ほんの一昔前までは、元旦にポストに届く年賀状が楽しみだった人も多いだろう。だがこのお正月、みんなはいったい何通の年賀状を受け取っただろうか。
紙に書いた手紙やはがきが、どんどん消えていく未来が来るなんて、昭和の子供たちは想像しなかっただろう。だが今、世界では急速に郵便ポストの役割が消えていこうとしている。
2025年12月30日、デンマークの国営郵便サービスであるポストノルド(PostNord)は、最後の手紙を配達し、400年以上続いた郵便事業の伝統に終止符を打った。
世界一の「デジタル大国」デンマーク
デンマークは国連が2年ごとに発表している「国連デジタル政府ランキング[https://publicadministration.un.org/egovkb/en-us/data-center]」で、2018、2020、2022、2024年の4回連続で第一位を獲得しているデジタル大国である(ちなみに日本は2024年のランキングが13位)。
もともとデンマークでは、政府が提供する「デジタルポスト」というサービスの利用が、原則として国民に義務付けられている。
これは行政が公式文書を送るためのシステムで、税金の通知、年金や社会保障に関する連絡、病院の受診案内、自治体からの重要なお知らせなどは、すべてこのデジタルな「ポスト」に届くのだ。
これらの通知は法律上、紙の郵便と同じ効力を持ち、原則として国民は受け取って確認する義務がある。
高齢や認知機能の問題など、特別な事情がある人は紙の郵便に切り替えることもできるが、それは例外的な扱いだ。
さらに特徴的なのは、銀行や保険会社といった民間企業も、このデジタルポストを使って契約書や請求書、重要なお知らせを送ってくる点である。
日常的な広告メールとは違い、本人確認された公式の連絡が同じ受け箱に届くため、デンマークでは「手紙を見る」という行為そのものが、すでにスマホやPCの画面の中に移っているのである。
日本には、このデジタルポストに相当するようなサービスはまだない。強いて言うならマイナポータルだが、全国民の義務ではないし、毎回カードと暗証番号でログインするのは面倒だと感じる人も多い。
デンマークはMitIDという本人確認サービスを導入しており、デジタルポストへのアクセスに物理的なカードは必要ない。
こういったデジタル化に伴い、2024年にポストノルドが配達した郵便の数は約1億1000万通で、2000年時の約15億通に比べて90%以上も減少したという。
2026年からはdao社が手紙の配達を引き継ぐ
そしてポストノルドは、デンマーク国内における手紙の配達事業から撤退する決断を下した。2026年からは民間企業のdao[https://dao.as/en/]が、手紙の配達を引き継ぐことになる。
またサービス終了に伴い、6月から順次、デンマーク国内に設置されていた約1,500基の郵便ポストが撤去された。
撤去されたポストは、デンマークの全国的な募金キャンペーンであるDanmarks Indsamling[https://danmarksindsamling.dk/2025/12/10/17134/]に寄付され、一般向けに販売された。
ポストは1基あたりおよそ1500~2000デンマーククローネ(約37,000~49,000円)で販売され、数十万人のデンマーク人が購入を希望したという。
売上はすべて寄付に回され、紛争や貧困、気候変動などによる「忘れられた危機」に直面する地域の子供たちを支援する目的で使われるとのこと。
長年街角に立っていた郵便ポストは、役目を終えた後も、別の形で社会に還元されることになった。
ポストノルドは、デンマークだけでなく、スウェーデンを中心に北欧で事業を展開する郵便・物流グループである。
今回の書簡の配達からの撤退は、あくまでデンマーク国内における判断で、スウェーデンでは引き続き郵便事業を続けている。
一方でデンマークでも、小包やEC配送といった荷物の取り扱いは今後も継続し、物流事業へと軸足を移す計画とのこと。
つまり同社は消えるのではなく、国や分野ごとに役割を変えながら存続していく計画のようだ。
郵便配達を惜しむ声も
このニュースが報道されると、ネット上ではさまざまな意見が寄せられていた。
- 驚きはしないけど、やっぱり悲しいね。手紙やカードって、メールよりずっと人間らしく感じるし
- カナダも同じ道をたどってる。なのに、こっちの人たちがあまり気にしていないのが本当に悲しい
- 手紙を送る別の方法はあるの? アメリカにはそんなシステム、ないと思うんだけど
- すごく高いけど、UPSやFedExみたいなところで書類として送ることはできるよ
- デンマークは完全にデジタル化された国だ。その理屈がわからないなら、先進国で暮らしていないってことだと思う
- 正直ショックだ。ここ数か月だけでも、結婚式のお礼状、クリスマスカード、それに今はブライダルシャワーの招待状と女子向けスパ旅行のお知らせを書いてる。全部郵便で送ってるよ。郵便は素敵な用事のためのものだと思う。公共料金や銀行の明細はオンラインでいいけど
- これは、ポストノルドが事業をやっている他の国での手紙の配達も終わるってこと? 例えばスウェーデンとか。
- 記事を読む限り、スウェーデンは今のところ例外みたいだよ。スウェーデではこれまで通り続くって書いてあった
- DAOのサービスは正直ひどい。玄関のドアが閉まってると、そのまま差出人に返されて、戻ってくるまで3~4週間かかるんだ!
