ボストン・ダイナミクスのヒューマノイドロボット、新型アトラスは人間らしさという制約を捨てた。
首や腰が360度くるりと回る様子は、ホラー映画「エクソシスト」を彷彿とさせる不気味な動きだが、この柔軟性は機械としての効率を極限まで追求した結果だ。
アトラスは、あえて人体の限界という「縛り」を解除することで、自然を模倣する段階から、自然を超える段階へと進化した。
2028年には工場の現場で働くことが決まっているこのロボットは、私たちの労働のあり方を根本から変えようとしている。
アトラスがついに社会で活動開始
ボストン・ダイナミクス社は1992年にマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究室から誕生したベンチャー企業だ。
Googleやソフトバンクという巨大資本のもとを渡り歩き、2021年に現在の親会社であるヒョンデ(Hyundai)の傘下に入った。
かつてのアトラスは油圧式で、バク転やダンスといった「魅せる」研究プロジェクトが中心だった。
しかし2024年、新型へと転生したことで、その役割は一変した。
スリムな完全電動へと進化したことで、オイル漏れの心配がなくなり、より精密な動きが必要な現場への適応力を手に入れたのだ。
実際、すでに自動車工場での実証実験も始まっており、シン・アトラスは、自らの意思で黙々と働く「職人」として、いよいよ現実の社会へと羽ばたこうとしている。
360度首が回転、人間らしさをあえて捨てる
新型アトラスの動きは、人間が持つ当たり前の感覚を次々と裏切る。
スタスタと歩く姿はとても人間じみているのだが、関節が止まることなく回り続ける連続回転という仕組みにより、腰や手首、首までもが360度フル回転する。
ステージ上でアトラスが、頭を真後ろまで回転させ、ドリルのように手をねじりまわす様子は、1973年の名作ホラー「エクソシスト」で悪霊に取り憑かれた少女が見せた衝撃的なシーンそのものだ。
ボストン・ダイナミクス社は、人間らしい動きにこだわらず、機械ならではの合理的な動きを優先した。
その結果、アトラスは狭い場所でも全身をひねらずに向きを変え、人間には不可能な姿勢で重い荷物を扱うことができる。
過酷な現場で自律して働く驚異の性能
アトラスは、見た目のインパクト以上に高い実力を持っている。全身に56もの可動箇所があり、人間よりも滑らかに動ける。
指先には物の感触がわかる触覚センサーがあり、約50kgの荷物を運びながら細かな作業もこなす。
マイナス20度から40度という厳しい環境や水濡れにも強いため、どんな現場でも頼りになる。Google傘下の最先端AI研究開発企業、ディープマインド(DeepMind)の最新AIや、エヌビディア(NVIDIA)社の高速チップを搭載し、自分で考えて行動する。
これにより、誰かがリモコンで操作しなくても、センサーで周りの状況を把握しながら、障害物を避けて自力で作業を進める。
もはや誰かの操作を待つだけのロボットではなく、自律して働くプロフェッショナルな相棒に進化したようだ。
二足歩行ロボットが直面する理想と現実
親会社であるヒョンデは、このロボット事業に約4兆円という投資を行っている。
2028年からジョージア州の自動車工場などでアトラスを導入し、2030年には複雑な組み立て作業まで任せる計画だ。
しかし、ヒューマノイド(人型ロボット)が本当に労働の主役になれるのかについては慎重な意見もある。
二足歩行という形が、全ての現場で最も効率的であるとは限らないからだ。
世界的な経営コンサルティング会社マッキンゼーの経営コンサルタント、アレックス・パナス氏は、どのような目的で技術を使うのかが最も重要だと語る。
アトラスは、人間らしさという枠を飛び出すことで、ロボットと人間が共に歩む未来の答えを見つけようとしている。
References: The Way Boston Dynamics’ New Robot Moves Is Skin-Crawlingly Unnatural[https://futurism.com/robots-and-machines/boston-dynamics-new-demo] / Hyundai’s Atlas humanoid wins top honor at US tech show for factory-ready robot[https://interestingengineering.com/ai-robotics/hyundais-atlas-humanoid-wins-top-honor]











