かつて、イギリス・スコットランドの険しい崖のふもとに2年間もひとりぼっちで取り残されていた羊がいた。
「イギリスで最も孤独な羊」と呼ばれたメスのフィオナは、2023年11月に農夫たちの手で救出され、現在はスコットランドの牧場で仲間たちと過ごしている。
そんな彼女に、最高にハッピーな続報が届いた。
長期間の隔離生活で失った社会性を取り戻し、健康管理やダイエットに励んだ結果、健康状態が回復し、双子の赤ちゃんを妊娠したのだ。
崖の下で2年間、ひとりぼっちで取り残されていた羊
フィオナと名付けられたメスの羊が注目を集めたきっかけは、2021年にさかのぼる。
スコットランド北部のハイランド地方、イースター・ロスのバレントア付近で、カヤックを楽しんでいた人物が、険しい崖の下に取り残されている姿を発見した。
ところが、その2年後の2023年に同じ場所を訪れた際にもまだ一頭で取り残されているのが確認され、発見者は驚きとともに救助を訴えた。
サザーランドのブローラに住むジル・ターナー氏が救助を求める署名を立ち上げると、世界中から5万5000以上の賛同が集まった。
公的機関は地形の危険性を理由に救助を見送っていたが、放っておけば命の危険があるとして、民間の有志たちが立ち上がることになった。
有志の農夫たちによる救出作戦
2023年11月、救出作戦を主導したのは、羊飼いでありBBCスコットランドの番組司会者も務めるキャミー・ウィルソン氏を中心とした5人の農夫たちだった。
プロの毛刈り職人でもある彼らは、崖の上に停めたトラックのウィンチと200mのロープを使用し、250mの急斜面を降りてフィオナのもとへ到達した。
2年もの間、崖の下にある洞窟を拠点に自力で草を食べて生き延びていたフィオナは、救出当時、驚くほど太っていた。
伸び放題だった毛の重さは相当なものであったが、農夫たちの手によって無事に崖の上へと引き揚げられた。
救出後の検査でも健康状態は良好で、2年分の毛を刈り取られた彼女は見違えるほどスッキリとした姿になった。
羊としての振る舞いを学ぶ日々
救出後、フィオナはダンフリーズシャーにある観光牧場、ダルスコン・ファームに迎え入れられた。
マネージャーのベン・ベスト氏は、彼女が当初、他の羊とうまく交流できないことに気づいた。あまりに長く一頭でいたために、彼女は仲間との接し方を忘れてしまっていたのだ。
牧場のSNSやウェブカメラには、彼女の到着から数日間で300万回を超えるアクセスがあり、世界中の人々が回復を見守った。
フィオナは仲間とともに過ごす訓練を受けながら、少しずつ羊としての社会性を取り戻していった。
厳しい減量を経て双子の母へ
健康管理のため、フィオナは厳しいダイエットに取り組み、体重を90kgまで落とした。これにより、過剰な体重が原因で患っていた前脚の関節炎の症状も改善された。
その後、ホルモン治療によって体の調子を整え、サフォーク種のオス羊と引き合わされた結果、2025年11月に双子の妊娠が確認された。
羊が双子を授かることは珍しいことではない。しかし、かつて過体重と孤独によって繁殖は難しいと考えられていた彼女が、二頭の命を育めるまでに健康を回復した事実は、非常に大きな意味を持っている。
ベスト氏は、彼女が母になるための準備は整っており、プレッシャーを感じつつもこの喜ばしい結果を誇りに思うと語っている。
現在は2月初旬の出産に向け、定期的な血液検査を受けながら大切に見守られている。
かつて絶望の淵にいた一頭の羊の物語は、多くの人々の善意と専門家たちの技術によって、最高の幸せを迎えようとしている。











