見えない顔が見えてしまう。ビジュアルスノウ症候群とは?
左半分が一般の見え方。右半分がビジュアルスノウ症候群の見え方 Image by Istock

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 ビジュアルスノウ症候群とは、文字通り目の前に雪が降っているような、砂嵐のようなドットがちらついて見える症状を伴う病気である。日本では「視界砂嵐症候群」とも呼ばれ、視覚障がいの一種とされている。

 特に暗いところでは、この砂嵐が顕著に見えるのだそうだ。

 2025年10月に発表された研究で、このビジュアルスノウ症候群の患者は、顔ではない物体にも「顔らしさ」を感じやすいことが判明した。

この研究成果は、知覚心理学の学術誌『Perception[https://doi.org/10.1177/03010066251387849](2025年10月27日付)に掲載された。

視界を砂嵐が覆う「ビジュアルスノウ症候群」

 人間の脳は、周囲の雑然とした情報の中から意味のある形を見つけ出すのが得意である。

 特に「顔」は最優先で処理される対象で、雲や岩、壁の模様の中に顔のようなものを見出す現象は、誰にでも起こりうる。

 だが、ある視覚の症状を持つ人では、この働きがより強く表れることが、新たな研究で示された。

 この症状は英語では「ビジュアルスノウ症候群」、日本では「視界砂嵐症候群」や「小雪症候群」と呼ばれるものである。

 視界全体に、テレビの砂嵐のような細かなノイズが常に重なって見えるのが特徴で、明るさや目を閉じるかどうかに関係なく続く。

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 この症状は目そのものの異常ではなく、視覚情報を処理する脳の働きが過敏になっている状態だと考えられている。

 ビジュアルスノウ症候群の人の視界をふさぐのは、砂嵐状の「ノイズ」だけではない。

 多くの患者が、ブルーフィールド現象や飛蚊症といった、いわゆるエントプティック現象(光源がない暗闇などで、視神経が自発的に振動・励起することで目の中から光や模様が見える内部視覚)も同時に発生している。

 ブルーフィールド現象とは、青空や明るい背景を見たときに、白い点が素早く動いて見える現象で、網膜の毛細血管を流れる白血球が知覚されているものだ。

 また飛蚊症は、硝子体の濁りによって、糸くずや虫のような影が視界に浮かんで見える現象である。

 下の動画を見てもらおう。最初は通常の風景だが、後にビジュアルスノウ症候群の人の視界が再現される。

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 これらはいずれも、健康な人にも起こりうる現象だ。

 しかしビジュアルスノウ症候群では、視覚全体にノイズが加わった状態が続くため、こうした本来は一時的、あるいは気になりにくい見え方が、常に視界の一部として前面に現れることがある。

 下は患者が作った再現映像だが、視界全体に砂嵐のようなノイズが漂い、その上に白い点の動きや黒い影が重なって見える様子が示されている。

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「顔に見える」パレイドリアを知覚する割合が高くなる

 今回紹介された研究では、こうした視覚環境の中で、顔の錯視がどのように知覚されるかが調べられた。

 研究チームは、被験者に日常的な物体や風景の画像を提示し、それがどれほど「顔に見えるか」を評価してもらった。

 その結果、ビジュアルスノウ症候群の人は、対照群に比べて一貫して高い「顔らしさ」を感じる傾向があったという。

 この現象は、いわゆる「パレイドリア」と呼ばれるものである。脳が曖昧な情報の中から意味のある形を補い、特に顔の特徴を見いだそうとするのだ。

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 研究者たちは、ビジュアルスノウ症候群では、常に視覚ノイズが存在することで入力情報が不明瞭になり、脳の補完機能がより強く働く可能性があると考えている。

 その結果、実際には存在しない顔のパターンを見つけやすくなる、というわけだ。

 重要なのは、これは幻覚や妄想とは異なるという点である。

ビジュアルスノウ症候群の人は、見えているものが錯視であることを理解しており、現実との区別が失われているわけではない。

 視覚入力の量や質が変化した状態で、それを解釈する脳の働きが影響を受けていると考えられている。

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 ビジュアルスノウ症候群は、長らく十分に認識されてこなかった症状で、片頭痛などと併発することも多い。

 視界に広がるノイズやブルーフィールド現象、飛蚊症、そしてパレイドリア現象。これらが一度に意識される世界は、外からは想像しにくいものだろう。

 今回の研究は、そうした当事者の体験が、脳の情報処理の特性として説明できる可能性を示している。

 顔を見つけ出す脳の働きは、人間にとって欠かせない能力だ。その感度がわずかに変化するだけで、世界の見え方は大きく変わる。

 ビジュアルスノウ症候群の研究は、脳が視覚からどのように現実を組み立てているのかを理解する手がかりにもなりそうだ。

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視界に違和感があったらまずは眼科の受診を

 もし自分の視界が突然こうなってしまったら、まずは眼科を受診しようとするだろう。だがビジュアルスノウ症候群は、眼科では診断できない場合も多いそうだ。

 なぜならこの症状は目自体ではなく、脳での視覚処理に問題があると考えられているからだ。

 そのため、眼科で行う視力検査や眼底検査などでは、構造的な異常が見つからないことが多く、「異常なし」と言われるケースが少なくない。

 だが、とりあえず眼科を受診することには意味がある。なぜなら、目自体に異常がある可能性を排除できるからだ。

 これは他の症状でも同じで、例えば視野欠損などが起きた場合、緑内障や網膜剥離などの目の疾患の可能性を排除できれば、虚血性視神経症といった全身の健康にもかかわる疾患が見つかる可能性がある。

 もし少しでも視覚に違和感があったり、片頭痛に悩まされていたりするときは、まずは眼科、次に神経内科の受診を検討してみるのがおすすめだ。

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【追記】2026/01/08 :誤字を訂正して再送します。

References: This Rare Syndrome Induces People to See Faces That Don't Exist[https://www.sciencealert.com/this-rare-syndrome-induces-people-to-see-faces-that-dont-exist]

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