宇宙の果てには、光さえも逃げ出せない暗黒の天体、ブラックホールが存在する。
アルベルト・アインシュタイン博士が100年以上も前に、相対性理論という数式から導き出した不思議な現象があった。
あまりにも観測が困難で、これまで確実な証拠を掴むことができなかったが、イギリスや中国などの国際研究チームが、ブラックホールに星が飲み込まれる際に出る信号を分析し、ついにこの時空の引きずりを直接捉えることに成功した。
この研究成果は『Science Advances[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.ady9068]』誌(2025年12月10日)に掲載された。
時空をかき回す巨大な渦の正体
今回とらえられたのは、レンズ・ティリング歳差運動(Lense-Thirring precession)、あるいは慣性系の引きずり[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%85%A3%E6%80%A7%E7%B3%BB%E3%81%AE%E5%BC%95%E3%81%8D%E3%81%9A%E3%82%8A]と呼ばれる現象だ。
巨大な質量を持つ天体が高速で回転すると、その周囲の時空がハチミツをかき混ぜるスプーンのように、ぐるぐると引きずられてねじ曲がる現象を指す。
この効果によって、ブラックホールの近くにあるガスや星の通り道は、コマが止まる直前に首を振るような、ぐらぐらとした揺れを見せることになる。
アインシュタイン博士が1913年に理論的に予測し、その数年後に物理学者のヨセフ・レンズ氏とハンス・ティリング氏が数学的に詳しく説明したこの現象が、現代の最新技術によって現実のものとして証明された。
星が引き裂かれる瞬間に現れた異変
中国科学院国家天文台やイギリスのカーディフ大学などの国際研究チームは、AT2020afhdという天体で起きたドラマチックな出来事に注目した。
これは、巨大なブラックホールに近づきすぎた星が、強烈な重力によってスパゲッティのように細長く引き延ばされ、バラバラに壊される潮汐破壊現象(TDE)と呼ばれる現象だ。
破壊された星の残骸はブラックホールの周囲に集まり、猛烈な勢いで回転する「降着円盤(こうちゃくえんばん)」を作り上げる。
同時に、その中心部からは物質の噴流である「ジェット」が、光速に近い速さで円盤に対して垂直な方向へと放出される。
この降着円盤とジェットがどのように連動して動いているかを確認するため、チームはNASAのニール・ゲーレルス・スウィフト天文台や、カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)の観測データを詳細に分析した。
20日周期で繰り返される時空の引きずり
データの分析により、ブラックホール周辺の円盤とそこから伸びるジェットが、20日周期で一緒にぐらぐらと揺れていることが判明した。
カーディフ大学のコジモ・インセラ博士は、この様子を、回転するコマが水中で渦を作り、周りの水を一緒に引きずり回す様子に例えている。
これまでの観測例では電波の信号が安定していることが多かったが、今回のAT2020afhdが放つ信号は短期間で複雑に変化していた。
研究チームはこの変化こそが、ブラックホールが時空を無理やり引きずり回している証拠であると結論づけた。
回転する質量が重力磁場を作り出し、周囲の天体に影響を与えるという物理法則が、まさに宇宙の最前線で証明されたのだ。
References: Science[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.ady9068] / Scitechdaily[https://scitechdaily.com/astronomers-watch-black-hole-twist-spacetime-as-einstein-predicted-over-100-years-ago/]











