オーストラリアに生息するカモノハシは、アヒルのようなクチバシを持ち、哺乳類なのに卵を産んで母乳で育てる不思議な生き物だ。
これと同じように、天文学の常識では説明がつかない奇妙な天体が、はるかかなたの宇宙で発見された。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がとらえたのは、従来の天文学のカテゴリーには当てはまらない、複数の特徴が混ざり合った謎の銀河だ。
その正体のつかめなさがカモノハシと同じくらい不可解なことから、天文学者たちは「カモノハシ銀河」と名付けた。
これまでの宇宙の成り立ちを根底から覆す可能性を秘めた、120億年以上前の宇宙で見つかったミステリーの正体に迫ってみよう。
1120億年前の初期宇宙に浮かぶ、謎の「光の点」
アメリカ・ミズーリ大学のハオジン・イェン博士を中心とする研究チームは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測データを精査し、9つの風変わりな銀河を特定した。
これらは宇宙誕生から間もない約120億年から126億年前という、気が遠くなるほど遠い場所に位置している。
通常、これほど遠い場所にある銀河は、ある程度の広がりを持って観測される。
しかし、今回見つかった銀河はどれも、星のように鋭く一点に輝く点光源という特徴を持っていた。
この見た目だけなら、巨大ブラックホールが輝くクエーサーというグループに分類されるはずだったが、詳しい分析結果はそれとは全く異なるものだった。
見た目はブラックホール、中身は銀河?矛盾する光の正体
「クエーサー」とは、銀河の中心にある巨大なブラックホールが、周囲の物質を飲み込むときに放つ猛烈な輝きのことだ。
あまりに明るいため、遠く離れた地球から見ると、まるで一つの星が鋭く光っている点のように見える。
研究チームがこれらの銀河をカモノハシに例えた理由は、見た目はクエーサーそっくりなのに、光の成分を調べると全く別物だったからだ。
クエーサーの場合、ブラックホールの周りをガスが猛スピードで回転しているため、光の波形をグラフにすると裾野の広い山の形になる。
ところが、このカモノハシ銀河の波形は針のように鋭く、ガスの動きがゆっくりであることを示していた。つまり、見た目はブラックホールが輝く点(クエーサー)なのに、中身はガスが穏やかに動く「銀河」という、正反対の特徴が合体した不思議な状態だったのである。
天文学のカテゴリーを超える謎
イェン博士は、この状況をカモノハシの遺伝子に例えて説明している。
カモノハシの遺伝子が鳥類、爬虫類、哺乳類の特徴をあわせ持つように、これらの銀河もまた、天文学における見た目と光のデータの組み合わせがこれまでの常識ではあり得ないものになっている。
現時点では、これらがこれまで見たこともないような初期段階の銀河である可能性が考えられている。
私たちの天の川銀河のような巨大な銀河は、小さな銀河が合体を繰り返して成長したと考えられているが、その合体が始まる前のさらに静かな形成過程を見ているのかもしれない。
このカモノハシ銀河たちの正体が完全に明らかになれば、宇宙初期に銀河がどのように生まれ、成長してきたのかという、現代天文学の大きな謎を解き明かす鍵になるだろう。
この研究成果は、2026年1月、アリゾナ州フェニックスで開催されたアメリカ天文学会第247回総会で発表された。
また、『A New Population of Point-like, Narrow-line Objects Revealed by the James Webb Space Telescope』というタイトルで『arXiv[https://arxiv.org/abs/2509.12177]』に掲載された。
References: Science.nasa.gov[https://science.nasa.gov/missions/webb/scientists-identify-astronomys-platypus-with-nasas-webb-telescope/] / Arxiv[https://arxiv.org/abs/2509.12177]











