地球人は火星人?地球の生命が火星で誕生したという仮説に迫る
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 今から数十億年前、誕生したばかりの太陽系で、2つの惑星が対照的な姿を見せていた。

 一方は、巨大な天体衝突によって表面がドロドロに溶け、およそ生命など存在できそうにない地獄のような光景が広がる地球。

もう一方は、すでに適度な温度まで冷え、豊かな大気と水をたたえていたとされる火星である。

 もし、この時期の火星で生命が産声を上げていたとしたら、その子孫が隕石に乗って地球へとたどり着き、私たちの祖先になったという物語も、あながち空想とは言い切れない。

 私たちがどこから来たのかという究極の謎を解く鍵が、実は隣の赤い惑星に隠されているかもしれないという仮説がある。

生命誕生の地として火星が注目される理由

 地球の生命がいつ、どこで、どのように始まったのかについては、科学者の間でもまだ完全な合意は得られていない。

 生命へとつながる化学反応のステップや、最初の原始的な生命体が登場した正確な時期は、今も深い謎に包まれている。

 そこで注目されているのが、地球の生命は地球外で誕生したとするパンスペルミア説だ。

 この説は、宇宙空間を漂う岩石や隕石に付着した微生物の「種」が別の惑星に到達し、そこで繁殖するという考え方を指している。

 中でも火星は、かつて地球よりも早く生命に適した環境が整っていた可能性が高いことから、最有力な候補地として議論が続いている。

 惑星としての歴史を振り返ると、火星は約46億年前に形成され、地球は約45億4000万年前に誕生したとされている。

 誕生直後の惑星はどちらも熱く溶けていたが、先に冷えて固まったのは火星の方だった。

 現在の火星は乾燥しきった不毛の荒野だが、初期の火星には厚い大気があり、表面には海や川、湖が存在していたことが研究で明らかになっている。

 また、地熱活動によって熱水噴出孔や温泉も豊富に存在しており、生命が誕生するために必要な化学物質やエネルギーがそろっていたのだ。

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地球を襲った巨大衝突と火星の安定性

 一方で、初期の地球は非常に過酷な運命をたどっていた。約45億1000万年前、テイアと呼ばれる火星ほどの大きさの岩石惑星が地球に激突したのだ。

 この巨大衝突の衝撃で、地球もテイアも粉々に砕け散り、再び溶け合って合体した後に、現在の地球と月へと分かれた。

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 たとえこの衝突以前に地球で生命が生まれていたとしても、地殻さえも蒸発させるほどの熱の中で生き延びる術はなかったはずだ。

 これに対して、火星には惑星全体を焼き尽くすような巨大衝突が起きた形跡はない。

 確かに初期の太陽系は天体同士の衝突が頻発していたが、火星を完全に破壊するほど大きなものはなかった。

 そのため、もし46億年前の惑星形成直後に火星で生命が誕生していたならば、少なくとも5億年もの間、絶滅の危機を回避して進化を続けられた可能性がある。

 その後、火星は磁場を失い、大気が太陽風によって剥ぎ取られてしまったことで、氷点下の気温と強烈な電離放射線が降り注ぐ死の世界へと変わってしまった。

 しかし、その時すでに生命が地球へと脱出していたのだとしたら、話は変わってくる。

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全生物の共通祖先LUCAが語るタイムリミット

 地球にいつ生命が現れたのかを特定するために、科学者たちは生命の樹を根元までさかのぼり、LUCA(全生物最終共通先祖)と呼ばれる微生物の研究を進めている。

 LUCAは、今この地球上に存在するバクテリアから人間に至るまですべての生物が共有する、文字通りの共通のご先祖様だ。

 イギリス・ブリストル大学の研究チームが発表した最新の解析によれば、LUCAは今から約42億年前にすでに存在していたことが示唆されている。

 これは、これまでの想定よりもはるかに早い時期だ。

 LUCAは地球最初の生物ではなく、当時にはすでに複数の微生物が存在し、複雑な生態系を作っていたことも分かってきた。

 月が形成された巨大衝突からわずか2億9000万年後という短い期間で、地球は地獄のような状態から、複雑な生命が競い合う世界へと進化したことになる。

 この期間内に、無機質な化学物質が複雑な生物へと自発的に変化し、多様化まで成し遂げるのは、時間的にかなり厳しいという見方もある。

 そこで浮上するのが、すでに火星で進化を遂げていた微生物が、隕石に乗って地球に舞い降りたというシナリオだ。

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火星起源説に立ちはだかる壁

 しかし、この火星起源説には大きな壁も立ちはだかっている。

 再構築されたLUCAのゲノム、すなわちすべての遺伝情報を見ても、宇宙空間を旅するのに適した特殊な能力は見つかっていない。

 微生物が火星から地球へ到達するためには、火星を脱出する際の凄まじい衝撃に耐え、真空の宇宙空間で強い放射線を浴びながら1年近く旅をし、さらに地球の大気圏突入時の高熱を切り抜けなければならない。

 これらすべての過酷な試練を微生物が突破する確率は、極めて低いように思える。

 専門家の直感では、どれほど困難に見えたとしても、火星から生命を運んでくるよりは、2億9000万年という時間を使って地球で生命が自生する方が、まだ容易なプロセスであるとも考えられている。

 ただし、近年のシミュレーションでは、微生物が大きな隕石の奥深くに閉じ込められていれば、宇宙の過酷な環境から守られる可能性も示されている。

 もし本当に火星から地球へ生命が届いたのだとすれば、一つの疑問が残る。

 太陽系の歴史の初期にそれほど簡単に惑星間移動ができたのであれば、なぜその後の40億年間、地球の生命は他の惑星へと広がっていかなかったのだろうか。

 この謎の答えが出るまでは、私たちが本当に火星人であるのか、それとも地球生粋の住民であるのか、断定することはできないだろう。

References: Nature[https://www.nature.com/articles/s41559-024-02461-1] / Uchicago.edu[https://news.uchicago.edu/explainer/origin-life-earth-explained] / Theconversation[https://theconversation.com/are-we-the-martians-the-intriguing-idea-that-life-on-earth-began-on-the-red-planet-265493] / Jpl.nasa.gov[https://www.jpl.nasa.gov/news/what-two-planetary-siblings-can-teach-us-about-life/]

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