、現実味のある未来のシナリオで、まさに「ディストピア」そのものだ。

 ディストピアとは、理想郷(ユートピア)の反対で、技術の暴走や格差によって人間が苦しむ暗黒の未来像を指す。

 報告書によると、2035年にはロボットがあらゆる場所で活躍し、人間の仕事のほとんどをこなすようになると予測されている。

 だが、人々はそれを歓迎せず、機械に職を奪われた怒りを爆発させる恐れがあるという。

 この不満はやがて抗議活動や暴動へと発展し、街中でロボットが人々によって打ちのめされるといった凄惨な事態まで想定されている。

 また、介護ロボットが誤った薬を投与するといった小さな失敗が、瞬く間に国家的なスキャンダルや大衆の激しい反発へと発展する恐れもあるという。 

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犯罪者の手に落ちたロボットとドローンがもたらす新たな脅威

 エウロポルによる空想のような予測に見えるかもしれないが、犯罪者がロボットを悪用する手口は非常に具体的で恐ろしい。

 AIを搭載した社会介護ロボットがハッキングされ、個人のデータを盗み取られたり、判断力の鈍った高齢者や子供が意のままに操られたりする可能性があると警告されている。

 また、テロ組織や組織犯罪グループは、現在ウクライナの戦場でも実際に投入されている「AI誘導型のドローン」を悪用するだろうと考えられている。

 人間が操縦しなくてもAIが自律して目標へ飛んでいくクワッドコプターの群れを使い、電力網や水道施設、あるいは刑務所への大規模な攻撃を仕掛けるかもしれないという予測だ。

 すでに安価なドローンが犯罪に使われている現状を考えると、こうした軍事レベルの技術が犯罪者の手に渡り、攻撃の規模が拡大する未来は決して絵空事ではない。

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未来の警察が導入する「特殊装備」と新たな捜査法

 こうした事態に備え、世界中の警察は信じられないほどのスピードで変化に適応しなければならないとされている。

 将来の警察は、人間の容疑者だけでなく、その共犯者としてのロボットも捜査の対象にする必要が出てくるだろう。

 自動車事故が発生した際、それが単なるシステムの不具合なのか、それとも外部からのサイバー攻撃だったのかを見極める高度な専門性が求められるのだ。

 さらに、警察の装備も一変すると予測されている。

 ドローンに対抗するための兵器や、物体を瞬時に凍結させる光線銃のような特殊な装備の導入すら想像されている。

 報告書[https://www.europol.europa.eu/cms/sites/default/files/documents/The-Unmanned-Future-Report.pdf]は、暴走したドローンを捕らえるために、タンポポの綿毛のように空中でパッと広がり、対象を絡めとる超小型の網(ナノネット手榴弾)を放つ装置まで描いている。

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すでに始まっている不穏な兆候と機械化に抗う人類の未来

 これらの話は非常に遠い未来の出来事のように聞こえるかもしれないが、実は警告の兆候はすでに私たちの身の回りに現れている。

 ドローンによる薬物や、驚くことにカニの足まで密輸する事例が報告されているし、交通法規を無視する自動運転車の問題も起きている。

 過去にはチェスロボットが対戦相手の子供の指を骨折させた事件もあり、ロボットによる混乱はすでに初期段階に入っていると言えるだろう。

 ただし今回の報告書は規制が及ばない最悪のシナリオを想定したものであり、一部は誇張されている可能性もある。

 しかし、企業が可能な限り多くの人間を機械に置き換えていく流れは予測されており、多くの人々がそれを黙って受け入れることはないだろう。

 技術の進歩がもたらすのは利便性だけではない。社会を根底から揺るがす大きな摩擦が生じると予測されているのだ。

References: Aanda[https://www.aanda.org/articles/aa/full_html/2025/12/aa56911-25/aa56911-25.html] / Europol.europa.eu[https://www.europol.europa.eu/cms/sites/default/files/documents/The-Unmanned-Future-Report.pdf] / Robot Crime Could Be Rampant by 2035, Law Enforcement Warns[https://www.vice.com/en/article/robot-crime-could-be-rampant-by-2035-law-enforcement-warns/]

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