中国が世界最長の高速道路トンネルを開通
<a href="https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Barkol_Shan.jpg" target="_blank">B_Aichner</a>, <a href="https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0" target="_blank">CC BY-SA 4.0</a>, via Wikimedia Commons

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 世界で一番高い橋の次は、世界一長い高速道路トンネルだ。

 中国の新疆ウイグル自治区で、世界最長とされる高速道路のトンネルが開通した。

このトンネルは天山山脈を貫く「天山勝利隧道」で、全長は22.13km。

 ウルムチ(烏魯木斉)とロプノール(尉犁)県を結ぶ、G0711「烏魯木斉至尉犁高速道路」通称「烏尉高速道路」の中核施設として整備されたものだ。

 2025年12月26日に体験通行が始まり、2026年1月1日からは試験運用が開始され、一般車両の通行が始まっている。

 このトンネルの開通により、天山山脈を越えるためにかかる時間が、これまでの3時間から約20分へと、大幅に短縮されることとなった。

シルクロードの要所「天山山脈」を貫くトンネル

 かつて、シルクロードの「天山回廊」ルートは、天山山脈の北側を通る「天山北路」と、南側を通る「天山南路」の二つに分かれていた。

 その間を隔てるのが天山山脈であり、これまでここを南北に抜けるには、標高4,000m級の場所にある曲がりくねった山道を通らなければならなかった。

 かつてシルクロードの拠点として栄えた天山北路のウルムチと、天山南路のコルラ。この2つの都市を車で移動しようと思うと、7時間以上もかかっていたのだ。

 その上、氷点下40度を下回る冬季になると一帯の道路は封鎖されるため、さらに長い迂回路を通る必要があったのである。

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 そこで中国では、天山山脈を突っ切るトンネルを掘って、この距離と時間を縮める計画が持ち上がった。

 ウルムチとコルラに隣接するユーリー(尉犁)県を結ぶ「烏尉高速道路」の着工は、2020年4月のこと。全長は324.7kmで、総工費約467億元(約1兆円)の巨大プロジェクトであった。

 そして天山山脈を貫くトンネル「天山勝利隧道」の開通により、天山山脈越えにかかる時間は、これまでの約3時間から約20分へ。

 ウルムチからコルラまでの都市間の運転に必要な時間も、約3時間半に短縮されることになったのだ。

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 下の動画は、開通のニュースを知らせる上海メディアの報道である。さらっと見ただけでも、どれほど厳しい自然環境を貫く道路なのかがわかると思う。

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「3本の並行トンネルと4本の立坑」を組み合わせた工法

 天山勝利隧道の建設が異例だったのは、その長さだけの話ではなく、「掘り方そのもの」にある。

 この地域は標高が高い寒冷地帯であり、断層や硬い岩盤が連続する複雑な地質条件が、工事を進める上での大きな障害となった。

 そこで中国の高速道路トンネル建設では初めて、硬い岩を掘ることを想定した「硬岩掘削機」が導入された。

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 さらに、1本のトンネルを両端から掘り進める従来方式ではなく、「3本の並行トンネルと4本の立坑」を組み合わせる工法が採用された。

 これにより、長いトンネルを一方向から掘るのではなく、複数の地点から同時に工事を進めることが可能になったのだ。

 具体的には中央に1本の主トンネル、その両脇に2本の補助トンネルを並行して建設する方法が取られた。

 補助トンネルは地質調査や資材の運搬、作業員の出入りに使われ、工事を支える裏方の役割を果たすほか、非常時には避難通路や換気設備としても利用できる。

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 さらに地上から最大約700mの深さまで4本の立坑を掘ることで、トンネルの両端だけでなく、複数の地点から同時に工事を進めることができるようになったのだ。

 新疆交通投資開発グループの主任エンジニアによれば、従来の工法であれば完成まで10年以上かかった可能性があるという。

 だがこの方式を採用することによって、52か月という短期間で工事が完成したのである。

 

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開発が進むかつての秘境

 ちなみにこの高速道路の終点となるユーリー県は、別名「ロプノール県」と呼ばれることもある。

 ただし、あの「さまよえる湖」として知られるロプノール湖があったのは隣のチャルクリク県で、ユーリー県ではない。

 そしてそのロプノール湖があったと言われる場所には、今やその湖床をぶった切る形で高速道路が通っていて、近くには塩田とされる巨大な施設も確認できる。

 ロプノール湖に水が戻ることは、今後もう二度とないのだそうだ。

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 東と西を繋ぐロマンの舞台「シルクロード」。そこには今も昔も砂漠や高山地帯など、数々の難所が存在する。

 だが科学と技術の進歩は、そんな難所や辺境の地を、アクセスしやすい身近な場所にどんどん変えていってしまう。

 かつては秘境と言われた多くの地も、今や単なる観光地になってしまっているところも多いのだ。

 個人的にショックだったのは、「幻の湖」と言われていたアフガニスタンのバンディアミールが、カラフルなボートだらけの行楽地になっていたこと。

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 便利になるのは大変良いことではあるのだが、夢や謎やロマンを追いたい少年の心に、一抹の寂しい風が通り抜けるのは否定できない。

References: China Inaugurates the World’s Longest Expressway Tunnel[https://www.odditycentral.com/news/china-inaugurates-the-worlds-longest-expressway-tunnel.html]

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