中国・深セン市にあるショッピングモールで、男子トイレの個室のドアに掲示された「喫煙するとガラスが透明になります」という表示が注目を集めている。
後を絶たないトイレでの喫煙に業を煮やした施設側が、煙を感知すると透明になるガラスをドアにはめ込んだのだ。
もし個室でうっかり一服してしまうと、ガラスがスケスケになって、用を足している姿が外から丸見えになってしまう。
同時に大音量での警告が鳴り響き、周囲の注目まで集めてしまうという、「トイレでタバコを吸ったら公開処刑」のペナルティが課されるシステムなのである。
煙を感知するとドアのガラスが透明になってしまうトイレ
深セン市羅湖区にある「水貝国際センター」地下1階の男性用トイレ。ここには、こんな警告が書かれた看板が設置されている。
深セン経済特区の喫煙管理条例に基づき、水貝国際センターは全面禁煙ビルとなっています。
本施設のトイレにはスマート感知型禁煙システムが導入されています。トイレ個室内で煙が検知された場合、ガラスは自動的に完全な透明状態へ切り替わり、同時に警報音が作動します。
皆さまにお願いです。トイレ内での喫煙は絶対におやめください。ご理解とご協力をお願いいたします
さらにドアには、ダメ押しの「公開処刑されないように」との警告文も。
喫煙するとガラスが透明になります!
我慢できずにタバコを吸ってしまい、外から撮影されてネットの有名人にならないように!
このトイレのドアには特殊なハロゲン化銀の化合物を含んだガラスが使用されていて、通常はプライバシー保護のため曇りガラスになっている。
だが、個室内でたばこの煙と熱を感知すると、ガラスの分子が反応して瞬時に曇りガラスから透明ガラスに変化。個室内で喫煙している人の動きが外から丸見えになるんだそうだ。
それと同時に大音量で、こんなアナウンスが流れるという。
受動喫煙防止条例の規定により、ここは禁煙が義務づけられた公共の場所です。あなたと他の人の健康のために、ここで喫煙しないでください
このタバコを吸うと透明になってしまうドアは、今のところ深セン市の水貝国際センターと水貝金座の2カ所に設置されているらしい。
なお、すべてのトイレの個室に設置しているわけではなく、まだ試験導入の段階のようだが、利用者の反応次第では、今後増える可能性もありそうだ。
トイレでの喫煙をやめさせるための苦肉の策
2014年に施行された深セン市の喫煙管理条例は、公共の屋内場所・職場・交通機関内などでの全面禁煙を実施するものである。
今回のようなトイレの個室内で煙感知→ガラスの透明化という仕組みは、この条例に基づいた禁煙対策の一環として導入された。
個室内での喫煙は外からではわかりにくく、注意喚起やスタッフの巡回をいくら行っても限度があり、寄せられる苦情の多さに施設側も対応に苦慮していた。
水貝金座の運営責任者、趙麗氏は次のように語っている。
トイレ内での喫煙は、以前から頭の痛い問題でした。そこで、技術の力で文明的な注意喚起を行い、公共の場でタバコを吸わないようにしてもらう仕組みを思いついたのです
趙氏によれば、地下1階は買い物客だけでなく、全国各地から来る業者や観光客も頻繁に訪れる。そのため同フロアのトイレの利用率も相対的に高いという。
水貝金座では、このシステムを既に4か月以上試験運用しており、実際の効果も一般の反応も比較的良好とのこと。これを受け、施設全体への展開も計画しているそうだ。
この「タバコを吸うとドアが透明になるトイレ」は、内外で大きな注目を集め、さまざまな意見が寄せられている。
- やっと喫煙者対策に効果的な手段ができたらしい
- 中国全土の公衆トイレに早急に広げるべきだ!
- でも、やっぱりプライバシーが心配だよね
- 完全に透明にする必要はないと思う。ドアの下の一部だけ透明にして、脚が見えれば中に人がいるか分かる程度でいいんじゃないか
- これは防火対策とはほとんど関係なくて、公衆トイレの個室で喫煙している人を簡単に特定して、恥をかかせることが目的だと思う
- 外からドアの下や隙間に向かって煙を吹きかけたら、それでも透明になるのかな?
- トイレのドアに隙間がないと知ったときのアメリカ人あるある(アメリカの公共トイレのドアには隙間がある)
- 中国の男性用トイレでの喫煙は本当にどこにでもある。入った瞬間にむせることも珍しくない。これはすごく良いアイデアだと思う
この装置を製造しているメーカーによると、最近は大量に注文が入っており、主に深セン市内から「2~300セットの発注があった」とのことだ。
プライバシーが侵害される可能性は?
だがタバコを吸わなくても、誤作動によってプライバシーが侵害される可能性があるのでは?という点は、利用者にとっては気がかりなところである。
メーカー側は、装置は煙に対しては比較的敏感だが、例えば香水などに反応して誤作動することはないと説明している。
となると電子タバコはどうなのか?最近では電子タバコを吸っている人が多いが、「煙」のように見えるのは実際には水蒸気であり一酸化炭素は含まない。
水貝金座の趙氏は、現時点で誤作動の報告はまだないという。むしろ多いのは、喫煙者がドアの注意書きを見落とし、火のついたタバコを持ったまま個室に入ってしまい、警報が鳴るケースだという。
プライバシーの問題はないと考えています。警報の音が少し大きいので、数秒間は気まずいかもしれません
法的なリスクはある
とはいえ、万一プライバシーの侵害が起きた場合、施設全体が法的な責任を問われるリスクがないわけではない。
法律の専門家によれば、トイレの個室は「私的空間」に当たり、たとえ喫煙という違反があっても、透明化による可視化は権利の侵害と判断される可能性がある。
ドアの前に貼られた警告表示は、施設側の責任をある程度軽減する要素になり得るが、誤作動や過度な運用があった場合、完全に免責されるわけではない。
トイレの入口に最も近いテナントの店主は、以前はトイレからの警報がよく聞こえ、タバコのニオイも漂ってきていたが、最近は減ったと話しているとのこと。
また、趙氏が把握しているところでは、実際に装置を作動させてしまったことのある人たちの多くは、この対策の趣旨を理解してくれているという。
そういった人たちの中には、トイレではなく外でタバコを吸うようにするなど、これまでの喫煙習慣を改める人も出てきたそうだ。
趙氏は、この「透明ドア」のシステムは、主に「文明的な注意喚起」として機能していると語っている。
タバコを吸わない人は、そのニオイにとても敏感です。公共の場で喫煙しないよう呼びかけることで、マナーを守る喫煙者になってもらえれば、それで私たちの目的は達成できるのです
なお、万が一誤作動したときのために、ドアの内側にはリセットボタンも設置されているそうだ。
References: 广东一商场厕所安装“吸烟会使玻璃变透明”的门,网友吵翻[https://finance.sina.com.cn/roll/2025-12-16/doc-inhaxvcr1345814.shtml?cre=tianyi&loc=6&mod=wlocal&r=0&rfunc=47&tj=cxvertical_wlocal&tr=1045]











