世界最大・最重量の「ホバ隕石」はなぜ衝突クレーターを残さなかったのか?
単体で世界最大最重量のホバ隕石 Image by Istock <a href="https://www.istockphoto.com/jp/portfolio/muha0445?mediatype=photography" target="_blank">Dmitrii Pichugin</a>

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 アフリカのナミビア共和国の乾燥した大地に、単体としては世界で最も大きく、最も重い隕石が眠っている。

 :重さ60tを超える「ホバ隕石」は、約80,000年前に地球へ落下したとされ、100年以上前に偶然発見された。

 しかし、この巨大な隕石には不可解な点がある。本来、激突時に地面を激しくえぐるはずのクレーター(穴)が全く見当たらないのだ。

 これほどの大きさなら、大地に巨大な傷跡を残すはずだが、なぜそれがないのか?その理由は、物理学的な分析によって合理的な説明がなされている。

農夫が偶然掘り起こした世界最大の隕石

 1920年、ナミビアのオチョソンデュパ州グルートフォンテイン付近にあるホバ・ウェスト農場で、農夫のジェイコブス・ブリッツさんが牛を使って畑を耕していたとき、地表のすぐ下にある硬い物体に農具が突き当たった。

 作業を妨げたものの正体を突き止めるべく、ブリッツさんが周囲を掘り起こすと、地中に板のような形状をした巨大な鉄のような塊が姿を現した。

 この物体は、のちに隕石であることがわかり、その後の調査で驚くべき事実が次々と判明した。

 「ホバ隕石」と名付けられたこの鉄隕石は、約8万年に地球にしたと推定されており、一辺が約2.7mのほぼ正方形で、厚さは約0.9m という非常に扁平な形状をしていた。

 成分は約84%の鉄と約16%のニッケル、そして微量のコバルトなどで構成されており、ニッケル含有量が多いアタキサイト[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%BF%E3%82%AD%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88]という稀少な種類の鉄隕石に分類される。

 発見当時の推定重量は66tであったが、侵食や調査のためのサンプル切り出しにより、現在は60tをわずかに上回る程度となっている。

 それでも、知られている中で、単一の隕石としては地球上で発見された中で最大かつ最重量の記録を保持している。

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巨大隕石が残さなかった衝突の痕跡

 学者たちを最も困惑させたのは、ホバ隕石の周囲に、その巨大な質量に見合う衝突クレーターが全く存在しないことだった。

 通常、これほどの重量を持つ天体が地上に激突すれば、周囲の岩盤や土壌を激しく粉砕し、広大な穴を残す。

 ところがホバ隕石は、浅い土の層の下に眠っていただけで、激しい衝突の痕跡は見られなかった。

 科学者たちは当初、隕石が極めて特異な状況で落下したか、あるいは別の場所から移動させられたのではないかと推測した。

 しかし、これほどの重量物を人力で運ぶことは困難であり、自然現象として説明をつける必要があった。

 カナダにあるレジャイナ大学キャンピオン・カレッジの研究チームは、2013年に発表した論文[https://link.springer.com/article/10.1007/s11038-013-9421-7]の中で、この隕石のルーツについて2つの仮説を立てている。

 もともと大きな塊のまま壊れずに落下したケースと、大きな天体が途中でバラバラに砕けた際の一部であり、まだ見つかっていない隕石の破片が周囲のどこかに眠っているケースだ。

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物理学が示唆する特殊な落下のシナリオ

 さらに研究チームは、巨大な板状の隕石がなぜ大きなダメージを受けずに着地できたのかを、物理モデルによって検証した。

 本来、60tもの鉄の塊が時速数万キロメートルで激突すれば、8万年という歳月が流れても消えないほど巨大な穴が開く。

 しかし物理学的な分析によると、ホバ隕石は非常に特殊な状況で大気圏に突入した可能性があるという。

 平らな面を下に向け、水面に投げた石がはねる「水切り」のように、大気との大きな抵抗を生み出し、落下速度を極限まで抑えていたというシナリオだ。

 研究チームのモデルでは、大気圏に突入した時点のホバ隕石は 突入時には約500tもの質量があったと推定されており、激しい摩擦熱によって表面が削り取られた結果、最終的に現在の60tという重さまで減少したと推測された。

 この特殊な減速メカニズムによって、衝突時の速度は毎秒320m以下まで低下した可能性があるという。

 その結果、形成されたクレーターは直径約20m、深さ約5m程度という、隕石の規模からすれば比較的小さなものになったと推測されている。

 このように当初の衝撃が限定的であれば、8万年という長い歳月の浸食によってクレーターが消失し、地表が平坦に戻ることは十分に説明がつく。

 つまり、クレーターがないのは単に時間がたったからではなく、物理学的な条件によって最初から小さく、風化で消えやすいサイズに衝撃が抑えられていたという解釈が最も有力なのだ。

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現代に残る宇宙からの遺産

 ホバ隕石は発見以来、一度も移動されることなくホバ・ウェストの地に留まり続けている。

 1955年にはナミビア政府によって国家的記念物に指定され、貴重な科学的資産として保護されることになった。

 1987年には土地の所有者から隕石と周辺の土地が国へ寄付され、現在は観光センターが整備されている。

 現在、この場所は年間数千人が訪れる名所となっており、多くの人々が宇宙から飛来した巨大な鉄隕石を間近で見学している。

 もしこの隕石が異なる角度や速度で突入していれば、激しい衝撃でバラバラに砕け散っていたかもしれない。

 ホバ隕石は、特殊な突入条件と長い地球滞在期間という2つの要因が重なり合ったことで、その謎めいた姿を現代に留めているのである。

References: Springer.com[https://link.springer.com/article/10.1007/s11038-013-9421-7] / Geologyscience[https://geologyscience.com/gallery/geological-wonders/the-hoba-meteorite-namibia-largest-known-meteorite-on-earth/] / Iflscience[https://www.iflscience.com/why-didnt-the-worlds-largest-meteorite-leave-an-impact-crater-82044]

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