2025年10月、アメリカ・テキサス州の寺院を出発した仏教僧侶の一団が、1匹の犬と共にワシントンD.C.を目指して平和の歩みを進めている。
およそ3,700kmを約5か月間かけて歩く予定だ。
犬の名前は「アロカ」といい、仏典を記した言語であるパーリ語やサンスクリット語で、「光」や「輝き」を意味する言葉である。
アロカは、僧侶たちがインドで平和を願う祈りの旅を行っていた際に出会った元捨て犬で、自らその一行に加わってきたという。
やがて僧侶たちはアロカを仲間として受け入れ、行動を共にするようになった。現在は拠点とするアメリカで、犬と僧侶が共に歩む旅が続いている。
3,700kmの僧侶たちと犬の祈りの旅
ベトナム系アメリカ人仏教コミュニティが運営する、テキサス州フォートワースの仏教寺院「フオン・ダオ・ヴィパッサナー・バーヴァナ[https://chuahuongdao.org/]」に所属する僧侶たちは、2025年10月26日にこの寺院を出発した。
24人の僧侶からなる一団は、「アロカ」と名付けられた1匹の犬を連れ、平和を願う「ウォーク・フォー・ピース(Walk for Peace)」と呼ばれる、徒歩による旅に踏み出した。
彼らは数か月をかけて、アメリカ南部から東海岸にかけてのおよそ3700kmを自らの足で歩き、2026年2月に首都ワシントンD.C.へ到着する予定だ。
インドでの自ら僧侶たちの旅に加わった元捨て犬
僧侶たちは数年前、インドでも同様の112日間にわたるWFPを実践した。その途中で出会ったのが、このアロカという犬だった。
アロカはおそらく捨て犬で、犬種はインド原産のパリア犬だと思われる。アロカはすぐに僧侶たちに懐き、自ら一行に加わり一緒に旅を始めたのだ。
途中で事故にあったり、体調を崩したりという試練にも襲われた。僧侶たちはアロカをトラックに乗せたが、それでも彼は飛び降りて一緒に歩き続けたという。
仏教の教えに基づいた「平和と慈悲」の歩み
このWFPは、僧侶たちが長年続けてきた歩行を伴う修行と、インドで行われた長期の徒歩による旅を経て、今回、その実践の場をアメリカに移したものだ。
特定の出来事への抗議や主張を目的としたものではなく、「歩く」という行為そのものを通じて、平和や慈しみを思い出すきっかけを差し出す試みだという。
この旅は、開かれた心とともに差し出す、ささやかな呼びかけにすぎません
どこの国に住もうと、私たちは平和を求める同じ願いを分かち合い、優しさを生み出す力を持ち、すべてを結びつける共通の人間性を共有しているのだということを思い出してほしいんです
皆さんと、すべての存在が、健やかで、幸せで、平和でありますように
フォートワースを出発した一団は、アメリカ中西部~南部の、いわゆる「バイブルベルト」と呼ばれる地域を静かに歩き続けている。
途中で行われていた結婚式で祝福を捧げたり、体の不自由な人を励ましたりしながら、アロカと僧侶たちは旅を続ける。
道中では信者や有志による喜捨が行われ、食事や宿が提供されている。また、道行く人たちが花を贈ったり、手を合わせたりする光景も各地で見られている。
僧侶たちは宗教的な行の伝統に根差した、一日一食の食事と野宿を基本とした厳しい修行の道を、今も黙々と歩き続けている。
主催はベトナム系の仏教寺院
フオン・ダオ・ヴィパッサナー・バーヴァナ寺院は、1990年代後半から活動を開始した。
上座部仏教の教えに基づく瞑想や礼拝、修行、さらには文化行事を行う場として、信者や地域住民向けの行事・祭典を定期的に開催しているそうだ。
寺院の名前になっている「ヴィパッサナー」とは、仏教の瞑想法の一つであり、日本では「気づきの瞑想」などと呼ばれることもある。
自分の中で「今この瞬間」に起きていることを、良い悪いと判断せず、「そのまま観察する」ことを重視するのが特徴だ。
自分の内側で何が起きているのかを、「ただ気づいて見つめる」ための訓練だと言えるかもしれない。
瞑想と言うと座って行うイメージが強いかもしれないが、歩くことそのものを観察の対象にする実践も含まれる。
そのため、歩きながら平和や気づきを体現しようとする、今回のWFPとも繋がるものなのだ。
バイブル・ベルトのキリスト教会でも歓迎
だがこの地域は、キリスト教、特にプロテスタントの信仰が強い地域であり、道中では、キリスト教のメッセージを書いたプラカードを掲げた人々による抗議行動も行われたようだ。
僧侶たちは、SNSの投稿の中で次のように語っている。
私たちは誰かの信仰を変えるために歩いているのではありません。
平和や思いやり、つながりの大切さを、思い出してもらうために歩いています心に平和を育むために、信仰や信念を変える必要はありません。他者への思いやりを実践するために、大切にしてきたものを手放す必要もありません。
どのような信仰であれ、自らの信仰を大切にしているすべての人々に、私たちは深い敬意を払っています。
異なる信仰、異なる信念、異なる伝統。それらはすべて美しく、すべてに意味があり、私たちをより思いやり深く、より深くつながり、より穏やかな存在へと導く本質的な資質を育む力を持っています
抗議や反対の動きはごく一部であり、下の動画のようにキリスト教の教会でも僧侶たちを歓迎し、教会内で食事などを提供する光景も見られた。
報道やSNSでWFPを知った人々からは、祈りを交えたさまざまな反応が寄せられている。
- この歩みは、私に平和をもたらしてくれます。すべての存在にメッタ(慈しみ)を送ります
- 道ですれ違えたら、食べ物や靴下を差し入れしても大丈夫?