- この前、デンマーク国内で15gの手紙を送ったら、3.60ユーロ(約662円)かかった。これじゃ誰も手紙を出さなくなるのも無理はないよ
- 去年デンマークに行ったとき、絵はがき1枚送るのに切手代が12ドル(約1880円)以上かかった。
だからこのにゅーすにも驚かないよ- 要するに、郵便を民営化したってこと?
- いや、そういう話じゃない。単純に、もう物理的な手紙を使わなくなっただけ。政府と国民のやり取りは、デジタル郵便という公的な仕組みがある。手紙を送ること自体はできるけど、実際にはほとんど使われていない
- デンマーク人だけど、最後に紙の手紙を受け取ったのがいつか、まったく思い出せない。送ったのも同じ。もう何十年もデジタル通信を使ってる。病院も政府も雇用主も自治体も、全部デジタル郵便箱経由だよ。高齢者や認知障害がある人などは、申請すれば紙の郵便に切り替えられるけどね
- 最近は確かにいろいろ郵便受けに入るけど、それでも言いたい。手紙やカードを書くという文化は捨てないでほしい。電子版にはない魅力がある。ポストがチャリティ用に売られるなら、それはそれで良いことだけどね
- 子供のころに、手紙や絵はがきを受け取る喜びを経験しないまま終わる人たちがいると思うと、気の毒でならない
- 子供のころのペンパルからの手紙、今も取ってあるよ。
- うん、数年前まで友だちに手紙を書くのが大好きだった。
新しい切手を集めて、少しずつストックするのも楽しかった。今もノバスコシアに住む高齢のおばに手紙を書いてる。毎年クリスマスには小切手を送ってくれるんだ- 残念だよ。亡くなった人たちからの手紙を、今も大事に持っている。読み返すと、その人が今もそばにいるように感じる。メールやデジタル郵便では、絶対に代わりにならない
- 手紙を送るのも受け取るのも大好きだ。パソコンを持っていない90歳の人にも送っている。去年、その人から、あなたのクリスマスカードが唯一届いたカードだったと書かれた手紙をもらった。彼女が永遠の眠りにつくまで、誕生日とクリスマスを忘れずにいようと思っている
日本でも進む「郵便離れ」
ちなみに日本でも確実に「郵便離れ」は進んでおり、実際に差し出された郵便物の数は、2001年度の263億通をピークに減り続け、2025年度には半数以下の117億通に減ったと見られている。
このうち、年賀状の発行枚数のピークは2003年の44億5936万枚で、それ以降は右肩下がりに減り続け、2024年にはなんと10億7000万枚と4分の1以下に。
1人あたりが受け取る年賀状の枚数も、2003年が34.9枚とピークで、2024年は8.6枚にまで激減しているそうだ。
日本郵政では現在全国に約3,000カ所ある集配の拠点を、2028年度までには統廃合を進め、1~2割程度減らす方針だという。
私も今年の正月に受け取った年賀状は一桁枚数だったし、それ以外の私信を郵便で受け取ることも出すこともほぼ皆無。
役所や税金関係の書類などを除けば、あとはDMくらいしか郵便では受け取っていない気がする。
とはいえ、日本ではまだ絵葉書や絵手紙を送り合ったり、オタク界隈などで郵便を使う機会が多い層も健在だったりする。
それに現在、手紙などの「信書」を郵便以外の手段、例えば宅配便などで送ることは、原則として郵便法第4条で禁止されている。
かつては「クロネコメール便」というサービスもあったが、2024年1月末で廃止され、現在は日本郵便経由でカタログなどを扱う「クロネコゆうメール」が、法人・個人事業主向けとしてサービスを続けているのみである。
だからまだしばらくの間は、日本で郵便サービスがなくなることはないんじゃないかな。
References: Danish postal service to stop delivering letters after 400 years[https://www.theguardian.com/world/2025/dec/21/denmark-postnord-postal-delivery-letters-society] / Postnord[https://www.postnord.dk/en/postnord-will-deliver-its-final-letter-at-the-end-of-2025/]











