2023年4月、メキシコ当局は、「オルメカ文明」時代に建てられた2700年前に建てられたの巨大な人頭の石像を、アメリカから取り戻したと発表した。
以前カラパイアでも「地球の怪物」として紹介したこの遺物は、20世紀初頭に略奪者によって不法にアメリカに持ち出された歴史を持っている。
この像は、異界への扉を意味する「冥界の入口」と呼ばれており、密輸のために25個もの破片に粉砕されていたことがその後の調査で明らかとなった。
100年近い放浪を経て故郷へ戻るまでには、人生を捧げてこの石像を追い続けた考古学者の多大な尽力があった。
冥界の入口と呼ばれるジャガー神を象った石像
メキシコで最も古い主要な文明の一つであるオルメカ文明は、北米における文明の先駆けとなった存在だ。
その象徴ともいえるのが、メキシコ中部のモレロス州にある、チャルカツィンゴ遺跡の第9番目のモニュメントとして知られるこの巨大な石像だ。
それは高さ約1.8m、幅約1.5m、重さは1tを超える大きさで、紀元前800年から400年頃に作られたとされている。
石像に刻まれているのは、オルメカ文明の図像に頻繁に登場するジャガーの神「テペヨロトリ(Tepeyollotli)」の姿だと考えられている。
テペヨロトリは「山の心臓」を意味する名を冠しており、洞窟や地震の神として恐れ敬われてきた。
この石像が冥界の入口と呼ばれる理由は、その中心に位置する巨大な口にある。カクカクとした四角い口の形は洞窟への入口を表現しており、古代メソアメリカの人々にとって洞窟は、現世と死後の世界である冥界を繋ぐ神聖な通路を象徴していた。この口は、神や精霊が現世へと現れる門と考えられていたのだ。
略奪者によって25個に砕かれていた
この石像の歴史は、20世紀初頭に略奪者によって遺跡から不当に切り出された。
運び出しやすくするために略奪者たちは、重厚な石像を25個もの破片に分解され、バラバラの状態でアメリカへと密輸したのである。
本来の姿を失った石像の破片は、その後数十年にわたりアメリカ国内のさまざまな美術館や個人のコレクションを転々とすることとなった。
最終的に、これら25個の破片は、すべてが揃った状態で2023年にコロラド州デンバーにあることが確認され、ニューヨーク市の古美術品追跡班によって確保された。
これにより、長らく故郷から切り離されていた石像は、一つの作品としてようやくメキシコへの帰還を果たしたのである。
生涯をかけて石像を追い続けた考古学者
石像がメキシコの地を再び踏むことができた背景には、考古学者デヴィッド・グローブ氏による生涯をかけた調査があった。
グローブ氏は、アメリカ国内で出所不明のまま「オルメカの作品」として流通していたこの石像が、かつてチャルカツィンゴ遺跡から略奪された「第9番目のモニュメント」と同一であることを最初に突き止めた人物である。
その後、国立人類学歴史研究所(INAH)のマリオ・コルドバ・テリョ氏が、この石像が盗難品であることを正式に立証した。
2008年には、コロラド州の個人コレクターが所有していることを特定し、返還に向けた動きが本格化した。
しかし、この像の奪還に多大な情熱を注いできたグローブ氏は、石像がメキシコに到着するわずか1日前に息を引き取った。
氏が長年追い続けた歴史の断片は、本人の死と入れ替わるようにして故郷へと戻ったのである。
冥界の入口は修復され、再びメキシコのオルテカ文化の象徴に
メキシコへ戻った石像は、INAHの専門家たちの手によって、1年におよぶ精密な修復作業が行われた。
25個に分解されていたため、像に安定感と視覚的な一貫性を取り戻すために現地で修復が進められた。
過去の不適切な補修によるボルトやセメントの跡も一部に残されており、欠損した部分には補強も加えられたが、現在は本来の力強いジャガー神の表情を再び見ることができるようになっている。
メキシコ政府は、不法に持ち出された歴史遺産を救済するために熱心に活動を行っている。
2018年以降、これまでに約1万点ものアイテムが世界中から回収されており、冥界の入口が故郷へ戻ったことは、略奪された文化財が本来あるべき場所へ戻るべきであるという国際的な動きを象徴する出来事となった。
References: Manhattanda[https://manhattanda.org/d-a-bragg-announces-return-of-antiquity-from-the-olmec-civilization-to-the-people-of-mexico/] / Inah.gob.mx[https://www.inah.gob.mx/boletines/autoridades-de-mexico-repatriaran-el-monumento-9-de-chalcatzingo]