- もちろんだけど、彼らのペースを崩さないように、ネットに上げられている地図[https://dhammacetiya.com/follow-the-walk-for-peace-2025/]やスケジュールを確認した方がいいよ
- 今私たちが抱えている分断に対する、これ以上ない答えだと思います。ありがとう。そして皆さんに祝福を
- 道中で、キリストこそ答えだと書かれたプラカードを掲げて、この歩みに抗議する人たちがいたと聞いて、とても残念でした。どうか旅の間、ずっと守られますように
- テキサスで反対デモに出くわしたのは、この人たちだったんだね。
「イエスこそが王」という看板を持った怒った人たち。皮肉なことに、イエス本人は、彼らの行動をきっと支持したはずなのに- 仏教は生き方であって、多くの場合、他の宗教とも共存できるんだ
- イエスとゴータマ・シッダールタは、きっと仲良しだと思うんだけどな
- 言葉では説明できない何かを、私の中に開いてくれてありがとう。あなたたちが歩いてくれているから、私たちは平和やマインドフルネスがどんなものかを見ることができます。それを思うと涙が出ました。姿を直接見ることができなかったのが残念です
- 私はカトリックですが、それでも皆さんの祈りや語りかける声を聞くのが大好きです。WFPは、本当に美しい行動です
- 教会の前に掲げられている看板、最高ですね。バイブル・ベルトの各地で、キリスト教徒が仏教の僧侶たちを温かく迎えているのを見て、とてもうれしくなりました
首都ワシントンD.C.には2月中旬に到着か
この徒歩での旅は、時には危険と隣り合わせでもあった。テキサス州の道路を歩いていた僧侶たちのうち、2名がトラックにぶつかり、1人が重傷を負うという事故が発生した。
2026年1月6日現在、僧侶たちはジョージア州アトランタの東方を歩いているという。予定通りなら、2月中に首都ワシントンD.C.に到着する見込みとのこと。
最新のSNSへの投稿で、僧侶たちは支援たちへの感謝の言葉を述べている。
皆さんの愛に、心から感謝します。
私たちは本当に多くの愛を受け取りました。尊敬する僧侶たちへの愛、アロカへの愛、そしてウォーク・フォー・ピースそのものへの愛です。
皆さんの思いやりは、私たちの心の奥深くに届いています。道ばたで手を振ってくれた姿、オンラインで寄せられたコメント、近くからも遠くからも届けられた祈りや励ましの言葉。そのすべてが、言葉に尽くせないほどの感謝で胸を満たしてくれました。
私たちは皆さんの愛に包まれ、支えに背中を押され、平和は育て合うことで形になっていくのだという信念に励まされながら歩いています。
ありがとう。本当に、ありがとうございます。
皆さんと、すべての存在が、健やかで、幸せで、平和でありますように
この巡礼の様子は、Instagram[https://www.instagram.com/walkforpeace.usa/]やFecebook[https://www.facebook.com/walkforpeaceusa]で随時更新されている。また、犬のアロカのInstagram[https://www.instagram.com/alokathepeacedog/]やFacebook[https://www.facebook.com/Alokathepeacedog]もあるので、ぜひ遊びに行って見よう。
References: Rescue Dog Leading 19 Buddhist Monks on 2,300 Mile Peace Walk Across the US[https://www.goodnewsnetwork.org/rescue-dog-leading-19-buddhist-monks-on-2300-mile-peace-walk-across-the-us/] / Dhammacetiya[https://dhammacetiya.com/]











